2004年1月29日、日本テスト学会(http://www.jartest.jp/)の第1回事例研究会が開催された。
日本テスト学会とは、現時代に即応したテスト技術に関する研究者を育成し、科学的基礎と教育的理念に裏付けられた新しいテスト法の考え方と評価技術の研究開発・実用化を推進することなどを目的に、2003年5月に設立された団体である。
第1回事例研究会では、東京女子医科大学医学部による共用試験CBT(Computer-based
testing)の導入、および人事用適性テストでは最も評価と実績の高いHRR(株)による総合検査SPI2のCBT化の事例が発表され、討論された。
今回は、医学系共用試験CBTの医学部における取り組みについて紹介する。
■医学系共用試験CBTの医学部における取り組み |
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実施会場の様子
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共用試験は、平成17年度に正式実施予定の医歯学の臨床実習開始前の学生の知識と技能を全国で標準化して評価する試験である。全国の医科及び歯科大学共通の運営組織である共用試験実施機構が管理し、試験は各大学がそれぞれのカリキュラムに合わせて自主的に実施、評価結果の活用方法も各大学に任されている。
共用試験実施の背景には、医学・歯学部卒業時の医師・歯科医師の基本的臨床能力(知識・技能・態度)を高めて医学・歯学教育カリキュラムの質を国際的標準に合わせることと、日本における標準化を推進することがある。主として知識を評価するCBTと、技能・態度を評価する客観的臨床能力試験(Objective
structured clinical examination, OSCE)とに分かれ、既に全国の医学部・歯学部で2回トライアルが行われている。共用試験CBTシステムは、共用試験以外の目的(例えば学内試験)に用いることはできない。
共用試験の実施に向け、医学教育の基本的到達目標を行動目標として示した医学教育モデル・コア・カリキュラムが平成13年3月に公開されている。共用試験はこの医学教育モデル・コア・カリキュラムの達成度評価としての意味を持ち、出題や評価基準のもととなっている。一方歯学の共用試験は、歯学教育モデル・コア・カリキュラムに基づいて行われる。
東京女子医科大学医学部では、共用試験実施のインフラストラクチャー整備と同時に、学内試験の一部CBT化のために市販のCBTシステムを導入した。東京女子医科大ではCBTを受け入れるための環境として、専用サーバー1台と試験用端末105台を設置している。また、CBT実務組織に多くの教員や職員が関わり、共用試験CBTの実現と推進に大きく貢献している。
共用試験で使用するCBTシステムは、共用試験実施機構で独自に開発・改良された。共用試験の公正な実施のためにシステムは公開されていない。このシステムはサイトサーバーとハブで繋がった複数端末で実施できるものでIEで作動、インターネットとは切り離され、最大160台の端末を同時管理できる。プール問題から受験者個々にランダム出題される。問題形式には一般的な五肢択一問題の他に、一旦解答を確定した後は後戻りできない順次解答型や多肢選択問題などCBTとして特徴ある出題形式をもつ。受験者へは、自分でマークした問題や未回答問題へジャンプする機能(順次解答型を除く)や基準値参照画面などの利便性が考慮されている。クライアントはすべてWindowsマシンであるが、Macintoshに親しむ医学生の受験者からも特に大きな違和感は訴えられていない。
CBTの作問は作問ソフト(未公開)への直接入力、あるいはExcelで入力された問題を作問用ソフトで投入、データの吸出しができるようになっている。作問時の記入項目としては(1)モデル・コア・カリキュラムの分類、(2)問題文と図表、(3)解答肢、(4)作問者の所属や専門情報と作問のねらい、(5)求められる学力、(6)必要度・難易度、(7)類似問題判別に使用するためのキーワード3個などである。
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共用試験サンプル1
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共用試験サンプル2
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(東京女子医科大学医学部報告「医学系共用試験CBTの医学部における取り組み」より)
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