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特集4:現場の事例で学ぶマネジメント連載 ヒューマン・マネジメントのテクニック(7)
●事例


 ある事例を使って説明しよう。もう、8年近く前になるが、筆者がシステム改善の仕事をしていたときの話である。システム改善とは、何らかの理由で品質が悪化したシステムや開発生産性が低いシステム、業務遂行力が低い組織に赴き、半年〜1年くらいで改善するという仕事で、いわばシステムや組織を治療する医師みたいなものだ。
 筆者はこの仕事をずいぶん長くやっていたので特殊技能が備わった。ヒューマン・マネジメントに関するスキルを身につけたのも、この仕事を通してである。
 話を元に戻そう。A社のシステムと組織・人材を改善したときの話だ。そのシステムは人事システムで、セールスマンの評価と給与計算を行うものだった。一般的に、評価と給与というのは非常にデリケート。自分の評価と給与がシステムミスで間違っていたと考えてみれば分かると思うが、非常に品質が要求される分野のシステムである。A社のシステムは、評価と給与を頻繁にミスするシステムになっていた。
 こんなミスを会社が許すわけがない。A社のシステム部門は社内で相当厳しい立場に追い込まれていた。そこで、何とかしたいと思ったA社のシステム部長が、システム改善経験をもっていた筆者をアサインしたのである。
 筆者はすぐ診断に入った。するとヒューマン系でよくない状況であることが分かった。本来、システムの改善というと物理的なシステム仕様の詳細構造分析から入ると思われがちだが、筆者の場合は違う。まず、人間関係(ヒューマン・リレーション)を見る。システム改善で重要なのは、そこのシステムを担当しているメンバー(部下、上司を含めて)で改善分析を行い、対策を実行してもらうことだ。筆者一人で孤軍奮闘できるわけがないのである。したがって、ミッション遂行、モチベーションを阻害する「人間関係の悪化」は取り除いておかなくてはならない。これが筆者が最初に「人間関係」を厳しく分析する理由である。

 
●悪化していた上司と部下の関係


 筆者は一週間くらい何もしないでメンバーたちと一緒に行動した。具体的には会議の雰囲気、顧客との関係、レビューの品質、上司(管理者)の行動、部下との関わり方を観察した。すると、大きな問題があることが判明したのである。マネージャーの山本(仮名・40歳)と10人いるメンバーの人間関係が極端に悪い。昼間は山本の指示をよく聞いているように見えるが、夜にメンバーと宴席に行くと真実が分かる。
 山本は部下をまったく信頼していない。品質が悪化した責任をすべて部下に押し付けるくせに、部下が改善を施そうとすると「お前たちでは無理。俺の言うとおりにやれ」と言うらしい。山本の考えた対策ではうまくいかないと「対策はいいが、お前達のやり方が悪い」と言う。部下はまったく八方塞りだという。次第に泣き出す部下もおり、人間関係の悪化から、メンバーたちがメンタル面で非常に危険な状態であることが分かった。筆者は彼らに適切なメッセージを発し、第一段階として彼らの心のケアとモチベーション、ミッションコントロールを行うことが必要だった。
 最終的には、メンバー達は半年後には別人のようになり、彼らの保守する人事システムの品質は現在に至るまでピカイチである。
 では、筆者がどんなメッセージを使って彼らのコントロールをしたのかを次回から詳しく説明していくことにしたい。


■芦屋 広太(Asiya Kouta)氏プロフィール
芦屋広太氏 OFFICE ARON PLANNING代表。IT教育コンサルタント。SE、PM、システムアナリストとしてシステム開発を経験。優秀IT人材の思考・行動プロセスを心理学から説明した「ヒューマンスキル教育」をモデル化。日経コンピュータや書籍への発表、学生・社会人向けの講座・研修に活用している。著書に「SEのためのヒューマンスキル入門」(日経BP社)、「Dr芦屋のSE診断クリニック(翔泳社)」など。

サイト : http://www.a-ron.net/
連絡先 : clinic@a-ron.net

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