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特集1:米国のHRDトレンドと2005年の日本での課題 〜2004年度ASTD Industry Reportからの考察〜
■米国のHRD成功モデルと日本の人材開発における課題

 アワード受賞組織のデータから読むことのできる共通した傾向としては、以下のような指摘がありました。

1. かなりハイレベルな人材育成投資を行っている。
2. 学習機能の効率や効果を明確に提示するための測定が行われている。
3. 学習とビジネスニーズ(経営ニーズ)、そして従業員各個人のコンピテンシニーズとの整合性、調整がとられている。
4. 内部・外部を問わず幅広い学習機会を準備している。
5. 学習へのC−レベル(チーフ、取締役)の関与、サポートがある。
6. 学習とパフォーマンス向上・改善のためのソリューションの組み合わせを行っている。

 以上、2004年度ASTD State of the Industry Reportからのデータについて見てきました。これらのことから、ポスト成果主義などの言葉に揺れる日本の人材開発に携わる私達が学べること、および課題が浮かび上がってきます。

 
課題 − 学びたいこと

1. 人材開発におけるPDCAプロセス確立と測定技術の定着
 日本では、まだまだ測定自体の定着やデータの蓄積がなされている企業が少数ですが、組織パフォーマンスへのインパクトを明確にし、経営戦略の一環としての組織的な学習を進めるためには、研修の効果測定の基礎を定着させることが重要と考えられます。

2. 研修からの脱却:パフォーマンスサポート、パフォーマンス改善のアプローチ
 「研修」だけが人材パフォーマンスをサポートするための方策ではないことを理解するための学習や、人材開発担当者の専門性が求められるでしょう。組織としてのパフォーマンスを向上させるための人材開発部門としてトータルソリューションの方法を、Human Performance Improvementなどのアプローチに学ぶ必要があるのではないでしょうか。研修のデザインの整合性を設計するためのインストラクショナル デザインを基盤として、経営戦略と組織の各個人のパフォーマンスの整合性をデザインするためのアプローチへのシフトが必要と思われます。

3. テクノロジーの活用
 人材開発のe-ラーニングだけではなく、パフォーマンスサポートの側面からのテクノロジーの活用と運用の仕方をよりいっそう学び、組織へ浸透させていく「組織イノベーション」の核となる情報、機能の提供がよりいっそう求められると思われます。

 まさに2005年の日本での人材開発、育成のキーワードは、“Linking Learning and Performance”と言えるのではないでしょうか。

2004年12月20日
株式会社インストラクショナル デザイン 中原 孝子

※1. ASTD(American Society for Training and Development:全米人材開発機構)
http://www.astd.org/
1944年に設立されたHRDのプロによって構成される非営利団体。
米国ヴァージニア州アレクサンドリアに本部を置き、世界100カ国以上の国々で会員が各種大会や会議の開催、調査研究、出版などで活動しており、職場の学習とパフォーマンスに関する最新の情報を提供し続けている。

中原 孝子氏 プロフィール
中原 孝子氏 中原 孝子(なかはら こうこ)
国立岩手大学卒業後、米コーネル大学大学院にて、教育の経済効果、国際コミュニケーション学等を学ぶ。
その後、慶應義塾大学環境情報学部武藤研究室訪問研究員として、インターネットを利用したデータマインニングやe-ラーニングなどの研究に携わった。
職歴:米系製造販売会社、金融機関、IT企業にてトレーニングマネージャーとして活躍し、平成14年5月、株式会社インストラクショナルデザインを設立。
会員:ASTD会員、慶應義塾大学環境情報学部研究員

 

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