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特集4:顧客志向の次世代マーケティング ”顧客見える化”の視点から XIV 企業ブランドをどう”顧客に見える化”するか/メタファーの方法より
デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部 教授 匠英一(プロフィール
 「あなたの会社をお客様にワンフレーズで説明してください」と言われて、明確にそれを語れますか? こんなとき、企業のメッセージをメタファー(比喩表現)でコンセプト化すると効果的です。このことは、一方では企業ブランドを顧客側から見える化することでもあります。そこで今回は顧客見える化の視点を逆にして、顧客にどう印象よく自社をイメージ化するかという"顧客に見える化"する方法を検討してみましょう。

■企業ブランドを顧客に見える化するには?

 京都では、MKタクシーという京都を拠点とするタクシー会社が顧客サービスの良さで評判です。
高い帽子をかぶり、ドアを自ら降りて開けてくれて、「ありがとうございました」と丁寧におじぎをしてくれます。タクシーの運転手がそこまでしてくれるとうれいしいものですね。つい笑顔でこちらも「ありがとう」と言ってしまいます。
 その会社のコンセプトがユニークです。「おかかえ運転手つきの自家用タクシー」というのです。
 高級車を自家用車として自前で管理し、購入した場合の月額コストが30万はかかるといいます。しかし、必要なときにケイタイとインターネットで呼びだしに応えてくれる同社のサービスならずっと安いというのです。"選ばれるタクシー会社"をめざすだけでなく、自家用車のように日常的に使えるタクシーは、従来とまったく異なるコンセプトです。

■企業ブランドのメタファー表現の意味するもの

 このような例は企業ブランドを確立するうえで重要です。他社と差別化をはかり、しかも顧客にもわかりやすくイメージさせることが成功の条件だからです。「おかかえ運転手つき自家用タクシー」はそのイメージにまさにフィットしています。そして、そのメッセージはメタファー(比喩)の表現によって可能となっているのです。
 タクシーは本来「自家用車」ではありません。それをあたかも"同じ"とみなすことによって新しい意味を与えることになります。タクシーが字義通りの意味では表せなかったことが、たとえる側のコトバから推理(アナロジー)できるからです。自家用車ならいつも自分が乗りたいときに乗れる。しかも、おかかえ運転手がいるとなればうれしい。
 もちろん、こんなことをサービスとして実行するのは大変なのですが、それを携帯電話など活用して、いつでもどの場所でもすぐにタクシーが行ける仕組みにしたところに成功要因があるといえます。

■CMにおける企業ブランドのメタファー表現(1):物語性

 もうひとつ、広告やCMにおける企業ブランドの説得的な表現効果の事例をみてみましょう。
これは、メタファーによる物語性を活用することがポイントです。
 思わず笑ってしまうような広告は、好感度が増すだけでなく記憶効果も高いことがわかっています。
「どうする?アイフル」というチワワ犬を使ったCMは、海外でも最優秀賞を受けるほど評価されました。このCMでは、チワワの「くぅーちゃん」がかしこい消費者の象徴になって、ドジな父親と対比されています。
 たとえば、部屋の床にペンキを塗り、最後に自分の足もとしかスペースがなくなったことに気づく場面では、「事前にしっかり計画しましょう」とチワワの首にかけたメッセージで、計画性の大切さをアピールしています。消費者金融という業界では、口コミはほとんどなく、マス広告やDMへの依存率が高いことからTV広告の効果は直接利益に反映されます。2002年8月開始以来、24ヶ月の間で20ヶ月新規顧客獲得で首位になったということからも、その効果のほどがわかります。

■CMにおける企業ブランドのメタファー表現(2):シリーズ性

 もう一つの注目点は、CMを"シリーズ"として次の期待感を継続的に視聴者に持たしていることです。アコムのCM例では、すでに4年も続く定番であることから飽きられない工夫が必要でした。同時に一貫した消費者へのメッセージが伝わることが求められ、それがブランドイメージを確立させることなったのです。
 この場合に、CMの中で「貸りすぎに注意しましょう」ということを、企業が直接的な表現で語るのは嫌らしく感じられます。それを小さなペットの犬に言わせることで、逆に視聴者に対して共感をつくったことがよかったのです。
 以上のような企業のキャッチフレーズやCMのメタファー活用の方法は、企業ブランドを広く共感を得て見える化していくのに大変効果的なものといえるでしょう。



■匠 英一(Eiichi Takumi)プロフィール
匠 英一氏 デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部:教授
和歌山市生まれ。東京大学大学院教育学研究科を経て東京大学医学部研究生修了。
90年より(株)認知科学研究所を創立。95年より中堅IT企業に入社し、インターネット活用の企画営業や顧客管理(CRM)のコンサルに従事。これまで11の異業種団体や資格団体を創設。公的な役職として、中央職業能力開発協会OA検定中央委員、CRM協議会理事・事務局長、早稲田大学客員研究員など歴任。
 現在は上記大学の教授職を兼務しながら、(株)人財ラボ(上席研究員)と(株)ミリオネット(非常勤取締役)などで顧客サービス発想法、eラーニング、CRMシステムのコンサル業務に従事。
 著書には、「顧客見える化」、「心理マーケティング」、「CRM入門」訳、「カスタマーマーケティングメソッド」訳、「意識のしくみを科学する」、「イラストでわかる心理学入門」等多数あり。
E-mail:takuei@netlaputa.ne.jp

 
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