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特集2:平田周の「採用した新卒社員を3年で辞めさせないために」第10回 新しいブドウ酒は新しい革袋に
三田教育研究所首席研究員 平田 周(プロフィール
 新しいブドウ酒は新しい革袋に
 「採用した新卒社員を3年で辞めさせないために」というテーマで書き始めたが、その解決は、思わぬ方向へと進んでしまった。極端にいえば、「辞められたっていいではないか」ということにもなりかねない。解決のヒントを期待してこれまで真剣に読んでくださった方たちからは、それは騙しだとお叱りを受けるかもしれない。しかし、辞めさせまいと思うから辞められるということもある。辞めたほうがいいといわれれば、不安になる。

 同じテーマで書かれた本を何冊か読んでみた。若い人たちの性格や心理を詳しく分析し、それを踏まえて、どのような対応や工夫が必要かという方法論がいろいろと提案されている。彼らのやる気を引き出す職場環境をつくれ、仕事に不満を持っているのではなく、上司との関係につまずくのだなどなど。それらはみな当を得るものだと思う。
 しかし、辞められたっていいではないか、という論は見当たらなかった。辞めたいという若い社員に、いま辞めれば一生悔やむことになるぞ、転職してもいいことはない、など一生懸命諭したところで、体制に疑問を持っている人を納得させることは不可能に近い。「ああそうか、それなら辞めて新天地を探すのがいいかもしれないな」と突き放すのも手だと思う。一生懸命止めるだろうと思ったのに、あっさり辞めたらいいといわれて、きょとんとする者もいるに違いない。辞めるのに、挨拶もせず、メールで「辞めさせていただきます」と書いてよこす不届きな者がいると嘆くことも書かれていた。だが、そうするのは、上司に会って退職を願い出ても、どうせ慰留されるだけという思いがあるからであろう。

 ほんとうにかけがえのない人材で、失いたくないということであれば、相手が望んでいることをうまくつかんで、対処することもあると思う。もっとやりがいのある仕事をしたいというと、「会社というところは、最初から面白いという仕事があるものではない。やっているうちに面白くなり、やりがいのある仕事になるのだ」と教えるのが普通である。しかし、小さな子会社で思い切って責任あるポジションをやらせてみることもいいのではないか。その職場の人の納得が必要だが、実際にやってみることでわかってくる。上に立つことの難しさを実感するだろう。だが、もしかしたらすばらしい才能を発揮するかもしれない。自分でやりたいと思うビジネスをベンチャー起業家としてやらせてみるのも選択肢として考えられる。1年間給料を払うことを考えれば、損失にはならないだろう。
 若いからまだ早いというのは間違いではないか。 なにせまだ20歳にならない"未成年者"が、スケートやゴルフで活躍できる時代なのだから。15歳で大学に入れても、十分に力を発揮する子どもはいるはずだ。

 
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