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特集4:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(12)
 ●リスク(阻害因子)の考え方


 では、エンジニアなら誰でもいいのか。リーダ・プロジェクトマネージャーはどうか。  答えは当然「NO」……誰でもよいわけでないことが直感的に理解できるであろう。その場合、リスクとの格闘がスタートする。
 人選択の基準は、大雑把に言えば、「通信販売を手がける企業の顧客向け販売サイト用のシステムをもっとも上手に構築できる人達」ということになる。具体的に言うと、以前に類似のシステムを構築した実績のあるエンジニア、リーダ、プロジェクトマネージャである。これらが揃えばプロジェクトが成功する可能性は高くなる。ただし、プロジェクトの成功に100%はないから、あくまでも相対的に成功の可能性が高い、ということにしかならない。
 このように、プロジェクト管理は、成功の可能性を高め、失敗の可能性を減じるための諸作業を継続的に行う特徴をもったものと言える。
 このように、「成功要素は何か」を決め、現状と比較し、何が差分であるのかを分析していくことが重要であり、これがプロジェクトリスク管理の基本となる。例えば、「以前に類似のシステムを構築した実績のあるエンジニア、リーダ、プロジェクトマネージャ」が必要としよう。これらが揃えばよいが、いつも、そのように理想的な状態でプロジェクトを進めることができるとは限らない。このように、エンジニア達は類似システム経験があるが、リーダ、プロジェクトマネージャにそのような経験を持たない人間しか調達できない場合、何がリスクとなるのかを見極め、そのリスク対策を行うことが必要になる。この例であれば、リーダやプロジェクトマネージャにエンジニアにヒアリングをして、通信販売業界のことや通信販売システムの特徴などを学習してもらって擬似経験を積ませたり(イメージトレーニング――センスのよい優秀な人材ならこれでも十分リスクヘッジになる)、経験があるエンジニアのうち、優秀な人材を昇格させる方法も考えられる。方法はできるだけ多く考え、最も成功の可能性が高まる方法を選択すればよい。これが基本的思想となる。
 ここでは、簡単な例を説明した。ここで言いたいのは、プロジェクトの成功を左右する要素としては、人材の選択が大きいということである。そして、理想の選択ができない場合は、次によい選択を行い、成功可能性を高めることを継続的に行うということである。
 この作業は想像するよりもはるかに難しく、これを本当にうまくできる人間は少ないというのが筆者の考えである。そこで、「プロジェクトマネジメントのテクニック」の登場である。プロジェクトに参加する人間たちのリスクをどのように調査し、成功の可能性を高めるためにどのように動かしていくのか。
 これを、前回までで説明した基礎的テクニックを使いながら、システム統合編では順次説明していくことにする。そこで、次回は、プロジェクト立ち上げ時のリスク分析について説明する。

 

■芦屋 広太(Asiya Kouta)氏プロフィール
芦屋広太氏 OFFICE ARON PLANNING代表。IT教育コンサルタント。SE、PM、システムアナリストとしてシステム開発を経験。優秀IT人材の思考・行動プロセスを心理学から説明した「ヒューマンスキル教育」をモデル化。日経コンピュータや書籍への発表、学生・社会人向けの講座・研修に活用している。著書に「SEのためのヒューマンスキル入門」(日経BP社)、「Dr芦屋のSE診断クリニック(翔泳社)」など。

サイト : http://www.a-ron.net/
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