システム統合に限らないのだが、ある企業にとって前例がないことを成功させるためには、それなりの新しい考え方が必要だ。つまり、過去のノウハウを捨てて、新しいものを作ることが必要になる。
もともと、企業には過去からノウハウとして積みあがっている仕事の進め方、価値判断基準がある。これは、その会社で過去に経験(成功・失敗)した内容を手順化したものであり、そこには、プロジェクトリスクを回避(失敗した場合、2度と失敗しないようにする行為)する工夫が随所に措置されているものである。
たとえば、A社というメーカがあったとしよう。A社のシステム部門は、社内向けのシステムばかりずっと構築し、利用者は社内の人、社外のベンダーSEを使ってシステム開発・保守をしてきたと仮定しよう。
A社のシステム部門は長年、このように仕事をしてきたため、仕事の手順、マニュアル、人の価値判断、知識、ノウハウが全て、社内システム構築を前提に出来上がっている。つまり、社内システムを効率よく、前例通りに構築できる人が優秀な人になる。
たとえ、たまに活発な性格で、「もっと外に向けて仕事をしよう。もっと他の手順、知識を身につけよう」と考え、主張しても、多くの場合は周囲(上司や上層部、管理者層)から疎まられ、主張を引っ込めるか、強行に主張しつづければ排他されるだけである。このように新しいことは吸収されず、現状維持か緩やかに組織力が落ちながら(通常、上は、自分以上の下を育てないという法則)何年も進んでいくのである。
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