人事システムを担当する組織とそのシステムの改善を行っていた私は、ある日別のシステムに急遽担当が変わることになった。上司から告げられた新しい仕事は「システム統合」。同じ業界の業務システムを7社分片寄せするものであった。残すのは私が勤務していた企業のシステムであり、他社はこのシステムにデータを移行するという案件である。
基本的に、システム統合方法のうち「片寄せ」は最もリスクが少ないといわれることが多い。しかし、7社の片寄せは関連する利害関係者が多すぎる。通常、システム統合は、2社間であっても感情的なしこりや、力関係で本来あるべきシステム計画が歪む。
それに加え、今回は7社も関係するのである。私はシステム統合をするのは初めての経験であり、当時は、この大変さを実感できずにいた。せいぜい、事例として話題になるので、スキルアップには丁度よいくらいにしか考えていなかったと思う。それくらい楽観的に考えていたことをよく覚えている。
結果的に、このシステム統合は2年後に成功裏にサービスを開始し、日経コンピュータ誌でも「成功事例」として記事化されたが、その記事では書かれることのない暗い部分もあった。
7システムを片寄せするということは、6つのシステムの消滅と1つのシステムへの集中を意味する。6つのシステムを保守してきたエンジニア達は職を失い、残った1つのシステムを担当するエンジニアの仕事は相対的に多くなる。
統合を進める中で、職を失うエンジニア達の焦りは感情論となり、残す会社のシステムエンジニア達にぶつけられ、それを受ける残るシステムのエンジニアの怒りも増大する。
システム統合プロジェクトのマネジメントは、このような感情的に歪んだ状態を前提にコントロールしなくてはならない。そのマネジメントは、社内で閉じるシステム案件とは根本的に違うのである。
では、このシステム統合を私がどうヒューマン・マネジメント理論を使って運営していったのかを説明していくことにする。
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