|
|
アメリカでは、転職はめずらしくないというか、当然といってもよい。経営状況が悪くなれば、大量の社員を解雇することに会社側は躊躇しないから、本人がずっとその会社で働きたいと思っても、叶わぬことだ。それでも、誰でも転職するというわけでもない。苦境にあえぐジェネラル・モーターズの次期CEO有力候補のフリッツ・ヘンダーソン氏は現在49歳だが、25年間GMに勤務している。永年勤続で経営トップになる人もいるにはいる。しかし、わが国と比べれば圧倒的に転職が多い。
なぜ転職が多いかにはいろいろな理由が挙げられるが、人事部が採用して配属されるというよりは、各部署のリーダーが自分の考えで採用することが多い。そのため、ボスとうまくいかないとか、意見が異なればやめるほかないという事情がある。ほかにも、日本のようにそろそろ年になったから、昇進させねばという考えが薄い。課長として採用したのだからという理由で、どんなに優秀でも課長として最高なのであって、部長職の能力はわからないとするルールが支配的である。部長に昇進できるチャンスは、現在の部長が上から落第点をつけられるか、他社に転職した時くらいである。だから、部長になりたければ、部長職を求めている他の会社に応募せざるをえない。 |
|
|
|
ひんぱんに人が変わって、仕事の引継ぎや職場での人間関係、顧客先との取引などに支障は起きないのか、と心配になる。しかし、そこはそういうカルチャーができていて、ほとんど問題にならないから不思議だ。
引継ぎもさほど苦労はしていない。日頃から書類(いまではPCのデータ)がきちんと分類され、整理されているから、ほとんど問題にはならない。日本人のように、机の引き出しや机の上に書類が無造作に置かれているというようなことはない。だから、ここにこういうものがありますというリストを渡せばすんでしまう。
新任者は、先任者とは違うことをやろうとする。周りも新しいやり方をやるだろうと期待しているから、そのことにまったく違和感がない。むしろ同じことをやれば、なあんだと失望されるおそれさえある。幹部ともなれば、前任者が使っていた机すら新しいものと取り替え、部屋のデコレーションも変えてしまうほどだ。
長年同じ仕事をして失敗もなく、手馴れていて効率がよい、周囲の人間関係もよいことをメリットとして考ええる日本人の習慣と、新しいやり方でさらに仕事が向上するのではないかと期待するアメリカ人の気質とは大きく違う。転職が多いからそうなったのか、そういう気質があるから転職が多いのかは定かではないが、両者が無関係でないことは確かである。 |
|
|
|
|