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特集4:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(22)
 たとえば、プロジェクトで、あるプログラムにバグ(修正すべき不具合)があったとする。この場合、マネージャー(PM)は、以下のように感情に任せて担当者を叱ってしまうことがある。

PM: なぜ、このようなミスが起こるのか。今後、どうするのか。
担当: 申し訳ありません。以後気をつけます。
PM: 具体的に、何をどういう具合にすれば、再発は防止できるのか、その説明がほしい。
担当: それは……
PM: さあ、どうするのか?
担当: ……

 このように、詰問していくと、担当者はどういう心理状態になるのか考えてみてほしい。多くの場合、PMに二度と不具合を報告したくなくなる。つまり、不具合を隠すか、常に自分で解決しようと常に強く意識するようになるのである。

 本来、PMは担当者よりも、知識も経験も上の人間が担当する。だから、問題を解決する能力も高いはずである。だからこそ、担当者の上にPMがいて、問題を早期に把握して解決できるようにするのである。

 しかし、先ほどの会話はどうか。これは、担当から、PMに情報があがらないように動機付けしてしまっている。つまり、負の動機付けがなされているのである。

 これは、モチベーションコントロール(動機付けの制御)としては、もっともやってはいけないことであることを理解してほしい。本来、プロジェクトにおいては、メンバに正の動機付けを行い、元気を出してもらうことが必要だし、情報は何でも、すばやくPMにあがるようにしなくてはならない。

 しかし、そうはなっていないのである。これが、言葉の恐ろしいところである。では、どんな会話をすればよいのであろうか。

 大事なことは、「起こってしまったことは事実であり、どんなに怒っても、問題が起こる前に復旧できない」ということである。

 だったら、1.「再発しないこと」、2.「今後、不具合が起こっても、情報がすぐPMにあがること」、3.「メンバのやる気を削がないこと」の3つを担保するような会話をすることである。これを目的に会話をしていけばよい。

PM: 俺が見ていながら申し訳なかった。なぜ、このようなミスが起こるのか。今後、どうするのか考えよう。
担当: 申し訳ありません。以後気をつけます。
PM: 君だけの責任ではないよ。大事なのは、今後だね。具体的に、何をどういう具合にすれば、再発は防止できるのか、君の意見が聞きたい。教えてほしい。
担当: それは……
PM: この事象は、他のケースと違うことはなかった?
担当: そういえば……

 大事なのは、個人を必要以上に責めないということと、PMが自分の責任を認めることである。メンバのミスをPMが自分のミスとしないと、メンバは安心して仕事に打ち込めなくなる。悪い情報をあげず、失敗を恐れ、ダイナミックな仕事ができなくなるのである。

 こんなことが、不満足につながり、組織を崩壊に導くので注意してほしい。

 次回も、「満足」に関する話をする。


■芦屋 広太(Asiya Kouta)氏プロフィール
芦屋広太氏 OFFICE ARON PLANNING代表。IT教育コンサルタント。SE、PM、システムアナリストとしてシステム開発を経験。優秀IT人材の思考・行動プロセスを心理学から説明した「ヒューマンスキル教育」をモデル化。日経コンピュータや書籍への発表、学生・社会人向けの講座・研修に活用している。著書に「SEのためのヒューマンスキル入門」(日経BP社)、「Dr芦屋のSE診断クリニック(翔泳社)」など。

サイト : http://www.a-ron.net/
ブログ : http://d.hatena.ne.jp/officearon/
連絡先 : clinic@a-ron.net

 
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