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個人主義と集団主義の狭間で戸惑う若者たち
集団主義の崩壊と個人主義の台頭は、本来であれば、漸次変化してしかるべきものである。年功序列制はそれに慣れ親しんだ世代が去り、完全な世代交代が起きないかぎりなくなりはしない。また価値観が変わり、個の意識が高まった若者といえども、日本人の形質である「集団性」は頑強に保たれていることである。学校において、先輩、後輩の序列は一般社会よりも厳しいものがある。技術やビジネスの変化は欧米の影響によって簡単に変化するが、習慣や行動パターンなど人に関するものは簡単には受け入れられない。欧米ではごく当たり前の人前での夫婦のキッスが、何十年経ってもわが国社会には根付かないのもその例であろう。
だが、バブル崩壊による長期不況期、企業は採用を手控えた上、多くのリストラを余儀なくされた。その結果、景気が回復した後には、中間管理職の不足という事態が起き、従来になく若手の管理職登用が進んだ。大勢の新人から年月をかけて次第に管理職を絞っていくというわが国の人事制度に変調をきたした。思いがけず若い年齢で管理職に昇進した若者たちは、喜びの反面経験不足から不安を高めることとなった。年功序列制の枠組みが根本から変わっていない組織で、通常より若い年齢で管理職を務めるということは、一般的には無理を伴う。
古い年功序列制の枠組みと個人主義の台頭、そして若者たち自身が持っている独立心と集団性の混在が三つ巴でからみ合っているというのが現状である。自立を求める一方で、とかく親や権威にすがる若者たちの姿は、甘えとして大人たちには映る。若者たちは自分の力を信じて若くして高い地位、高度の仕事にチャレンジしたいと願うのだが、年功序列の壁に跳ね返されてしまう。矛盾と抵抗に、若者たちはどうしてよいかわからず、たじろぎ、ある時には常識を逸した行動に出る。
現在は集団主義から個人主義への過渡期か
集団主義から個人主義への移行が、時代のトレンドと見ることはできる。しかし、欧米では、過去のあまりの個人主義的行動を反省する機運も出ている。日本的経営のメリットを研究した結果、チームワークの重要性を認識してきた。パフォーマンスからすれば、個人主義は絶対的にすぐれた方法であるとはいえない。私たち日本人は、遺伝的に集団的性質を持っているだけでなく、「日本的経営」と呼んで、集団性の良さを積極的に評価する一面もある。
今後は、集団性でもなく、個人主義でもない、あるいは両性を持った新しい組織形態や人間関係が生まれる可能性は高い。固定的な組織からグループへと移行し、個人と個人を流動的に結びつけて協業させるコラボレーションの台頭もその一例だともいえよう。
■平田周 氏プロフィール
三田教育研究所首席研究員
どうしたら若い人たちの知力、思考力、英語力を高めることができるかを研究しています。大企業、外資系企業、中小企業などでの勤務、ベンチャーの立ち上げ、大学で教鞭など、さまざまな体験をしてきました。元東京工科大学大学院バイオ・情報メディア研究科客員教授。専攻:国際情報論。
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