筆者はメンバーにシステム品質策をたくさん考えてもらうことにした。しかし、当初は、メンバーの口は重かった。すでに「改善というミッション」を理解しているメンバーであったが、その具体的な改善策については意見を言わない状況が続いた。
無理もないと思う。長年、自分たちの考えは山下に否定され続けてきたのだから急には言えないのである。
筆者はさまざまなサポートを行った。結論ではなく、考え方を教え、試してみようと何度も言った。次第にメンバーは少しずつ意見を言うようになった。その最大の原因は筆者が「責任は俺が取る」と言ったことが大きいと思う。
「君たちがこのシステムの問題を一番よく知っているはずだよ。だから、俺には改善策は考え付かないけど、君らにはわかるはずだ。何でも試したらいいじゃないか。失敗してもいいじゃないか。どうせ、今は最悪なんだし、これ以上悪くならないよ。君たちの考えたことなら大丈夫。俺が責任を取ればいいから」
こんな内容を言ったと思う。
この一言がメンバーの気持ちを変えたようだった。彼・彼女らは積極的に改善策を試すようになり、いくつかが成果となって現れるようになった。こうなると、メンバーは自然に動けるようになった。改善するのが楽しくなったのである。ここで、改善策を考え、実行することで成果を出すことがメンバーの動機になったのであった。
次回は、動機をより詳細化した概念――「行動のインセンティブ」について説明する。
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