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特集2:第一回 心理学博士奥村幸治の「知る」「分かる」「変わる」科学
パーソネル・ディシジョンズ・インターナショナル・ジャパン株式会社(PDI)コンサルタント
奥村幸治(プロフィール
   旅のはじまり
 普段の生活の中で実に多くのことに“我を忘れるくらい”忙殺され、いつのまにか一月経ち、また一月経過するという生活を送っているのは私だけではないと思います。

 競争社会の中にあって、ビジネスの変化の速度は加速度が加わり、もう誰にも止めることができないくらいのスピードで走っています。我々は、そのような常時高速スピンのかかったビジネス環境下、日々業務をこなしているわけですが、「私たち」そのものの変化についてじっくりと考えたことはあるでしょうか。周りの変化は目につきやすいものですが、自分の状態については確認しにくいものです。

 今、自分はどのような状態にあるのか。“良い”状態なのか。それとも、“悪い”状態なのか。“悪い”状態であれば、何がどう良くないのか。“良い”状態として、将来どのようにすればこの状態を保ち続けることができるのか。自分に変化が求められるのであろうか。将来自分はどのようになりたいのか。どのような状況になっていたいのか。そのためには、どのように変わらないといけないのか。

 このような、素朴な疑問が頭の中をよぎります。

 この連載では、変化の中での私たちの状態について科学したいと考えています。具体的には、個々の変化に必要と思われる 3 つのステージ、すなわち、自分について「知る」「分かる」「変わる」について順番に考察していきます。

 最初の段階「知る」について考察する前に、私はこれまで自分の立ち位置をどのように理解してきたのか、譬えも使いながら振り返りたいと思います。

 以前、『嵐の中でも平安でありますように』と励まされた経験があります。これは、災難、苦境の中にあっても、心安らかに過ごせますようにということですが、『周りが嵐のような状態で、いかに平静を保つことができるのだろう。』と考えました。不慮の事故、災害、次から次へと起こる災難に見舞われるとつい負のスパイラルを描いて、悪い方に考えが向いてしまい、ついには気分も滅入ってしまいます。誰でも、このような状況に置かれると、マイナスの影響を受けやすいのですが、この状態が“永続”するのか。それとも“短期間”で終わるのか。について考えたときに、“一生”続くわけではないと考えるだけで、気持ちが落ち着くことがあります。このように最悪と思われる状況の中にあっても状況を冷静に見れる視点を持つか持たないかで、心の状態は随分と異なると思います。

 もう1つの例として、聖書にこのようなくだりがあります。英語の方がピンとくるため英文を引用します。“ Ever learning, and never able to come to the knowledge of the truth ” (2 Timothy 3:7) 内容としては、「どれだけ学んでも真理にたどり着かない人がいる」別の言葉で表現すればどれだけ時間と労力を割いて学ぼうとしても、“知恵”が付かない人がいるということだと思います。、

 私は、これらの例から、重要なことを理解できるような気がします。ひとつは、自分は、周りの環境から独立した存在で、周りがどのような状況にあっても、その影響を受けるかどうかは自分が決めることができるという点。そういう意味で、“自分”というものを、あらゆることを自由に選択する意思を持つ生き物としての存在、すなわち、“ Agent ”としての位置づけを考えます。

 もう1つは、人はいつの時点からか、物事が分かるようになるということです。“分かる”前後では自分の世界は異なります。いつから分かるようになるのか。分かる仕組みは興味深いものがあります。さらには、分からない(知恵がつかない)人も現実存在するわけで、理由はどこにあるのか、探ってみたいところです。

 「知る」「分かる」「変わる」の旅をしばらくお供してくださる読者の皆さんに感謝いたします。それでは、旅のはじまりはじまり。


■奥村幸治 氏プロフィール
奥村幸治氏 パーソネル・ディシジョンズ・インターナショナル・ジャパン株式会社(PDI)コンサルタント 人材開発に関わるコンサルタント、アセスメント、トレーニング、コーチングに携わる。ブリガムヤング大学カウンセリング心理学博士課程終了。心理学博士。NPO国際ボンディング協会理事。さめじまボンディングクリニックカウンセラー

 
 

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