ITSSでは、ITサービス・プロフェッショナルを11の職種に分類し、各職種ごとに全部で35の専門分野を設けて指標としています。また、それぞれの職種と専門分野に対応し、個人の能力や実績に基づいて7段階のレベルを定義しています。レベル1が「エントリーレベル」、レベル2、3が「ミドルレベル」、レベル4、5が「ハイレベル」、6、7が「スーパーハイレベル」と呼ばれます。また、レベル4〜7は「高度IT人材」といわれます。
最新バージョンのITSS V3 2008では、共通キャリア・スキルフレームワークとITスキル標準の職種との対応を行いました。また、客観的な人材評価メカニズムの構築を可能にするため、ITスキル標準のレベル4までの評価手段として、情報処理技術者試験の位置づけを明確にしました。さらに、研修ロードマップを改訂し、ITSSV3において、レベル1及びレベル2の職種の定義を一本化したことに対応しました。
職種の説明一覧
ITSSで定義している各職種の説明は下記に示されている通りです。各職種が社会的なプロフェッショナルとして確立していくことを狙う観点から、当該職種に求められる成果と品質について定義しています。
マーケティング 顧客ニーズに対応するために、企業、事業、製品及びサービスの市場の動向を予測かつ分析し、事業戦略、販売戦略、実行計画、資金計画及び販売チャネル戦略等ビジネス戦略の企画及び立案を実施する。市場分析等をつうじて立案したビジネス戦略の投資効果、新規性、顧客満足度に責任を持つ。
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セールス 顧客における経営方針を確認し、その実現のための課題解決策の提案、ビジネスプロセス改善支援及びソリューション、製品、サービスの提案を実施し成約する。 顧客との良好なリレーションを確立し顧客満足度を高める。
コンサルタント 知的資産、コンサルティングメソドロジを活用し、顧客の経営戦略やビジネス戦略及びIT戦略策定へのカウンセリング、提言、助言の実施を通じて、顧客のビジネス戦略やビジョンの実現、課題解決に貢献し、IT投資の経営判断を支援する。 提言がもたらす価値や効果、顧客満足度、実現可能性等に責任を持つ
ITアーキテクト ビジネス及びIT上の課題を分析し、ソリューションを構成する情報システム化要件として再構成する。ハードウェア、ソフトウェア関連技術(アプリケーション関連技術、メソドロジ)を活用し、顧客のビジネス戦略を実現するために情報システム全体の品質(整合性、一貫性等)を保ったITアーキテクチャを設計する。設計したアーキテクチャが課題に対するソリューションを構成することを確認するとともに、後続の開発、導入が可能であることを確認する。また、ソリューションを構成するために情報システムが満たすべき基準を明らかにする。さらに実現性に対する技術リスクについて事前に影響を評価する。
プロジェクトマネジメント プロジェクトマネジメント関連技術、ビジネスマネジメント技術を活用し、プロジェクトの提案、立上げ、計画、実行、監視コントロール、終結を実施し、計画された納入物、サービスと、その要求品質、コスト、納期に責任を持つ。
ITスペシャリスト ハードウェア、ソフトウェア関連の専門技術を活 し、顧客の環境に最適なシステム基盤の設計、構築、導入を実施する。 構築したシステム基盤の非機能要件(性能、回復性、可用性など)に責任を持つ。
アプリケーションスペシャリスト 業種固有業務や汎用業務において、アプリケーション開発やパッケージ導入に関する専門技術を活用し、業務上の課題解決に係わるアプリケー ションの設計、開発、構築、導入、テスト及び保守を実施する。構築したアプリケーションの品質(機能性、回復性、利便性等)に責任を持つ。
ソフトウェアデベロップメント ソフトウェアエンジニアリング技術を活用し、マーケティング戦略に基づく、市場に受け入れられるソフトウェア製品の企画、仕様決定、設計、 開発を実施する。また上位レベルにおいては、ソフトウェア製品に関連したビジネス戦略の立案やコンサルテーションを実施する。開発したソ フトウェア製品の機能性、信頼性等に責任を持つ。
カスタマーサービス ハードウェア、ソフトウェア、施設に関連する専門技術を活用し、顧客の設備に合致したハードウェアの導入、ソフトウェアの導入、カスタマ イズ、保守および修理を実施するとともに遠隔保守を実施する。さらにIT技術を利用するための施設建設をサポートする。 導入したハードウェア、ソフトウェアの品質(使用性、保守容易性等)に責任を持つ。
ITサービスマネジメント システム運用関連技術を活用し、サービスレベルの設計を行い顧客と合意されたサービスレベルアグリーメント(SLA)に基づき、システム運 用リスク管理の側面からシステム全体の安定稼動に責任を持つ。システム全体の安定稼動を目指し、安全性、信頼性、効率性を追及する。また サービスレベルの維持、向上を図るためにシステム稼動情報の収集と分析を実施し、システム基盤管理も含めた運用管理を行う。
エデュケーション 担当分野の専門技術と研修に関連する専門技術を活用し、ユーザのスキル開発要件に合致した研修カリキュラムや研修コースのニーズの分析、 設計、開発、運営、評価を実施する。
共通(レベル1、2) 担当業務の技術領域に関する基本知識を活用し、上位者の指示の下、あるいは既存の作業標準やガイダンスに従い、要求された作業を実施する。 自らの担当作業に対する実施責任を持つ。
出典:『ITスキル標準V3 2008 2部:キャリア編_20081205』 独立行政法人 情報処理機構 より