このように主張すると、多くの管理者が「自分はうまくやっている」と答えるに違いない。当たり前のことだが、「自分はヒューマン・マネジメントがうまくできない」と自覚している管理者はほとんどいないと思う。管理者になるような人材なら、ある程度のスキルも、成功経験もあるだろう。これが自信となって、「ヒューマン・マネジメントスキルも高い」と思い込んでしまうのである。
しかし、自分で思い込むのと、現実に高いスキルを備えているかは別の話である。筆者はヒューマン・スキルを指導するIT人材コンサルタントであるが、いつもこのギャップに苦労する。つまり指導しようとしても、肝心の本人が「必要ない」と感じ、真剣に取り組まないのである。このような場合は、具体的なスキル向上の指導の前に、本人に指導の必要性を自覚させることが必要になる。本人が自覚し、指導の必要性を心から願わない限り、指導は成功しない。これが筆者の考えだ。では、これまでの話を分かりやすいように事例を使って説明したい。
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