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特集4:企業内教育の現状と課題・調査報告 後編
■ 教育効果測定の実施状況
1)教育評価の実施状況

□ 実施レベルや測定精度には差があると思えるものの、プログラムの良し悪しの評価は90%以上の事業所で既に実施されている。

  HRDプログラムの評価については、ほぼ全員が実施していると回答した。教育効果測定の試みは、多くの組織で実行に移されているようだ。


グラフ:実施テーマの推移
グラフ:教育効果測定の実施状況
 
2) 測定ツールの使用状況

□「参加者アンケート」はほぼ全員、「知識確認テスト」は約60%の活用状況

 最も使用されている測定ツールは「参加者アンケート」99%、次に「知識確認テスト」57%と回答された。3位以下は「参加者インタビュー」40%、「参加者への追跡調査」38%、「職場での活用度調査」29%、「参加者の行動観察」24%、「ロールプレイング」21%と続く。レベル2までの測定に対しては、ある程度日本でも実施されている。

 「その他」として挙げられた測定手段には次に示すような方法が回答されていた。「参加者上司アンケート」「コンピテンシー診断」「最終プレゼンテーションの品質評価」「感想文の提出」。
グラフ:測定ツール使用状況(多重回答)
グラフ:測定ツール使用状況(多重回答)
  教育効果の有無、社内手続きや基準に則り、合理的な変更が行なわれるのではなく、組織のパワーバランスによって修正がなされている実態が表れたといえそうだ。

3)教育効果測定の実施目的

□ 研修改善や参加者の学習理解度の確認が主目的

 「HRDプログラム改善」「学習理解度確認」という測定目的は90%以上が理解を示し、プログラムの改善は70%、理解度確認は56%がデータ活用も認めている。しかし「他の投資手段との有効性比較」では60%がその目的を認識しておらず、「HRDプログラムの集客力を高めるための証拠データを収集」は60%弱、「最適な参加者を決定」は約55%、「HRDプログラムの組織業績の貢献度を把握する」は50%、「HRDプログラムの実施予算獲得の根拠」は43%、「経営戦略とHRDプログラムの適合性を評価」は40%が目的を認識していないと回答している。これらの測定目的は、「経営戦略との適合性」や「組織業績への貢献」「投資効率の向上」といった研修が経営課題を解決するための、より上位の情報を入手するための活動である。経営課題の解決機能を意識した測定目的までには至っておらず、研修実施機能をメインとした測定目的のレベル(プログラムの改善、理解度把握など)に留まっているのが現状といえるだろう。
グラフ:測定目的とデータ活用状況
グラフ:測定目的とデータ活用状況
(数値=回答数)
 
■ 調査から浮かび上がった3つの課題
 
 今回の調査活動によって、日本企業のHRDや教育研修に関する課題の全容ではないにしても、課題の糸口が見えたように思われる。2回にわたる報告を締めくくるにあたり、3つの課題を述べていきたい。

【1】経営幹部層、ライン管理職の巻き込みの不足


  ナレッジマネジメントは企業活動にとって、現在そして今後、最も重要な課題の一つであることに異存はないであろう。HRDが果たす機能は本来、その重要なナレッジを創出し、移転させることにある。ナレッジを蓄積、流通させる機能を果たすITへの投資はその効果性を疑問視する声はあるものの、いまだ衰えるところを知らない。一方で、教育研修投資への意欲はどうであろう。「業績の回復が見込めない間は、新規教育研修は凍結」「景気回復が見込めない折、教育予算は大幅削減」という決定事項を未だに多くの企業で耳にする。
 今回の調査で浮かび上がったように、教育効果測定の実施目的のその多くは、プログラム改善のために実施されており、経営戦略と教育研修との適合性の確認や組織業績への貢献評価についての測定がほとんどなされていない。このことは業績に対して直接の責任を持つ、経営層、ライン管理職とHRD部門との業績に対する温度差と解釈できるのではないだろうか。我々HRDは経営層、ラインとの距離を埋めるために、彼らへの報告を密にし、経営活動を支援する存在とならなければならない。より積極的な巻き込み活動が課題といえるだろう。

【2】品質管理のサイクルが教育研修業務で回っていない


  今回の調査では経営課題の変化と人材育成方針連動(見直しと発表の頻度)についても質問を投げかけている。紙面の都合上、今回の概要報告では割愛させていただいたが、調査結果からの毎年の見直しと作成・発表が平均的な活動だという点が判明した。その見直しを受け教育研修テーマ見定め、ゴールを設定し、具体的なプログラムの設計・開発を実施するプロセスでインストラクショナルデザインに代表される科学的なアプローチがほとんどとられていない。また教育研修の経営課題との適合性評価に対し、効果測定がなされデータ活用が行なわれているのは、わずか18%という調査結果である。曖昧なゴールによって教育研修が実施され、経営への影響に対する最終評価が成されていない。品質管理のサイクルが分断されているという実態が浮かび上がった。教育研修業務にP-D-Sサイクルを回すことが課題といえるだろう。

【3】HRDスタッフの専門技術の不足


 上記1,2の課題の存在を証明するかのように、HRDスタッフの関心事項のトップに、教育ニーズ分析技術、教育効果測定技術、ブレンディング技術に代表される「HRDスタッフに必要な技術」が挙がっている。これら専門技術を持たない状況では教育研修業務に品質管理サイクルを回し、経営課題から具体的教育研修へと落とし込み、その実行の有効性を証明するという一連の業務をすすめることは、とてつもなく大きな壁として立ちはだかることは疑う余地がないだろう。
 
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