eラーニングマガジンに関するお問合せ、ご質問等は下記までご連絡ください。
eラーニングマガジン編集部

elmag2@nextet.net

特集2:現場の事例で学ぶマネジメント連載ヒューマン・マネジメントのテクニック(6)

IT教育コンサルタント 芦屋 広太(プロフィール

 あなたはヒューマン・マネジメント能力に自信をもっているだろうか? マネジメントで最も難しい"人間の問題"、これにうまく対処しなくては仕事の成功はない。"人を動かすためには何が必要か"を理解し、適切に行動しなければならない。

 前回はエリア(3)のマネジメントについて説明した。自分の指揮命令下にない人材を動かすには、彼・彼女らの「ミッション」をよく理解し、自分のミッションとどう違うかを根気よく探ることが必要である。
 立場が違えば「ミッション」は違うのが当たり前。顧客担当者が「分かってくれない」「聞いてくれない」と嘆くのではなく、「なぜ分かってくれない」のかを分析する癖をつけよう。ほとんどの場合は、立場の違いによる「ミッションの違い」で説明できるはずである。
 もう1つ重要だと説明したのは「行動のインセンティブ」である。行動のインセンティブを理解することの重要性は、今まで説明してきたエリア(1) 〜エリア(3)の全てに共通している。人間にはモチベーションが必要だ。「何をしたら彼・彼女らは喜ぶのか」を常に把握し、うまく使うことこそが、ヒューマン・マネジメントの第一歩なのである。
 それでは、第6回目の今回は、マトリックスの最後のエリア(4)のマネジメントについて説明しよう。

 
●エリア(4)のマネジメント

 エリア(4)は自分の支配下になく、ミッションや行動のインセンティブが分かっていない人材のマネジメントである。実はこのエリアの人材のコントロールが一番難しい。指揮命令系統が異なる上に、行動のインセンティブを刺激するコントロールが効かないからだ。この部分のマネジメントにはかなりの工夫がいる。
 あなたがこのような状態でマネジメントをしなければならないときは注意してほしい。策がなければプロジェクトはうまくいかないことが多いため、マネジメント戦略をよく練ることが重要になる。では、どのように考えていけばよいかを説明していこう。

○エリア(4)人材に関するマネジメントは避けるのが鉄則

 本来、エリア(4)のマネジメントをすることは避けるべきだ。指揮命令権もなく、「ミッション」を理解していない上に、「行動のインセンティブ」も効かない人材を動かすの効率的ではない。
 あなたがまず考えなくてはならないのは「担当者の変更」要請である。エリア(3) の人材を見つけ、その人材と仕事をするようにしなければならない。アサインされた関係部門や顧客の担当者がエリア(4)の場合、言葉は悪いが、早々と見切りをつけ、エリア(3)の人材を探し、彼・彼女らの上司にうまく説明し、担当変更を了承させることが得策になる。この場合は、上司の「ミッション」「行動のインセンティブ」を使い、「この担当者ではプロジェクトを乗りきることができない」ことをやんわりと説明する。上司が納得しなければ、上司に失敗責任を理解させ、なんとしてでも変更させるのが基本だ。
 ここで遠慮してはならない。ここで躊躇してしまい、手を打たなければプロジェクトは結局失敗する。その場合、責任が追求されるのはマネージャであるのだから、心を鬼にして対応しなければならない。

○エリア(3)の人材がいない、またはどうしてもアサインできない場合

 しかし、場合によってはどうしても「人材がいない」「優秀人材がほかの仕事をしていてアサインできない」ということがある。この場合は仕方がないが別の対応が必要だ。具体的には、エリア(4)の人材をエリア(3)に持っていくしかない。この作業は基本的にエリア(2)⇒エリア(1)のときと同じである。以下、再掲になるがもう一度確認しておこう。

○ミッションを理解させる

 ここで使っている「ミッション」とは、こなすべきタスクが分かっているという意味ではない。ここでいう「ミッション」とは、「あれをやっておいて」「これをいつまでに終わらせておいて」というレベルの具体的な個別の命令のことを指すのではなく、「目標」のことである。
 例えば、顧客に商品を売り込む場合の提案書作成を部下に指示する場合、「最終的に売る」というのがミッションであり、「提案書を書く」というのがタスクである。「ミッション」を理解していない人間は指示した範囲以外のことをせず、「ミッション」をよく理解している人間は「商談がうまくいくためにどう書けばよいか」を一生懸命考えて書く。
 ミッションを理解している人間は、たとえ自分に経験やノウハウが不足していても、誰か経験のある人間を探してアドバイスを受けたり、上司に「ここはこのように書いたほうが訴求力がある」という提案をしたり、「商品の特徴を訴求したいのですが、ここの書き方を一緒に考えてほしい」という建設的な相談をする。一方、ミッションを理解していない人間は「ここはどう書けばよいか、具体的に文章を教えてほしい」という聞き方をする。両者の違いがお分かりであろうか。自分のミッションを理解していれば、その行動は終始一貫したものになる。だからミッションを理解させることが必要なのである。

○「行動のインセンティブ」を理解させる

 ここでのもう1つの論点として「行動のインセンティブをどう気づかせるか」という課題がある。自分が何をしたら満足するのか? これが分かっていない人間は結構多い。特に、小学校から大学まで受身で過ごしてしまった人間は、多くの場合「仕事とは指示されることをこなすこと」と思い込んでしまっていることが多い。こういった人間に「評価してやる」「情報をやる」「人脈形成を助けてやる」「好きな仕事をやらせる」というインセンティブは効かない。言われたことを就業時間中にやるだけで付加価値の低い仕事をするのである。

 これを指揮命令系統のない人材に行うことが必要となる。そのためには彼・彼女らのインフォーマルな上司になるしかない。人間は、ラインがあるから上司の命令を聞くわけではない。人間関係、信頼関係があるからこそ命令を聞くのである。筆者は今までに自分の部下ではない人材をずいぶん指導してきたが、彼・彼女らはある意味、本当のライン部下以上に筆者の命令をよく聞いてくれた。それができたのも、彼・彼女らを一生懸命助けたい、サポートしたいという筆者の気持ちが伝わったからであろう。このことは少し分かり難いかもしれないので具体的事例を紹介しよう。

 
back
 
Copyright©2005 Next Education Think.All Rights Reserved.
掲載の文章・画像の無断使用・無断転載を禁止します。
特集1:"仕事"の意識を変革する連載 会社を動かすコンサルタントの思考術(1)
   
特集2:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(6)
(2)
   
特集3:eラーニングコース紹介 個人情報漏洩に対するリスクヘッジも万全! NETスキルチェックRプレミアム「個人情報保護 意識度チェック」
   
特集4:〜成果の連鎖における人材パフォーマンスの向上を図る〜 人材パフォーマンスを支援するチェックポイント