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デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部 教授 匠英一(
プロフィール
)
●顧客への対応行動や営業行動の動機を作る「メンタルモデル」とは何か?
■現場での従業員の持つ顧客の「メンタルモデル」を知ること!
みなさんの会社では、「顧客」についてどんなふうに語り合っていますか?
「お客様は神様」というコトバもよく聞かれますが、こうした表現には「顧客=絶対者(神)」という比喩(メタファー)が使われ、奉仕的な行動が従業員に期待されることになります。
今回は従業員同士で語られる「顧客」についての表現やコミュニケーションの仕方から、現場での顧客対応行動を支配する「メンタルモデル」を検討してみましょう。
■ディズニーマジックの顧客対応の秘密とは?
たとえば、「お客様第一」と言いながらも、「客を“ゲット”した」というときには、人としての顧客というよりも<獲物>とみなしている感覚ですね。ところが、ディズニーランドのように<ゲスト>と言うときにはどうでしょうか?
この場合は、もてなす側(従業員)が劇場の客を意識する<アクター>の役を期待されていることになります。演劇のメタファー(比喩)を使うことで、役者のように客を楽しませることを、ディズニーの会社側が従業員に方向づけているわけですね。この何気ない顧客表現の仕方の違いにこそ、ディズニーマジックといわれる顧客対応の秘密があるといえるのです。
ここでのポイントは、演劇のメタファーとして「顧客=ゲスト」という言語表現が従業員の認識の枠組み(メンタルモデル)となっていることです。
■「顧客=獲物」というメンタルモデルの意味
「顧客を囲い込め」「顧客をゲット」「優良客にねらいを定める」「客を取り逃がすな」などは、一般の会社で日常的に語られている顧客についての表現ですね。その表現の背後にある「顧客=獲物」というメンタルモデルが、従業員の顧客対応の「動機」を構成していることにもなるわけです。
「いや、そんなことはない!」という反論も当然です。「私は顧客中心の考えを大事にしているからそんな顧客を『獲物』とみなしたりしてないよ!」こんな声も聞こえてきそうです。ですが、私がここで述べているのは、日常の表現の仕方(コトバ)が、われわれの日常行動を制約し、無意識の「動機」を作っているという点です。そこには、21世紀の認知科学が探求してきた言語と思考と動機の深い関係(J・レイコフ)が在るといえるでしょう。
■顧客についてのメンタルモデルの分類からわかること
もちろん、表面的に別の表現に変えれば、従業員の意識も変わるというようなものではありません。むしろそう簡単には変えることができないのが、メンタルモデルの特徴だからです。実践の動機や意識を変えていくためには、自らの現場でどんなメタファーが使われているかを知ることが出発点です。
顧客についてのメンタルモデルは、<顧客=神>のほかにも例えば次のようなタイプがあります。ぜひ参考にしてください。
(1)<顧客=恋人> ⇒(恋人メタファー):
高級ホテル(リッツカールトンなど)で従業員がおもてなしする高級サービスのケース。
(2)<顧客=パートナー>⇒(友人メタファー):
客の声を商品開発部門で積極的に活かしていく松下電器のVOC(Voice of Customer)活動など。
(3)<顧客=敵> ⇒(戦争メタファー):
一般的な小売や営業が現場で、「年末商戦で客を囲い込め」といった押し込み販売などが常態化しやすい。
(4)<顧客=機械> ⇒(機械メタファー):
修理・サポート関連の事業で使う「機械を直すより顧客を直せ」といったフレーズに表われているもの。
■匠 英一(Eiichi Takumi)プロフィール
デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部:教授
和歌山市生まれ。東京大学大学院教育学研究科を経て東京大学医学部研究生修了。
90年より(株)認知科学研究所を創立。95年より中堅IT企業に入社し、インターネット活用の企画営業や顧客管理(CRM)のコンサルに従事。これまで11の異業種団体や資格団体を創設。公的な役職として、中央職業能力開発協会OA検定中央委員、CRM協議会理事・事務局長、早稲田大学客員研究員など歴任。
現在は上記大学の教授職を兼務しながら、(株)人財ラボ(上席研究員)と(株)ミリオネット(非常勤取締役)などで顧客サービス発想法、eラーニング、CRMシステムのコンサル業務に従事。
著書には、「顧客見える化」、「心理マーケティング」、「CRM入門」訳、「カスタマーマーケティングメソッド」訳、「意識のしくみを科学する」、「イラストでわかる心理学入門」等多数あり。
E-mail:
takuei@netlaputa.ne.jp
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