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谷口哲也氏
:
はい。高校時のカリキュラムという点から見れば、進学志望先としての「工」学離れ、「情報」離れの原因の1つはここにあるのかもしれません。また、さかのぼると、小学生や中学生で本当に理科が好きという先生も昔に比べて減ってらっしゃると聞いたことがあります。本当に物理などの学問が好きな方は、教育者よりも研究者の道を選択されているのではないかと思います。小学生や中学生も、本当に理科の好きな先生から教わる機会が減るわけですから、理科離れ、理系離れの生徒が増えるのも無理がないことなのかもしれません。
Mr.サイトウ
:
そういわれるとそうですね。私が学生の頃は、理科の時間を楽しみにしていたものですが、先生自身が理科を好きだったような記憶があります。ところで、高校の教員の方々は、現在経済産業省が推し進めているITSSやETSS、UISSなどのスキル標準化動向についてはどう考えているのでしょうか。
谷口哲也氏
:
現時点では、ほとんどご存知ないと思います。産業界の要望は、残念ながらほとんど高校には伝わっていないのではないでしょうか。しかし、一方で関心をお持ちの先生方もたくさんいらっしゃいますので、河合塾としては、そういう先生方と一緒に勉強していきたいと考えています。
Mr.サイトウ
:
ほかに、情報離れ、IT離れの原因は考えられますか。
谷口哲也氏
:
そうですね。昨今のIT不況や、中国やインド、ベトナムの台頭、前回触れたコンピュータの普及・大衆化、そしてITの仕事自体が3K(きつい、きつい、きつい)なのにもかかわらず相応の見返りがほとんどない。サービス残業されている方も随分いらっしゃるのではないでしょうか……。一言で言えば、仕事のイメージがよくないのです。それを払拭する努力をIT業界は率先して実施することが急務ではないかと考えます。
Mr.サイトウ
:
大変耳の痛いお話です。確かに、イメージの悪さを払拭する努力をIT業界は本気で取り組んでいないですね。長期間にわたり慢性的な人材不足に陥っているにもかかわらず、抜本的な改善を行っていないと思います。そして、ある面で負のスパイラルに陥っているような気がしてなりません。
谷口哲也氏
:
そうですね。イメージ払拭のためにIT業界の自助努力はとても重要だと考えます。しかし、我々は一方で、IT業界から大学教育へのメッセージや提言も必要になってきているのではないかと考えています。つまり、ITの仕事をするためには最低限これだけのことは勉強してきて欲しいという要件を大学に出して欲しいのです。
Mr.サイトウ
:
どういうことでしょうか。
谷口哲也氏
:
つまり、企業に送り出す大学側もある程度の責任があるということです。もし、ITのある職種につきたいのであれば、企業側はこういう要件を出してきているから、それにそった教育を体系的に実施していかないといけないということになります。それをするかしないかで、就職後の「こんなはずじゃなかった」というようなミスマッチ感は相当なくなると思います。逆に、受験生から見れば、自分がつきたい仕事が職種として明らかになっているとすれば、どこの大学を選択すれば希望する仕事に就きやすいかどうかの目安になるのでメリットは大きいのです。
Mr.サイトウ
:
昨今よく言われる産学連携が受験生に恩恵をもたらすのですね。
谷口哲也氏
:
はい。具体的な取組みをご紹介しましょう。まず、下記のURLをご覧ください。
http://www.univinfo.jp/rating/g_list.php?st=0&flag=g
本サイトでは、株式会社三菱総合研究所および学校法人河合塾が、平成15年度に経済産業省の委託により開発した「産業競争力向上の観点からみた大学活動評価手法」を用いて、試行評価(レーティング)を実施した結果を公開しています。産業界のニーズへの対応という大学の特定の側面に焦点を絞ったものになっております。ここでは、IT分野の人材群を指定すると、その人材群の養成に優れた大学の学科をリストで表示し、かつそれぞれの詳細を見ることが出来ます。
Mr.サイトウ
:
これは素晴らしいですね。
谷口哲也氏
:
下記URLでは、「IT研究分野のミスマッチの大学比較」をしております。別添3(研究活動プロファイル)をご覧ください。
http://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/rating/f15houkokusho/
f15hyoukashuhoukaihatu.htm
また、「河合塾科学ミュージアム」というサイトを開設して、受験生の興味から学問、そして仕事に直結するような情報を提供したりもしています。
http://www.kawai-juku.ac.jp/sci/index.html
また、ITとは直接関係ありませんが、バイオ・自動車・光学・半導体の分野における「大学教育における産業界ニーズと教育カリキュラムのマッチング度合いの分析結果について」報告書を作成しておりますので、ご参考までにご覧ください。
http://www.meti.go.jp/press/20050621003/20050621003.html
Mr.サイトウ
:
これらの取り組みを見ると、産業界の1人として恥ずかしくなってしまいます。今後も、ますます産学連携や大学への提言などで河合塾様のご活躍が期待されます。本日は長時間にわたりありがとうございました。
谷口哲也氏
:
IT業界のご発展に繋がれば幸いです。こちらこそありがとうございました。
■谷口 哲也(たにぐち てつや)氏プロフィール
学校法人河合塾 教育研究部 統括チーフ。昭和36年佐賀県生まれ。九州大学教育学部卒業後、河合塾職員として受験生を指導。1998年より大学コンサルタントとして、マスコミ、受験情報誌、入試研究会などを通じて高校・受験生に対する提言を行う。また、国・公・私を問わず、全国の大学教・職員を対象とした講演活動や学生募集・大学改革に関する提言も行う。2005年より現職。
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