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学校法人河合塾 教育研究部 統括チーフ
谷口 哲也(
プロフィール
)
大手予備校で有名な学校法人 河合塾の調査で、受験生の「工学部離れ」がここ3〜4年急速に進んでいることが判明した。この勢いが加速度を増し、このままだとIT業界は人材不足で危機的状況を迎えるのではないか。Mr.サイトウは、本調査を行った河合塾 教育研究部の谷口 哲也氏にインタビューを行った。
Mr.サイトウ
:
IT業界を含む産業界では、主に新卒採用・第二新卒採用の点で、現在の受験生や大学生の気持ち、そして学力を含めた能力というものが、現在どういう状態にあるのかということが非常な関心事でございます。特に、情報処理の分野の学生というのが段々少なくなってきているというのは身に染みてわかっております。非常に採用難、言ってしまえば取り合いになってきているという状況です。産業界、とくにIT業界においては、何らかの施策、アプローチが急務であると思われますが、谷口様はどのようにお考えでしょうか。
谷口哲也氏
:
まず、現在の受験生の学力という点から回答いたします。まず【図1】をご覧ください。
Mr.サイトウ
:
懐かしいといいますか何と言いますか……。
谷口哲也氏
:
そうですね。社会人になってしまうとそう感じられる方が多いでしょう(苦笑)。さて、内容をよく見てください。問1のような問題は簡単な問題ですので、正答率も高いのですが、問2に関しては、連立不等式の意味も考えず単純に2つの解をならべたFの誤答が2割以上もありました。このような受験生が今年から大学に入学してきています。
Mr.サイトウ
:
そうなのですか……。
谷口哲也氏
:
次に、【図2】をご覧ください。これは、全国レベルの模試(数学)の設問別正答率を定点観測したものです。2004年度と2005年度で少しだけ数値を変えて同種の問題を出題しているのですが、それを比較することで現役生と高卒生にどれだけの学力差が生じているかをみることができます。2005年度の現役生(新課程)と2004年度の高卒生(旧課程)を比較した結果、各年度とも1学期の成績なので、正答率は高卒生のほうがいいのですが、その現浪差が大きくなってきていることがわかります。
Mr.サイトウ
:
新聞など各種メディアで報道されているように、総じて課程変更による学力の低下は起こっているのでしょうか。
谷口哲也氏
:
「学力」という言葉の定義自体難しいですが、受験学力という観点から見るとそういえるかと思います。ただし、すべての受験生の傾向とは必ずしもいえません。高校によっては、補習をしたり、教科書以外にドリルや参考書を与えていたりします。こういう高校の大学合格実績は、以前とそれほど変わってはいないのです。つまり、すべての受験生に万遍なく学力低下が起こっているとは言えないと思います。
Mr.サイトウ
:
なるほど。
谷口哲也氏
:
また、日本では数学を嫌っている生徒の割合が、先進国の中では比較的多いというデータがあります。それから、高校の文理分けの時期が早くなっており、1年生の12月までに分けるのが7割、早いところは7月までに2割となっています。要するに、文・理のどちらに進むのが自分にとっていいのか悩む時間が少ないということもあるのではないかと思います。そして、文系を選択した高校生は、理系課目を勉強しなくなってしまっています。その結果、理系の知識の量が以前よりも減ってしまっているということがいえるのではないかと思います。
Mr.サイトウ
:
そうなると、ますます物理などの理科離れが加速していきますね。
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