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■ベンダーの提案は伝わっているか?
次に、ベンダー側の提案の理解の相違についての例をみてみましょう
ベンダーの提案:
「われわれは大きなeラーニングライブラリーを持っています」
クライアント側の理解:
「ああ、たぶん新しくコースを作る必要はなさそう」
ベンダーの思い:
「いくつか対応できるコースはあるけれど、たぶんあなた方が望んでいるすべての内容には対応できないですよ」
ベンダーの提案:
「御社のシステム要件リクエストについて、以下の事項については例外として提案書に追記させていただきます……」
クライアント側の理解:
「例外がちゃんと書いてあるし、具体的な衝突が起こりそうな場合についてもすでに記述してあるから、このベンダーは私たちの問題を解決してくれるに違いない。プロポーザルを読む前にいろいろ講義されるのもいやだし……」
ベンダーの思い:
「システム要件リクエストの条件定義では大変な目にあったことがある。二度とあれはごめんだ」
ベンダーの提案:
「導入後のコンテンツのメンテナンスやアップデートを御社スタッフで行うことができるよう簡単に使えるオーサリングのツールの提供もできます」
クライアント側の理解:
「おお、それはいい。将来的には(Subject Matter Expert:業務熟達者、専門家などと訳される。インストラクショナルデザインではよく使われる用語の1つ)にオーサリングツールを配布して、簡単に研修を作れるようになる」
ベンダーの思い:
「簡単にとはいってもWebに慣れたスタッフの場合だな。ノンテクニカルやノンIDの人にとっては使えるようになるのに1ヶ月はかかるだろう。それに、すでに自分自身の仕事が忙しいスタッフにアサインしてもインストラクショナルデザインを理解していないスタッフでは、効果的なeラーニングを作成することは大変だし、第一、現場が忙しくてコンテンツのオーサリングなどとてもできないに違いない。3ヶ月もしないうちに、コンテンツのメンテナンスのために我々のところに相談しにくるさ。そのときには、もちろん相応の追加料金をもって引き受けることができる」
ベンダー側の提案書に対しての読み違えもよく見られるケースだと思いますが、書かれているので、理解している、理解されていると考えると、その後の計画に大きな違いが出て来かねません。
クライアント側は、自分たちの「問題」がどこまで明確になっているか、「何が」最終ゴールなのか、ラーニングニーズは何なのか、といったニーズ分析段階で明らかにすべきことをしっかりと検討しておく必要がありますし、ベンダー側は、クライアントの最終ゴールに注目し、その達成のための「目標」が何であるか、その実現のためのeラーニングであることを確認・合意した上で具体的なeラーニング提案が必要です。
eラーニングを取り巻く環境やソリューションの多様性が増せば増すほど、最初の段階で言葉の定義リストをお互いに交換し、確認した上で、具体的な提案の作成にとりかかることが重要となってくるでしょう。また何よりも重要なのは、最終的にはソリューションの提案が「成果」として提示できるかどうかです。ツールやコンテンツの提供だけで終わるのではなく、どのように「成果」の達成度を測るかについての合意や実施サポートができるかどうかについての話し合いもベンダーとクライアントがパートナーとして戦略的eラーニングを実現する場合には重要な要素となってくるでしょう。
中原 孝子氏 プロフィール
中原 孝子(なかはら こうこ)
国立岩手大学卒業後、米コーネル大学大学院にて、教育の経済効果、国際コミュニケーション学等を学ぶ。
その後、慶應義塾大学環境情報学部武藤研究室訪問研究員として、インターネットを利用したデータマインニングやeラーニングなどの研究に携わった。
職歴:米系製造販売会社、金融機関、IT企業にてトレーニングマネージャーとして活躍し、平成14年5月、株式会社インストラクショナル デザインを設立。
会員:ASTD会員、慶應義塾大学環境情報学部研究員
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