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特集1:適切なソリューション選択のために ベンダーとのコミュニケーション
株式会社インストラクショナル デザイン 代表取締役 中原 孝子(プロフィール

■オペレーション部隊としての人材開発部門から戦略部隊へ
 ―あなたのラーニングソリューションは適切?―

 先日10月14日、人財ラボ主催の「2005ASTD報告会」(http://www.jinzai-lab.com/news_astd.html)でも討議になりましたが、今人材開発担当部署に求められているのは、イベントとしての研修やeラーニングの提供を遂行するオペレーションではなく、「現場」のニーズを見極めた「成果」を出すための戦略的なソリューションを提供できる企画・戦略であるという話がなされました。
 前回のeラーニングマガジンのメッセージとも重なりますが、何が組織の求めていることで、何が現状とのギャップなのかの分析が明確にできた上で、どのような方策がもっともその「個人」や「チーム」、「組織」に向いているのかを考えて提供し、学習の結果がどのように現場に反映されたのか、どのようなインパクトを組織に与えたのかを明確にするプロセスとスキルを人材開発部門が持っていなければならない、ということが重要なのではないでしょうか。
 現場を重視したラーニングソリューション提供のステップは、

1. 経営上の成果をもたらす上で重要と考えられる目標を確立すること
2. ラーニング分析を実施すること
3. 「適切な」研修ソリューションを提供すること
4. ソリューションの効果を最大限に生かすことができる「適切な」対象グループでソリューションが使われていることの確認
5. 提供したラーニングソリューションが「学習」をもたらし、「成果」を組織に与えたかを検証する

 つまりは、インストラクショナルデザインのステップと同様なのですが、提供できる、または提供すべきソリューションの多様性が増している現在、「何のために」を明確にした選択が、「現場」を重視した結果をもたらすラーニングとなると考えられるのではないでしょうか。

■ソリューションの選択

 eラーニングマガジン2005年9号でも述べましたが、選択の多様性に伴うチェックポイントも多くなっています(*「■ラーニングテクノロジー選択のチェックポイントの多様性」を参照のこと)。

 そのような中で、選択を迫られる人材開発担当者には、ベンダーとの有効なコミュニケーションが求められます。自分たち自身の問題が明確になっていない場合、ベンダーとのミーティングの中でそのソリューションを見出していくことになるわけですが、行き違いが生じたり、自分たちの考えていることが十分に伝わらずに、「不足」のある状態で我慢しなければならなくなってしまったりということがおきる場合がままあります。なぜ、そのような事態を招いてしまうのでしょうか。

 2005年ASTDの発表SU304のセッション"Clents are from Mars, Venders are from Venus" ( by Karl M. Kapp) を参考に、eラーニングの選択におけるクライアントとベンダーのコミュニケーションギャップについて考えてみましょう。

■ニーズは伝わっているか?

 まず、自分たちがなぜeラーニングを選択しようとしているのか、ちゃんと伝わっているでしょうか?
 例えば、
クライアントのリクエスト:
「eラーニングの選択によって『チェンジマネジメント』も期待しており、ベンダーには、チェンジマネジメントチームのパートナーとして包括的な対応を望んでいる」
ベンダー側の理解:
「ああ、ウェッブサイトの構築やニュースレター配信などをやって欲しいんだな。適当なウェブ開発担当者一人をアサインすればいいな」
クライアントの思い:
「わが社のeラーニング導入に関してのコミュニケーションはかならずしもよくないし、提案書に「チェンジマネジメント」への対応も入れることによって、eラーニングサービス提供の一環として対応してもらおう。これは、追加的なサービスとしてやってもらいたい」
クライアントのリクエスト:
「実行までの、または実施を戦略的に行うためのeラーニング戦略立案パートナーになってもらいたい」
ベンダー側の理解:
「いくつかの関連ドキュメントやかなりの量のガイドブックもあるし、ステップに応じたオンライン上の参考文献などを案内すればいいな」
クライアントの思い:
「単純にツールの支給をするたけではなくて、戦略について誰か一緒に討議し、協働してくれる人を提供して欲しい」
クライアントのリクエスト:
「ベンダーには、わが社に現存の紙ベースの教材をもとに、eラーニングのデザイン・開発をしてもらいたい」
ベンダー側の理解:
「ええ、教材は持って行って、チャチャッとオンライン上に載せますよ」
クライアントの思い:
「単純にワードやパワーポイントマテリアルをオンラインのフォーマットにするだけじゃなく、効果的なeラーニング実現のための戦略的なデザインを実現して欲しい」
 一見それほど大きな問題にはなりそうにないように思えるのですが、初期段階でのニーズの具体的なすり合わせを行っておかないと、プロジェクトが進んできた段階でお互いの誤解から別の手間や費用が発生したり、満足のいかないサービスに甘んじる結果になったりする可能性をはらんでいます。具体的な「ニーズ」をしっかりと話合う必要があります。

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