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特集1:心理カウンセラー岡本英二氏に聞く 企業が従業員の心のケアをトータルに支援する『EAP』プログラムとは 第4回
編集部 「ミニカウンセラー」は、どのように教育されるのですか。標準的な研修がありましたらお教えください。

岡本英二氏 はい。この場合の勉強というのは、考えるのではなく感じる能力が大切なので、感覚体験のワークなのです。体で覚えてくださいというもので、実践的に教えています。例えばブラインドワークです。目隠しをしてもう1人が連れて行くとか。これは目の悪い人の立場に立ってみましょうというものですね。さらに目隠しをされた方の全身の感覚が非常に鋭くなります。それは何かというと今を生きる瞬間なのですね。ほとんどの方が「考えてばかりいる人」ですね。過去か未来を。過去に囚われ、未来に憂う。大体先か後のことを考えているのですが。「どうしよう。クビになるのではないか」、「借金取りがいますぐくるかもしれない」とかいう未来に対する恐れです。ところが、目隠しをして歩くと、つまづくんじゃないかという状況が生じ全身の感覚が敏感になる、その瞬間、嫌なことを忘れるのですね。これは神経症を治したりする1つのゲシュタルト療法ですけれども。

編集部 なるほど。実践的ですね。しかも「今この瞬間」に自分を引き戻す効果がある。

岡本英二氏 ちなみに、今世界で行われているセラピーのほとんどはゲシュタルト療法が基本ですね。感覚を使うということで。イルカと泳いだり、絵画を描いたり、陶芸をしたりするのはゲシュタルト療法の応用となります。

編集部 ちなみに、セラピーというのは、治療に入った段階のことをいうのですか。

岡本英二氏 これは幅広い解釈があると思います。自然治癒も含めて、治療、癒しですよね。回復させることを目標とします。

編集部 ほかにユニークなものはありますか。

岡本英二氏 もちろん、ゲーム感覚で汗まみれになる様なものもあります。プログラムは企業の目的にあわせて、オーダーメイドでできるという特徴がありますね。組み合わせはわりと自由にできます。

編集部 体を使って体験してもらうのが主であって、座学ではないと。

岡本英二氏 基本的には気づきのための勉強ですから……。人によって気づきのレベルは違います。本人のレベルによって違いますからね。同じことをやっても上司と部下によって気づくレベルが違うのです。

編集部 最近は日本でも、カウンセリングを受ける人の偏見が薄れてきているようですが、それでもまだまだのようです。これはいったい何故でしょうか。また、アメリカのようなカウンセリングの考え方が広まるにはどうしたらよいでしょうか。

岡本英二氏 慣習の違いといいますか、恥を隠すのが日本ですよね。それによる弊害がでてきていると考えられます。

編集部 日本は恥ずかしいことを隠そうとします。恥の文化が日本の宗教かと思えるほどです。

岡本英二氏 そういう意味では残念ですね。日本においてプライベートのことは、個人の責任であるとずっとされてきています。だから会社は関知しないということがあるので、どうしてもカウンセリングは個人で受けなさいとなる。心の問題は、会社には責任がないという認識が強いし証明が難しい。これはとても問題です。数年前になりますが、飛び降り自殺した社員に対して、過労死の和解金として1億6800万円程度払った事例があります。それによって以後、労災認定とか増えてきてますね。こういう事例があると、カウンセラーを企業に入れておかないとヤバイなと考える。管理者責任や使用者責任を問われるのではないかと考えているのです。罰を受けないための制度として考えるのだけど、まだ予防としてのカウンセリングまでは考えていないところが、日本企業が遅れているところだと思います。

編集部 偏見はIT業界では薄れてきています。IT業界では大きなプロジェクトを実施することが多いのですが、いろいろメーカーが集まっていたり、いろいろなところから人材が調達されてきたりしていて、プロジェクトをやっています。すると、そこで必ず誰かがおかしくなると、「以前俺もそうだったと」言う人がいたりして、カウンセラーや精神科への受診をすすめることが多々あるようです。

岡本英二氏 そうですね。IT業界の場合、専門家に診てもらったほうがいいよといわれて受けに来る人が多いですね。一方、地方にいくとカウンセラーなどほとんどいず、カウンセリングの制度がないところが多い。地方では、企業に入りカウンセラーをしている人は非常に少ない。企業があまり必要性を感じていないのです。個人の責任にしてしまえばそれで終わりなのです。そうではなく、生産性を向上させるための予防制度として確立し、経費でなく投資という考え方が浸透することが重要なのです。社員が辞めたことによる解決は、ごまかしと問題の先送りであって何の解決にもなっていません。アメリカは従業員が辞めるよりも、面倒をみて、元気でちゃんと働いてもらった方が売り上げが上がるということを知っているのです。だから、再三経営者の方に伝えたいのです。「結果的に儲かりますよ」と(笑)。
つづく



■岡本 英二氏プロフィール
岡本 英二氏 昭和37生まれ。ビジネスカウンセリング協会(BCA)会長、そったく塾代表。歯科医院、不動産会社、保険会社、流通、開発、通信、コンサルタントなどさまざまな仕事を経てプロカウンセラーになる。幅広く豊富な経験を生かし、「カウンセリング」と「体験ワーク」を上手く取り入れた企業研修が好評。日本企業に合った従業員支援を提唱し、総合的な生産性の向上をサポートする。経営者や社員の心の病を治すだけでなく、予防医学の見地に立ったリスクマネジメント的な効果を狙った研修も注目を浴びている。とくにIT業界やセールス、接客、サービスや現場でのコミュニケーションを必要とする業種での人気が高い。同時にビジネスカウンセリング協会を通し、さまざまな癒しを企業に提供している。また、主婦などを中心とした女性向、個人向けセミナーも積極的に行っている。【研修実績】松山大学/高知大学/ダイキ株式会社/JPSA(日本パーソナルコンピューターソフトウェア協会)/株式会社クイック/ニスコム株式会社/東京応化工業株式会社/マイウェイ技研株式会社/日興コーディアル証券株式会社/久光製薬株式会社/テプコワーク&キャリアスクール/その他

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