eラーニングマガジンに関するお問合せ、ご質問等は下記までご連絡ください。
eラーニングマガジン編集部

elmag2@nextet.net

特集2:平田周の「知的好奇心が人生を変える」第1回 なぜ好奇心が大事なのか
三田教育研究所首席研究員 平田 周(プロフィール
 これから10回にわたり、知的好奇心の問題を中心に、おしゃべりしたいと思います。知的好奇心を持ちつづけること、これこそがビジネスにおいて成功する最も実用的で効果のある方法だと信じています。

 情報過多が好奇心を殺す
 好奇心は、情報が不足している時に活性化します。テーブルにありあまるほどのご馳走が並んでいれば、さほど強い食欲は感じないものです。食欲が強まるのは空腹の時です。いま情報は洪水といってもよいくらいに満ち溢れています。会社での会議、メール、ブログ、ウエブ、インターネット検索など、もう情報は十分すぎるくらいに身の回りを埋め尽くしています。
 いま私たちが直面しているのは、情報が不足していることではなく、情報が多すぎることの問題です。これを解決するために、Googleなどの検索が重宝されているわけです。
 無人島に漂着したとしましょう。何も情報がなく、日本はどうなっているのだろうと想像します。そこにある日、新聞紙が流れつきます。おそらく食い入るように読むはずです。情報感度は、情報が不足している時にこそ強まるのです。

 書店や図書館の書棚に並んでいる本を見ながら、読みたい本を探すという方法なら、事前に読みたいものを決めておく必要はありません。しかし、検索によって探すとなると、欲しいものが定まっていないとできません。新聞は一覧性がありますが、インターネットでニュースを探すには、カテゴリーやキーワードを入力せねばならないわけです。
 したがって、ネット人間は、自分の関心のあること、興味のあることだけについて情報あるいは知識を習得していくことになります。どれだけ多くの情報があっても、検索技術やデータマイニングの手法を使えば、必要な情報を集めることができます。情報洪水の時代に対処しようと、検索技術など、要るものだけを膨大な情報から選び出す技術の開発に力が向けられます。

 しかし、それでは情報や知識が偏ってしまいます。食事でいえば、好きなものだけを食べることになり、栄養バランスを崩すことにもなりかねません。検索技術が便利に使えるようになって、情報の偏食、情報失調症が増えているのです。情報の偏りは、知識にも及んでいきます。
 最近、教養とか、リベラル・アーツの必要性が強調されるようになったのはそういう背景があるのです。

 情報を選択するために必要な好奇心
 膨大な情報の中から必要なものを集めるための手法として、いまは情報検索やデータマイニングなどの技術が開発されています。これらには、テーマであるとか、キーワードなどの入力が必要です。大量の情報を漠然と眺めていては、必要な情報は出てこないのです。そのキーワードですが、あらかじめ知識がなければ、キーワードを思いつかないでしょう。
 ところがそのような知識を広く持つということは、相当の勉強家でなければできないことです。広い知識とは、しょせん浅いものになってしまいがちです。広い範囲にわたって深い知識を身につけるのは容易ではありません。

 そこで大事になってくるのが「好奇心」なのです。広辞苑をひくと、「好奇心とは未知の事柄についての興味」となっています。未知であるということは、まだ知識がないわけです。
 簡単にいえば、好奇心とは「なぜだろう」という疑問です。もの心がついて、あらゆるものが不思議に思える年ごろの子どもは、盛んに「どうして」「なぜなの」と親に尋ねる時期があります。それと同様に、ビジネスにかぎらず、人生にはさままざな未知があります。しかし、知らないこと、わからないことに遭遇しても、なぜだろうと思う人と思わない人がいます。また、関心をひくものと、引かないものもあります。

 この好奇心が、情報を集める上できわめて大事なのです。なぜだろうと思えば、それに必要な情報は自然に集まってくるものです。解答は、すぐには必要ありません。好奇心、あるいは問題意識さえあれば、いつの間にか分かってきます。
 たとえば、町を歩いていて、シャッターが閉まり、「店じまいしました。長い間ごひいき有難うございました」という貼り紙が出ているの見て、何も思わず通り過ぎてしまう人と、どうして閉店したのだろうと考える人がいるでしょう。どうして店をやめたのだろうと思う人は、すぐにその場で、近所の人にどうして店を閉めたのですかと尋ねることもできますが、その時は解答が得られなくてもそのままにしておくという手があります。頭のどこかにそのことが記憶されていれば、新聞のある記事から、なるほど呉服屋さんはもう成り立たなくなったのだということを知り、あの店もきっと同じような事情だったのだろうと想像することができます。

 
next
 
Copyright©2009 Next Education Think.All Rights Reserved.
掲載の文章・画像の無断使用・無断転載を禁止します。
特集1:コンサルタント清水千博のスキル標準活用の成熟度モデルへ ITSS/UISS/ETSS/新情報試験制度を斬る! 第6回
   
特集2:平田周の「知的好奇心が人生を変える」 なぜ好奇心が大事なのか
(2)
   
特集3:心理学博士 奥村幸治の“「知る」「分かる」「変わる」科学“ 第10回 成長し続ける意義 〜 脳の成功回路の形成 〜
   
特集4:顧客志向の次世代マーケティング ”顧客見える化”の視点から ][ 顧客ロイヤルティとサービス価値の ”見える化”