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 経済産業省、IT プロフェッショナル育成のための「ITスキル・スタンダード」策定 −ITサービス・プロフェッショナル育成の基盤構築に向けて−


 経済産業省は2002年12月26日、日本で初めての職業分野別の標準的なスキル基準「ITスキル・スタンダード」(Ver1.0)」(以下「ITスキル・スタンダード」)を策定、資料を PDF 、WORDファイルとして公開されました。
※(「ITスキル・スタンダード」協議会報告書)
 http://www.meti.go.jp/report/data/g21226aj.html

 「ITスキル・スタンダード」策定に至る背景には、80年代〜90年代の経済産業省の政策としては「人材の量」を重視されていました。2000年頃から「人材の質」を重視する政策に変換、「ITスキル・スタンダード」策定もこの流れに位置付けられています。
「ITスキル・スタンダード」は「e-Japan 重点計画―2002」に基づき、IT 関連サービスの提供に必要とされる能力を明確化・体系化した指標です。情報処理技術者試験のような資格ではありませんので、レベルの認定はしません。そういう意味ではIT業界共通の「辞書」(共通の枠組)のようなものです。

ITSS策定にいたる歴史と今後のスケジュール
1987年 ●産業構造審査会が「2000年には「プログラマが97万人不足する」と予測(いわゆるソフトウエアクライシス)
1992年 ●産業構造審査会が人材の需要ギャップを54万人に見直し,17種類の人材像とこれに対応したカリキュラムを提示。情報処理技術者試験に反映
1999年 ●産業構造審査会が量よりも質が重要との認識からIT人材育成の必要性を訴え、情報処理技術者試験の見直しを提言
2000年 ●従来のカリキュラムに替えて、「スキル標準」(ITSSとは無関係)に基づいた情報処理技術者試験制度に改正
2001年  春 ●経済産業省情報処理振興課がIT業界の新たな人材育成支援対策の検討を開始
3月
●経済産業省がSFIAなどヨーロッパのスキルフレームワークを視察 ITSSのヒントに
夏頃
●タスクフォースでITSSのアルファ版の検討・作成を開始

2002年 5月

●ITSSのアルファ版が完成 第1回ITSS協議会を開催
9月
●第2回ITSS協議会を開催 ITSSのβ版と研修ロードマップのアルファ版(職種はプロマネのみ)が閑静
10月
●Web上でパブリックコメント募集開始
12月26日
●第3回ITSS協議会を開催,ITSSバージョン1を確定
2003年 3月 ●6職種についての研修ロードマップを作成。情報処理技術者試験との関連も定義
3月以降
●全職種の研修ロードマップを作成。定期的なメンテナンスを実施

 「ITスキル・スタンダード」は、各種ITサービスの提供に必要な技術者の知識やスキル、レベルなどを体系化した指標。「ITスペシャリスト」や「ソフトウェアデベロップメント」、「プロジェクトマネジメント」、「マーケティング」など11の職種を定義し、それぞれを製品や技術などによっていくつかの専門分野に細分化。個々の職種や専門分野に対して、技術者の実績や能力に応じた7段階のレベルを定めています。

<11の職種>
(1) マーケティング

(2) セールス

(3) コンサルタント
(4) ITアーキテクト
(5) プロジェクトマネジメント
(6) ITスペシャリスト
(7) アプリケーションスペシャリスト
(8) ソフトウェアデベロップメント
(9) カスタマサービス
(10) オペレーション
(11) エデュケーション

 政府が IT スキル標準を提示する意義について経産省では、政府がパブリック・ドメインとして戦略的な人材育成・スキル開発のための客観的指標を整備・提供することで、企業や教育機関によるプロフェッショナル育成の有機的な連携と、我が国の IT サービスの質的な向上につながるためである、としています。

 「ITスキル・スタンダード」の活用方法としては以下のようなことが考えられます。

(1) システム・インテグレータやソフト開発会社がこの「ITスキル・スタンダード」をベースにして自社のキャリアパスや専門職制度、研修制度を整備できる。

(2) 教育会社も「ITスキル・スタンダード」に沿ったカリキュラムを整備できる。これにより、「ITスキル・スタンダード」に沿った体系的な教育が提供されることになり、教育会社同士でカリキュラムを相互補完することも可能となる。

(3) ITエンジニア個人にとっては、「IT業界にどんなキャリアパスがあるのか、またそのキャリアのためにはどんなスキルが必要なのか」が明確になる。
(4) ユーザー企業がITベンダーにプロジェクトを発注するときにも、この「ITスキル・スタンダード」に沿ったエンジニアのレベルを要求するようになるかもしれない。そうなると、これまでよりも効率的に人材リソースを集められるようになる。

 「ITスキル・スタンダード」を活用すれば日本のIT業界を取り巻く諸問題が、一気に解決するとは言えませんが、少なくともその解決の「突破口」になることを期待します。

参考資料
ITプロフェッショナル2003年1月号
IT Pro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/OPINION/20030130/1/
[記者の眼]
(平田 昌信=日経ITプロフェッショナル副編集長)


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