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コミュニケーションリンク・マネジメントのススメ(1)
●インシデントがもたらす悪影響

  このケースでPMはどうすべきだったか。最初の会議で「上手く逃げるための会話(応酬話法)をする」というのが正解だ。開発側から考えれば、要件定義後の仕様変更などする必要がない。本当に必要なら別コストが必要なこと、時期を見直すことが伴うことを説明し、それでも仕様変更する気持ちがあるかを確認すべきである。

 大抵の場合、契約の変更、追加コスト、スケジュール見直しと言った時点で顧客側は諦めてしまう。顧客側も社内で合意したことを言っているわけではなく、役職者の思いつきを部下がそのまま言っているに過ぎないことが多いからだ。

 実際、このケースの顧客課長は上司の言うことを伝えているに過ぎなかった。そこで、論理的な理由をもって応酬できれば(部長に説明できるから)納得できたはずだ。

イメージ画像
  このように相手の立場・思考を踏まえた応酬話法を使えることがPMの基本的要件だ。しかし咄嗟に言えない、話法が頭に浮かばないのが現実である。この結果、このPMは顧客を怒らせた上、開発側で責任をもって事情説明する羽目に陥っている。これに費やすコストはPMが正しく対処できていれば発生しなかったコストである。よく考えてみてほしい。本来、要件定義後の仕様変更を言い出した顧客側が悪いのに、PMのコミニュケーションがまずかったために、「システム開発側が悪い」という事実が顧客側に残ってしまう。これは、今後の開発作業に悪影響を及ぼすことになる。

●どうコントロールすればよいか

 事例のようなPMにならないためには開発側全体で組織的な取り組みを行うことが不可欠である。取り組みやすいのは、応酬話法の標準化、実践的トレーニング(ロールプレイング)などであろう。
 また、最近では顧客と開発側担当者の電話通話記録を簡易に取得・管理できる音声ソフトもある。このようなソフトを使い会話をチェックすることも有用であろうし、これらの会話記録を守秘義務契約を締結した上でプロのコンサルタントに診断+指導してもらうことも効果的と思う。そこで次回は、これらも含めた具体的なコントロールの方法を紹介する。


 
■芦屋広太(Asiya Kouta)氏プロフィール
芦屋広太氏

OFFICE ARON PLANNING代表。IT教育コンサルタント。SE、PM、システムアナリストとしてシステム開発を経験。優秀IT人材の思考・行動プロセスを心理学から説明した「ヒューマンスキル教育」をモデル化。日経コンピュータや書籍への発表、学生・社会人向けの講座・研修に活用している。著書に「SEのためのヒューマンスキル入門」(日経BP社)、「Dr芦屋のSE診断クリニック(翔泳社)」など。

サイト : http://www.a-ron.net
連絡先 : clinic@a-ron.net

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