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特集1:米国のHRDトレンドと2005年の日本での課題 〜2004年度ASTD Industry Reportからの考察〜
株式会社インストラクショナル デザイン 代表取締役 中原 孝子
 2004年12月15日にASTD(※1)から、“ASTD 2004 State of the Industry Report”が発表されました。HRDやeラーニングでは最先端の米国での、職場におけるラーニングとパフォーマンス調査結果や最新トレンドが明らかになっています。

■ASTD Industry Report とは

 人材育成投資への格差がパフォーマンス格差にあらわれているとの認識が出始め、日本でも、人材育成の促進に対しての減税措置など、グローバルレベルとの人材育成投資の格差を埋めるための政策がようやく検討され始めているようです。経済産業省も減税措置などによる人材育成投資の経済効果は、実際の投資額の2〜3倍と見積もっています。
米国やヨーロッパでは、より効率的かつプロフェッショナルな人材育成戦略の遂行の必要から、人材育成のアウトソーシングが進み始め、ラーニングとパフォーマンスを明確にリンクさせることの重要性が増しています。

 “Training like a business”、“Linking Learning and Performance”を課題として、ビジネス指標としての研修やパフォーマンスインパクトを示す指標をトラッキングし、ベンチマーク指標を示していこうという目的でASTDが集めてきたデータの1つの報告書が“State of the Industry Report” です。サブタイトルに“ASTD’s Annual Review of Trends in Workplace and Performance”とあるように、ASTD Industry Reportは、アメリカやグローバル企業におけるラーニング&パフォーマンスのトレンドを知ることのできる人材育成「投資」のデータを示しています。この名前でのレポートは今回で第8回目になります。

■ベンチマーク企業とベストアワード受賞企業の取り組み比較

 報告のデータはベンチマーク企業と、ベンチマークフォーラムに参加している企業、そしてASTDのベストアワードを受賞した企業群とのデータから構成されており、企業規模などに応じて比較検討し、各企業の組織発展のためのバロメータをどのようにしてとらえればよいかの参考にもなる構成になっています。

 ASTDベストアワードとは、効率的、効果的な学習を提供し、かつ学習による組織パフォーマンスへの貢献をシステマティックに実践している組織に贈られるのアワードであり、アワードの受賞組織がBEST(いわば組織学習のベストプラクティス企業)となります。
 今年のレポートでは、テクノロジーを使った研修の効果(measures of efficiency and a new taxonomy for learning delivered by technology) についてのデータも付け加えられています。

データソースとなっている企業グループの概略(2003年での数値)
●ベンチマーク企業 (BMS)
平均従業員数 6,866人 平均給与総額290百万ドル(約310億円)
●ベンチマークフォーラム企業 (BMF)
平均従業員数 100,168人 平均給与総額4,930百万ドル(約5,423億円)
●ベストアワード受賞企業 (BEST)
平均従業員数 40,883人
以下データ概要から
◆従業員1人当たりの平均研修費
BMS 820ドル (2002年と同様)
BMF 1,190ドル (2002年 1,366ドル)
BEST 平均 2,000ドル以上 (2002年も同様)
◆対給与比率
BMS 2.52% (2002年 2.2%)
BMF 1.99% (2002年 2.47%)
BEST 4.16% (2002年 3.2%)
◆研修の外部サービスへの支出率
BMS 27% (2002年と同様)
BMF 36%  (2002年と同様)
BEST 27% (2002年と同様)
従業員1人当たりの平均公式研修時間
BMS 28時間  
BMF 39時間  
平均人材育成(人材開発部門)スタッフ数(2004年データ)
BMS 194人  
BMF 325人  
◆人財育成(人材開発部門)スタッフによる平均研修提供時間(2003年データ)
BMS 541時間  
BMF 505時間  
平均開発・提供コスト/研修(学習)内容1時間当たり(2003年データ)
BMS 596ドル  
BMF 1,430ドル  
◆受講1時間当たりの平均コスト(2003年データ)
BMS 56ドル  
BMF 56ドル  
(受講1時間当たりのコストがBMFでも同じなのは、BMF組織では、組織が大きいため、一度開発された研修の再利用度も高いためと考えられる)
◆従業員職位・職務区分別支出割合
 2003年データで、職務区分で最も研修費の割り当てが高かった従業員グループはカスタマーサービス部門で全体の18%、職位では、やはり管理職グループ(第一線スーパバイザーから上級管理職まで含む)で28%
◆従業員職位・職務区分別支出割合
 2003年データで、職務区分で最も研修費の割り当てが高かった従業員グループはカスタマーサービス部門で全体の18%、職位では、やはり管理職グループ(第一線スーパバイザーから上級管理職まで含む)で28%
◆研修(学習)開発内容の順位
 BSM、BMF組織ともに最も支出を割いた研修開発は管理職や上級管理職育成プログラムで、その次にIT、ビジネスプロセス、業界専門分野の順となっている
◆テクノロジーの使用状況 (研修全体に占める割合)
BMS 29%  (2004年 予測数値)
BMF 39%  (2004年 予測数値)
 いずれも前年度を上回っており、テクノロジーベースの学習の75%は自己学習型である
◆効果測定
Level 1
BMS 74%
(2002年と同様)
Level 2
BMS 31%
(2002年 41%)
Level 3
BMS 14%
(2002年 21%)
Level 4
BMS 8%
(2002年 11%)
 BESTの組織ではこの構成がまったく違っており、組織的なパフォーマンスと学習との関連を明確にすべく、Level4を主にフォーカスして評価を行っている。
 
 
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