では次に、「仕事・製品の具現化レベル」について考えてみましょう。「具現化レベル」とは具体的には、「提供価値」と「提供体制」の要素に分解して考えていきます。思考のポイントは、「提供価値の最大化」と「提供体制の最小安定化」を図る施策の具現化にあります。ところで、「提供価値」とは何を意味するのでしょうか? 提供価値は、上司や顧客に提供される仕事価値・製品価値を示しています。つまり、彼らにとっての利用メリットです。この「提供価値」は、さらに「品質」と「価格」に分解できます。価値レベルは両者のバランスによって決まります。つまり、「いい物をより安く」であれば、提供価値は高いと言えます。さらに「品質」を下位レベルに分解してみましょう。すると、「技術・デザインレベル」と「提供スピード」に分けて考えられそうです。つまり、仕事や製品の技術・デザインレベルを向上させ、提供スピードをアップさせることで「品質」を高め、製品の場合は、多くの人々が購買可能になるよう「価格」を抑えることで付加価値が高まり、「提供価値」を飛躍的に高めることが可能になります。
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一方、「提供体制」とはどのような体制を意味しているのでしょうか? 一言でいうと、「提供価値を上司や顧客に安価で確実に提供し続けるための体制」のことです。「提供体制」は、さらに下位レベルで「費用」と「持続安定性」に分解して考えられます。「費用」とは体制構築・維持のための経費のことで、付加価値を高めるためには、この経費をできるだけ低減する必要があります。例えば、あなた自身の仕事の付加価値を「提供価値」を変化させずに高めるには、あなた自身の費用つまり、給与をできるだけ低く押さえることがポイントとなります。つまり、費用低減の方向で思考していきます。また「持続安定性」とは、低減させた費用で提供体制を持続的に安定させることを意味しています。提供体制が不安定だと上司や顧客も信頼して任せられませんよね。具現化する際の要のポイントです。
ここまでをもう一度まとめてみましょう。高付加価値な仕事や製品を創造するための思考ポイントは、「高い提供価値を持つ仕事・製品を、できるだけ安く、持続的に安定的に作り出せる体制の構築」であると言えます。最後にこの思考ポイントを具現化する際の有効な思考パターンをいくつかご紹介したいと思います。
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上記のようなパターンで考えると、価値の向上・体制の効率化を図る施策を効果的に企画できるようになります。以上、今回は「上司や顧客を感動させる思考のコツ」をより具体化して説明しました。下記に実際の思考の流れをまとめてみましたので、再度整理してしっかり理解しましょう。
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【思考の流れ】
(1)情報収集 |
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上司・顧客の本質的潜在ニーズの読み取り |
(2)整理・分析 |
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具現化を見据えた潜在ニーズの本質的掘下げと重要度の見極め |
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対象範囲の拡大と重要度によるニーズの絞込み |
(3)統合・解決策の導出 |
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具現化レベルの高い仕事・製品の創造 |
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提供価値の向上と提供体制の安定化・効率化 |
(4)プレゼンテーション |
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具現化推進 |
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感動の創出 |
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■小泉 雅史(Masafumi Koizumi)氏プロフィール |
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カリフォルニア大学アーバイン校 経営大学院卒業(MBA)
ブランドハンドバッグメーカーにおける商品開発・営業を経て、日本IBMに入社。ビジネスイノベーションサービス(現 IBM ビジネスコンサルティング サービス)戦略グループに在籍し、大手企業を中心としたさまざまな戦略・業務・システム関連のコンサルティングに従事。
その後、大手化粧品メーカー経営戦略室にて全社成長戦略の策定等を手がけ、
現在は、ベンチャー企業の取締役及び経営コンサルタントとして活躍中。 | |
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