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特集1:平田周のキャンパスライフからビジネスライフへ 第4回 情報に強くなろう
三田教育研究所首席研究員 平田 周(プロフィール
 第4回 情報に強くなろう
 大学で教えるのは、「知識」です。その知識は、教師がさまざまな「情報」(論文など)を「知識」に昇華させて作ります。学生は、その説明を聞き、理解し、記憶するという作業を4年間繰り返しているといえるでしょう。ゼミや宿題で調べるということはあっても、それもまた別の知識を自分で見つけてくるという作業です。

 キャンパスで学生が日常必要とする「情報」は、今度の試験はどこがヤマだ、いいバイトはないか、今度の休みはどこへ行こうか、といったことでしょう。要は、勉強と情報はあまり相性がよくありません。

 しかし、就職すれば、知識よりも情報が優位を占めるようになります。経済学の理論を知っているよりも、「アメリカで連邦準備制度理事会が金利の引下げをした」という情報のほうがもっと重要になります。世の中は刻々と変化しており、ビジネスはその変化に遅れることが許されないからです。

 では知識は必要ないのか。そうではありません。知識は情報を探し、選択し、利用するための道具なのです。学校で教える「知識」が、情報のための道具という考えで教える先生は親切な教師だといえましょう。教師にとっては、知識そのものが目的物であって、道具とはかぎりません。もっとも教師として稼ぐための道具だといえなくもありませんが。

 学校で習った知識は、これからの情報収集や選択、理解に役立つのです。道具がなければ、腕のいい大工さんでも仕事にはなりませんからね。

 情報を意味する英語の単語には、データ、インフォメーションのほかに、「インテリジェンス」というのがあります。これは日常的な日本語になっていません。日本の外交がダメなのは、このインテリジェンスがないからだとよくいわれます。日本語になっていないくらいだから、無理もありませんね。

 情報という意味で使われる「インテリジェンス」は、「スパイが持ってくる情報」といった物騒な意味もありますが、今日では、「重要な情報」「意味ある情報」というように使われることが多くなっています。昔は、重要な外交情報は、スパイに頼ることが多かったせいです。

 データ、インフォメーション、インテリジェンスの違いは、食材、料理、栄養の区別で考えるとわかりいいでしょう。美味しいといって好んで食べる料理も、体にとって大事なのは栄養です。同じように、情報も結局必要なのはインテリジェンスなのです。学校で教わる知識は、いわば料理だといえるでしょう。だから、授業は人によって好き嫌いがある。

 インテリジェンスというのは、試験で答えなければならない解答のようなものです。明日行くバイト先の場所はどこか、といった情報です。要は、自分が持っている問題を解決してくれる情報のことなのです。ですから、いくら情報をたくさん持っていても、インテリジェンスでなければ、価値はないともいえます。クイズ番組で勝つのは別ですが。

 ビジネスでは、情報に強くなければダメだとよくいわれますが、正確にはインテリジェンスに強くなければ意味がありません。では、インテリジェンスを集めるには、どうすればいいのでしょう。インフォメーションをいくら整理しても、インテリジェンスにはなりません。分類したものも、インフォメーションです。

 極意をお教えしましょう。インテリジェンスは、自分が抱いている問題に対する答えですから、まず問題ありきなのです。はっきりと定義された問題を意識できているかどうかなのです。学校の試験とは違いますから、すぐに解答は必要ありません。いつも心にその問題を持っていれば、ふとしたことからインテリジェンスが降って湧いてくるものなのです。情報に強いということは、「インテリジェンスに強い」ことだと覚えておきましょう。ビジネスライフではきっと役にたちますよ。


■平田周 氏プロフィール
平田周氏 三田教育研究所首席研究員
どうしたら若い人たちの知力、思考力、英語力を高めることができるかを研究しています。大企業、外資系企業、中小企業などでの勤務、ベンチャーの立ち上げ、大学で教鞭など、さまざまな体験をしてきました。元東京工科大学大学院バイオ・情報メディア研究科客員教授。専攻:国際情報論。

 
 

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