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特集4:顧客志向の次世代マーケティング ”顧客見える化”の視点から ]Z 2つのタイプの「商品の見える化」による顧客への説得効果
デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部 教授 匠英一(プロフィール
 営業マンが自社の商品を説明する場合、メリットだけを強調してデメリットは隠すようにするのは当然だと思われがちです。
 しかし、顧客にしてみれば、商品を使いはじめたらどこが悪いかも後から知ることになります。そして、購入前に営業マンがそれを教えてくれていたら……と恨めしく思ったりもすることになります。
 こうした経験は誰しもあるものですが、今回は「商品の見える化」という視点から"良い点"と"悪い点"の見える化をする説得効果とは何かを検討してみましょう。

■説得ではメリットだけを説明すればよいのか?

 たとえば、次のような食器店の説明を聞いたときではどうでしょう。
 メリットだけを示す「片面提示」とデメリットも示す「両面提示」ではどちらが効果的でしょうか。
@「当社の食器は、耐久性に優れて、置物としても芸術的な魅力を持っています。他の商品にはないわけですから、お買い得ですよ。」(片面提示)
A「当社の食器は、耐久性に優れて、置物としても芸術的な魅力も持っています。ただし、それだけに高価で保管に気をつけていただく必要があります。でも、お買い得ですよ。」(両面提示)
 もう商品を購入したい気持ちがあるようなクロージングの場面では、片面提示のほうが説得性では高くなることが心理的にも実証されています。その意味では、一見すると片面提示のほうがよいと思えるかもしれませんが、これは正しいでしょうか?

■「商品のデメリットも言うこと」=「免疫効果」

 しかし、一般的には、メリットのみの片面提示より、デメリットも併用する両面提示のほうがよいのです。とくに長期的な販売セールスでの効果を考えたときには、やはり両面提示がずっとよいことがわかっています。
 その理由は、悪い評判や口コミへの「免疫効果」があるためです。予め欠点を理解してもらっているため、後から出たマイナス情報も折込済みと見なされて、逆に買い手側には正直というプラス印象を与えるからです。その結果、買い手側は悪い評判にも気にならず、予防接種のように影響を受けなくなるというわけですね。
 ただし、客側の自尊感情があまりなく、他人との親和的な動機が強い場合は、片面提示のほうが説得的なのです。これは、語り手側の自信を持って話す態度をそっくり信じ込んでしまうからだと考えられます。

■満足度は"信頼性"に比例する!

 いずれにせよ、商品の良い点、悪い点をどう客側に見える化するかという問題は、「信頼性」という問題が関わっていることがわかるはずです。
 以前にも説明した"顧客満足度"の原理をここで確認してみましょう。初期の顧客の「期待」に反比例し、商品の品質などの現在価値に比例するという原理ですね。
 この式は、サービス後の満足度を高くするには、客側の"初期期待"を小さくする方がよいということを示しています。逆に、良い点だけを強調する説得などでは、初期期待が大となり、それに対するサービス対応はよりきびしい評価を受けることになるということも示しているわけです。
 つまり、良い点だけを強調する片面提示では、後で商品の悪い点を知る時点で騙されたような気分になり、"信頼性"がそこで損なわれるということです。
 こうしたことから、満足度の原理に"信頼性"の指標を組み込んだ次の式がより正確な満足度を表すものといえるでしょう。


■匠 英一(Eiichi Takumi)プロフィール
匠 英一氏 デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部:教授
和歌山市生まれ。東京大学大学院教育学研究科を経て東京大学医学部研究生修了。
90年より(株)認知科学研究所を創立。95年より中堅IT企業に入社し、インターネット活用の企画営業や顧客管理(CRM)のコンサルに従事。これまで11の異業種団体や資格団体を創設。公的な役職として、中央職業能力開発協会OA検定中央委員、CRM協議会理事・事務局長、早稲田大学客員研究員など歴任。
 現在は上記大学の教授職を兼務しながら、(株)人財ラボ(上席研究員)と(株)ミリオネット(非常勤取締役)などで顧客サービス発想法、eラーニング、CRMシステムのコンサル業務に従事。
 著書には、「顧客見える化」、「心理マーケティング」、「CRM入門」訳、「カスタマーマーケティングメソッド」訳、「意識のしくみを科学する」、「イラストでわかる心理学入門」等多数あり。
E-mail:takuei@netlaputa.ne.jp

 
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