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デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部 教授 匠英一(
プロフィール
)
■サービスの現場を表と裏の"舞台"と見なすと……
高級レストランで最近の流行は、コックさんが客の目の前で料理を盛るようなパフォーマンスです。これは顧客に対して"裏舞台"にいる人(コック)を「見える化」しているわけですが、こんなサービスが大変人気のようですね。そこで、サービスの現場を表と裏の"舞台"と見なす「劇場メタファー」を使って考えてみましょう。
まず、潜在ニーズを知ろうと調査してもわからないという話は初回でもしましたが、それはどこかに隠れて発見されるものではありません。実はサービスする側の働きかけの中で、見込み客が反応してニーズの形になるのです。
つまり、"表舞台"にそれにフィットしたサービスが登場して初めて、そのニーズが創造され客が気づくということです。
■「顧客見える化」の仕組み創りのポイントは
例えば、コックは客の前で料理を演出したり説明したりすることで客の喜ぶ顔が見えますね。自分の作った料理への評価情報を直接その場で受け取ることができるわけです。一方、客側もコックの顔が見えることで料理に"個性"を感じることができます。このようなサービス効果を作るには、生産や総務のようなバックの仕事である「裏舞台」を、顧客との接点となる「表舞台」へと拡げていくプロセスを見直すことがポイントとなります(図1参照)。
また、革鞄のブランドで知られるイビサ社では、裏舞台である工場に多数の顧客がツアーで訪れます。それによって、作り手の苦労話や、皮の品質を大事にした作業を理解してもらい、高い顧客ロイヤルティを生み出しています。
大型バイクで有名なハーレダビットソン社では、なんと企業の役員や開発メンバーまでが一緒になって大規模なツーリングイベントに顧客と一緒に参加するといいます。これは顧客との直接交流による行動レベルでの親愛関係を生み、ハーレー文化ともいうべき価値を創り出しているものです。
■企業の部門のカベを透明化すること=顧客認識のギャップを埋めること
上記のような事例は、企業と客側の人レベルでの交流のようなサービス効果に限らず、顧客データや現場のノウハウといったレベルでも同じ理由で重要となっています。
裏舞台のビジネスプロセスでは、効率化を軸にしたカイゼンが企業にとって勝ち組みとなる条件でした。ですが、それはモノとしての製品の品質を管理していれば良い、とみなすメーカ中心の誤った見方です。裏舞台での企業側の活動は、顧客接点の表舞台へと近づけていくこと。裏舞台と表舞台の関係をどのように透明化し、さらに顧客の価値を高める表舞台をどう拡大していくか。これが「顧客見える化」の仕組み創りの要だからです。
そして、こうした顧客見える化の取り組みは、企業の生産部と販売部、管理部と営業部といった表と裏の部門間のカベを取り除き、相互の顧客認識のギャップを埋めることになります(図2参照)。
意外にも、メーカなどでは、自分達の商品が客にどう評価されているかを生産の現場では知らなかったりします。ここでの生産現場を見える化する効果は、客と社員に対して双方向の効果を生み出し、企業側の社員もやる気をアップしていく効果もあることに留意したいところです。
■匠 英一(Eiichi Takumi)プロフィール
デジタルハリウッド大学/デジタルコミュニケーション学部:教授
和歌山市生まれ。東京大学大学院教育学研究科を経て東京大学医学部研究生修了。
90年より(株)認知科学研究所を創立。95年より中堅IT企業に入社し、インターネット活用の企画営業や顧客管理(CRM)のコンサルに従事。これまで11の異業種団体や資格団体を創設。公的な役職として、中央職業能力開発協会OA検定中央委員、CRM協議会理事・事務局長、早稲田大学客員研究員など歴任。
現在は上記大学の教授職を兼務しながら、(株)人財ラボ(上席研究員)と(株)ミリオネット(非常勤取締役)などで顧客サービス発想法、eラーニング、CRMシステムのコンサル業務に従事。
著書には、「顧客見える化」、「心理マーケティング」、「CRM入門」訳、「カスタマーマーケティングメソッド」訳、「意識のしくみを科学する」、「イラストでわかる心理学入門」等多数あり。
E-mail:
takuei@netlaputa.ne.jp
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