eラーニングマガジンに関するお問合せ、ご質問等は下記までご連絡ください。
eラーニングマガジン編集部

elmag2@nextet.net

特集3:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(11)

IT教育コンサルタント 芦屋 広太(プロフィール

 あなたはヒューマン・マネジメント能力に自信をもっているだろうか? マネジメントで最も難しい"人間の問題"、これにうまく対処しなくては仕事の成功はない。"人を動かすためには何が必要か"を理解し、適切に行動しなければならない。
 前回は「行動のインセンティブ(=行動の報酬=行動動機)」に関する筆者の自論とそれを使った具体例について説明した。まったくやる気を失った組織とその構成メンバーが上司への反発心(見返したいと強く思う感情)を「行動のインセンティブ」にして、それが素晴らしい行動につながっていったことが理解できたと思う。
 ここまでで、筆者のモデル化している「ヒューマン・マネジメント」の基礎理論は、ほぼ説明を完了した。この理論は、現場でマネジメントを行ってきた筆者の実学である。また、ここで紹介している事例は全て事実であり、ある企業で実際に起こったことである。これらの事実を重ねた上で、さまざまな諸学理論と融合させて構築(モデリング)したのが、筆者の指導する「ヒューマン・スキル」であり、その一部である「ヒューマン・マネジメント」である。
 余談であるが、今回の事例で使った「組織・システム改善」を担当している当時、私は、「ヒューマン・マネジメント」について、詳細に理論化していたわけではなく、あくまでも「組織・システム改善」という仕事を成功させるために「人間の行動をどうコントロールするか」としてマネジメントした。ここで試したこと、その結果起こった内容を当時私は詳細に記録し、別の機会に適用しようとしていた。
 そして、それを使う機会は比較的すぐに訪れることになった。
 
 ●事例2 システム統合編


 人事システムを担当する組織とそのシステムの改善を行っていた私は、ある日別のシステムに急遽担当が変わることになった。上司から告げられた新しい仕事は「システム統合」。同じ業界の業務システムを7社分片寄せするものであった。残すのは私が勤務していた企業のシステムであり、他社はこのシステムにデータを移行するという案件である。
 基本的に、システム統合方法のうち「片寄せ」は最もリスクが少ないといわれることが多い。しかし、7社の片寄せは関連する利害関係者が多すぎる。通常、システム統合は、2社間であっても感情的なしこりや、力関係で本来あるべきシステム計画が歪む。
 それに加え、今回は7社も関係するのである。私はシステム統合をするのは初めての経験であり、当時は、この大変さを実感できずにいた。せいぜい、事例として話題になるので、スキルアップには丁度よいくらいにしか考えていなかったと思う。それくらい楽観的に考えていたことをよく覚えている。
 結果的に、このシステム統合は2年後に成功裏にサービスを開始し、日経コンピュータ誌でも「成功事例」として記事化されたが、その記事では書かれることのない暗い部分もあった。
 7システムを片寄せするということは、6つのシステムの消滅と1つのシステムへの集中を意味する。6つのシステムを保守してきたエンジニア達は職を失い、残った1つのシステムを担当するエンジニアの仕事は相対的に多くなる。
 統合を進める中で、職を失うエンジニア達の焦りは感情論となり、残す会社のシステムエンジニア達にぶつけられ、それを受ける残るシステムのエンジニアの怒りも増大する。
 システム統合プロジェクトのマネジメントは、このような感情的に歪んだ状態を前提にコントロールしなくてはならない。そのマネジメントは、社内で閉じるシステム案件とは根本的に違うのである。
 では、このシステム統合を私がどうヒューマン・マネジメント理論を使って運営していったのかを説明していくことにする。

 
 
next
 
Copyright©2005 Next Education Think.All Rights Reserved.
掲載の文章・画像の無断使用・無断転載を禁止します。
特集1:あなたが変える!”仕事”の意識を変革する連載 会社を動かすコンサルタント思考術(6)
   
特集2:eラーニングコース紹介 本格的なコーチングをeラーニングで学ぶ! コーチ・トゥエンティワン「コーチング・マネジメント」
   
特集3:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(11)
(2)
   
特集4:新卒採用で成功する秘訣 企業の"魅力編集人"株式会社ワーク・長尾氏に聞く