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三田教育研究所首席研究員 平田 周(
プロフィール
)
第7回 なぜ本が読まれなくなったのか
出版社が悲鳴をあげている。本が読まれなくなったからです。なぜ本が読まれないのか。そこにはさまざまな問題があります。
毎週出版される書籍(料理、旅行、絵本なども含む)は1200〜1500冊にもなります。それでも、出版社はどこも経営に苦しんでいます。本が昔のように売れないからです。書籍の総販売額は、1990年の1兆900億円から2005年には9200億円へと15.6%減少しています。雑誌と違い、書籍の販売部数は確かな統計がないのですが、2003年のデータでは7億1585万冊となっており、前年比3.1%減です。以後も減少傾向は続いているとされています。
一方、新刊書籍の点数は、毎週1200〜1500冊も出版されており、1点当たりの販売部数が大きく落ちているものと思われます。出版社としては、売上げを確保するために出版点数を増やすほかないわけです。
売らんかなの編集方針がますます強くなっていますので、読者の好みに迎合する企画が増え、内容の質的低下が止まりません。少し内容のあるものというと、ビジネス書では翻訳ものです。
それでも、書籍の年間販売額はアメリカが295億ドルで第1位、日本は191億ドルで第2位につけています。1人当たりの書籍購入額は日本がトップで 150ドル、2位以下はノルウェー、ドイツ、シンガポール=アメリカ、フィンランドの順(いずれも2005年の数字)です。アメリカでは、一部エリート層(学生を含む)がよく本を読み、日本は誰もが平均的に本を買う傾向が強いということを示しています。
しかし、わが国で本が読まれなくなっているのは、身近な風景からもわかります。電車の中で本を読んでいる人はめずらしくなっています。アメリカでも、新聞を読む人がどんどん減っています。ニュースはウェブで見るという人が増えているからです。いわゆる活字離れが起きているのです。
印刷された文字で読もうと、インターネット、あるいはテレビなどの映像で知識を得ようと、本と比較してほかのメディアでは深いことが伝わりません。いうなれば、ショーメッセージ化が進んでいるのです。
アメリカの大学生は、教師からのアサイメントもあって、難しい本をよく読みます。ビジネスの管理職・経営者層も読書家がほとんどです。日本が世界でも読書についてはトップクラスだといばってはいられない状況なのです。国民の一部でもよいから、しっかりと本を読む習慣をつける必要があります。
あらゆるものの境界領域が不明瞭になってきている今日、さまざまなジャンルの良書を数多く読むことは必要不可欠です。
本は知的好奇心を呼び起こします。好奇心が高まれば、本を読む衝動に駆られます。ビジネスにしろ、研究にしろ、所詮は「好奇心」の強い人がすぐれた能力を示すと私は思います。
ではなぜ本が読まれなくなったのでしょう。その理由をいくつか挙げてみます。
・インターネットの普及
・携帯電話の普及
・高速化するライフスタイル(本を1冊読むのに数時間かかる)
・落ち着いて読書する生活がなくなった
・専門技能を身につけていることがより有利だとする風潮が強まった
・いい本が出版されなくなった
・好奇心が薄れてきた
情報洪水の中、べつだん本を読まなくても、情報にはこと欠かないという思いがありませんか。だまっていても、情報は目や耳に入ってきます。しかし、読書の習慣は必ず違ったものを与えてくれます。
一方で、広い知識(教養)が求められる時代に変わりつつあります。ぜひ読書の習慣を身につけられることをすすめます。きっとあなたのビジネスライフに大きな果実をもたらすことは間違いありません。著名な経営者はみな夜遅く、あるいは朝早く、本を読む習慣を持っている人たちです。
■平田周 氏プロフィール
三田教育研究所首席研究員
どうしたら若い人たちの知力、思考力、英語力を高めることができるかを研究しています。大企業、外資系企業、中小企業などでの勤務、ベンチャーの立ち上げ、大学で教鞭など、さまざまな体験をしてきました。元東京工科大学大学院バイオ・情報メディア研究科客員教授。専攻:国際情報論。
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