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特集1:平田周の「採用した新卒社員を3年で辞めさせないために」第4回 年功序列制は容易には崩れない
三田教育研究所首席研究員 平田 周(プロフィール
 年功序列制の生い立ち
 年齢の順で地位が決まる、いわゆる年功序列はわが国の伝統的な人事制度だと思われているが、それが定着したのは年功序列型賃金制度が底流となった戦後だとする説もある。一方、年長者を尊敬する儒教的な思想がわが国の年功序列制の基盤になっているとする考えは根強い。個人的な技能が能力を決める狩猟民族と違い、労働集約型の農耕民族では経験豊富な者が指導者になるのが最も好ましいとする意見もある。

 しかし、これらの意見に見落とされているのは「身分」である。武士社会では、年齢と無関係に士族が上位の階層とされた。士族の中では年功序列は存在したが、商人、町人、農民といった階層間では年功序列は存在しない。
その傾向は士族制度がなくなった明治以降も、学歴や学閥として存続した。
少数派の大学卒は、若くして高い地位になれたし、将来も約束されていることが多かった。東大法学部卒などエリートであれば、20歳代で税務署長の職に就くことができた。いまでも、官僚制の中にあって、キャリア組とノンキャリア組との間には、年功序列制はない。若いキャリアがノンキャリアの年配者の上に立つことができる。

 戦後変わったのは、大学が激増し、大半の人が大学に進学して学卒になったことである。民主主義の思想は国民を平等にした。身分制度の中の年功序列ではなく、万人を対象とする年功序列に変化したのである。固定的な身分制度は多くの弊害と不平等をもたらすが、身分は社会的な能力を示すものでもあった。しかし、万人を年功序列で地位を決めるとなると、能力的に十分でないものも加齢とともに昇進していくことになり不合理性が強まる。戦後の年功序列制はこの点に問題があった。

 評価が苦手な日本人
 日本人の特徴を一言で言えと欧米人から尋ねられた時、「評価ができない民族」と答えている。自分でこれはいい、これは悪いと決めることが苦手である。それは絶対の神、一神教のキリスト教民族との違いなのかもしれない。すべてのものには、長所もあれば、短所もある。他人を思いやる心もある。
そのために、大勢が正しいとすることが正しいとされる傾向が生まれる。誰がなんと言おうと、これがすぐれていると主張することは周囲から嫌われる。太平洋戦争へと突入する状況ができたのも同じ理由である。女性たちのブランド信仰も、自分ですばらしいものという商品の評価を避けるからだ。皆が高く評価するもの、流行になっているものがすぐれたものになる。その根は深い。

 海外調査団の団長を決めることでいく度か経験したことがある。最も年齢の高い人が団長に選ばれた(ほとんどが大企業の人たちだったが)。挨拶で、「私はそのような任をまっとうする力はないと固辞したが、いちばん年をとっているからだと言われ、断わる理由がなくなった。力はないが、皆さんの協力でなんとか責任を果たしたいのでよろしく」と語る。欧米人であれば、「団長に選ばれたことを光栄に思う。経験や能力は十分でないかもしれないが、全力を尽くして任務をまっとうしたい」と挨拶するであろう。

 いうなれば、年齢で選べば、誰からも文句が出ない。そうした年長者をトップに選んでも、実際のことは年と無関係に実力者が仕切る。リーダーは神輿の上に乗せられる飾り物であることがめずらしくない。

 
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