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 中国やインドなどが国をあげてIT人材の育成に取り組み、高レベルの人材を多く世界中に送り出すようになってきている中、日本でも戦略的な人材育成やスキル開発を行うための客観的な指標を整備し、世界を視野に入れた高度IT人材の育成が急務となっています。 ITSS普及と推進に向け、民間の現場レベルでの活動も盛んになってきました。  経済産業省が平成14年12月に発表したITスキルスタンダード(ITSS)(※) は、各種IT関連サービスの提供に必要とされる能力を明確化・体系化し、ITプロフェッショナルの教育・訓練等に有用な共通枠組を提供する取り組みです。同省は平成15年7月、情報処理振興事業協会(IPA)内に、ITSS制度の運用や普及促進、補助金搬出先の選定を担う「ITSSセンター」を設立しました。「ITSSセンター」ではITSSをもとにエンジニアを育成する方法の叩き台となる「研修ロードマップ」の作成と普及も担い、経済産業省の定義する11の職種に対応する人材育成プランの提示も行っています。

 しかし国の普及活動だけでは、一般に根差し実際の効果が上がるまでに多数の困難があることも浮き彫りになってきました。ITSS関連のプロジェクトを実施する組織を一般公募して与えた補助金も、本来の用途からはずれた使われ方をして税金の無駄使いになっているという指摘もあります。

高橋氏
 そのような中、民間企業によるITSS普及と推進の草の根の取り組みも盛んになってきました。日本オラクルが中心となって10月に設立予定の「ITSSユーザ協議会(仮称)」は、シーエーシーやキヤノン販売など現在のところ10社が賛同を表明し、UFJ銀行もユーザー企業として参加が見込まれています。設立を推進する日本オラクル株式会社 営業統括ヴァイスプレジデントの高橋秀典氏に、実際の活動と現状の課題についてお話いただきました。

Q.
経済産業省でも以前から「ITSSセンター」を設立してITSS策定から推進までのさまざまな取り組みを行っていますが、その国が主体の「ITSSセンター」と「ITSSユーザ協議会」との役割の違いはあるのでしょうか?

A.
経済産業省は数年前よりITスキルスタンダードとITコーディネータの標準化から取り組み始めました。特にITSSは従来の情報処理試験の内容に基づくようなものではなく、現場志向の分かりやすい枠組みになっています。現在定めているITスキル標準ではITアーキテクトやアプリケーションスペシャリストなど専門分野ごとに分けた職種とそれぞれレベル1から7まで定義したスキル・フレームワークを提唱しています。

 しかし国の定義には立場上一般に知られた民間企業の資格や製品技術等の固有名詞がなく、現場で標準として使うにはさらに具体化していく必要があると思いました。また、ITSSセンターではレベル6や7の高レベルの人材が圧倒的に不足している背景もあり、そうした高度IT人材を多く育成するためのコミュニティを計画しています。我々協議会では個人が現在の自分の位置を確認し将来目標を明確にして具体的なキャリアアップをしていくための支援と、企業から見て自社エンジニアの弱み強みとあるべき姿へとのギャップ、またそれを埋めるための支援をしていきます。

 また標準化を定着させるためのスキル認定制度の発足も計画しています。
そうしてITSSのベストプラクティスを実現し、全体の底上げをしてゆくことを目指しています。

Q.
日本オラクル社内でも社員に対してITSSを取り入れたスキルの体系化を既に行っているとのことですが、その内容と効果というのはいかがでしょうか?

A.
6月から順次、社員がITSSのレベルのどこに該当するかを振り分け、次に狙うレベルを明確にした目標管理を個々人にさせています。そのためのレベル管理ツールも開発し、既に社内で運用しています。しかしこれを行った結果、全体的に思ったよりも下のレベルの社員が多いことがわかりました。それは会社にとっても個人にとっても衝撃ではありましたが、そこから危機感が生まれてさらに上のレベルを目指すモチベーションに繋がっています。

Q.
ITSSユーザ協議会では、個人のレベル測定やスキル向上の施策としてどのようなシステムを考えているのでしょうか?
A.
まず活動の準備タスクフォースとして、ビジネスタイプ別にITSSレベルとスキルマップの仮説立案と検証を行い、それら情報を蓄積して活用するシステム、ESSS(Engineer Skill Standard System)に登録してゆきます。そして実証と研究により登録データやシステムを更新・拡張し、情報サービスや評価ツール開発に活用します。またそのデータをもとに教育ベンダーが提供するトレーニングをITSSベースでメニュー化・標準化していくことを考えています。また、スキル評価のためのアセッサー認定制度も考えており、将来的にはそれら情報をすべて開示し、ITSSをベースにしたスキル評価コンサルティングビジネスの立ち上げを支援し、引いては企業戦略に沿った人材育成計画のモニタリングや、人材育成を通じた会社・社会への貢献、個人への動機付けに直接繋がるようになることを考えています。

活動ロードマップ
活動ロードマップ
 

(※)経済産業省 ITスキル・スタンダード審議会

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