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特集4:顧客志向の次世代マーケティング ”顧客見える化”の視点から ]X サービスをどう”顧客に見える化”するか/ネット利用型のITサービスより
デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部 教授 匠英一(プロフィール
 最近、IT業界では「SaaS」(Softwere as a Service)というコトバが注目されてきています。これは、月額固定料金でのソフト利用がネットでできるだけでなく、そこに複数のベンダーが開発したツールを組み合わせて共同サービス化したものです。
 サービスというのは形がなく、時間とともに消費される"見えないもの"ですので、これを顧客にわからせるように"見える化"することは満足度をアップしていくうえでも大変重要なことです。
 今回はそうしたサービスの見方を検討してみましょう。

■サービスを顧客に見える化する「SLA」とは?

 サービス業界は、飲食、教育、医療など衣食住に関わるものから娯楽関係の映画・TVなど顧客の経験価値に関係する形のないものです。
 たとえば、レストランで食事をした場合、入り口と出口が明確ですが、大学での教育のように数年間続き、卒業してからも「校友」としての関係ができると生涯にわたるものとなり"出口"が不明のものもあります。
 こうした理由から、まず見える化すべきこととして、顧客に何がそのサービスの価値でリスクは何かを明確な基準で示すことだといえます。
 「SLA」(Service Lebel Agreement)とは、そうしたサービスの基準を示したITベンダーによる"保証的"な契約文書のことです。これは、法的には保証そのものではない点に注意する必要があります。
 こういう場合はここまで当社で実行し守ります、とあくまでサービス内容を事前に客側に公開した文書です。
 たしかに多少の法的拘束性も持つものですが、SLAは顧客のためというよりも、企業側が責任を後で問われないようにするために、事前に保証の条件や範囲を明示しているといった防御的なもの多いのが現状です。

■SaasによるIT・ソフト活用のサービス化

 IT業界では、ソリューションというサービスをSLAとして顧客に見える化するようになった背景として、ネット技術での回線保証の問題がありました。2000年前後に登場した「ASP」(Aprication service provider)というネット上からのソフト利用方式が、これに拍車をかけたといえます。ユーザはシステムが欲しいのではなく、業務に必要な機能とその利用サービスが欲しいのです。
 図1にあるように、初期の自社構築式はITを"所有"することが前提でしたが、顧客のハードをプロバイダー側に置くホスト式、そしてアプリ自体もプロバイダー側から借りて"利用"するASP式と発展してきます。その進化型がSaaS式です。従来のソリューションという構築型の所有モデルではサービスの内容よりも、システムのハードレベルでのコスト効果を問題にするものでした。それが、SaaSの利用モデルでは、経理や開発などの業務レベルでの機能を組み合わせて利用できるネット上のサービスに発展し、そのサービスをどう"見える化"するかが重要になってきているというわけです。

■SaaSの基盤としての"PaaS"によるIT活用と「見える化」の課題

 さらに最近では、SaaSの基盤としての"PaaS"(Platform as a service)によるIT活用が注目されるようになってきています。Platformとは、土台的なものという意味ですが、ソフトやハードの組み合わせを自在化する技術の総称と思ってもらったほうがよいかもしれません。
 グーグルやアマゾンはまさに広告や本の業界でPaas型サービスを提供している世界最大の企業です。
 図2にあるように、「見える化」の多様なレベルをこうしたSaas型やPaas型のIT活用で実現することができる可能性が広がってきているのです。新たなIT化の流れといえるわけですが、筆者が会長を務める「見える化経営協会」(www.mieruka.org)でも同様なPaas型サービスを開始しています。
 結局は水道のようにオンデマンドで必要なときに必要な機能を自在に利用できるサービスモデルの発達こそが、サービスの「顧客への見える化」を加速してきているといえるでしょう。


■匠 英一(Eiichi Takumi)プロフィール
匠 英一氏 デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部:教授
和歌山市生まれ。東京大学大学院教育学研究科を経て東京大学医学部研究生修了。
90年より(株)認知科学研究所を創立。95年より中堅IT企業に入社し、インターネット活用の企画営業や顧客管理(CRM)のコンサルに従事。これまで11の異業種団体や資格団体を創設。公的な役職として、中央職業能力開発協会OA検定中央委員、CRM協議会理事・事務局長、早稲田大学客員研究員など歴任。
 現在は上記大学の教授職を兼務しながら、(株)人財ラボ(上席研究員)と(株)ミリオネット(非常勤取締役)などで顧客サービス発想法、eラーニング、CRMシステムのコンサル業務に従事。
 著書には、「顧客見える化」、「心理マーケティング」、「CRM入門」訳、「カスタマーマーケティングメソッド」訳、「意識のしくみを科学する」、「イラストでわかる心理学入門」等多数あり。
E-mail:takuei@netlaputa.ne.jp

 
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