このプロセスを、インストラクショナルデザインの観点から12ステップにまとめたものが以下のものです。
1. |
経営ニーズ、ミッション、目標、人材開発への期待を明らかにし、それらのゴール達成のために人材開発プログラムがサポートすべきことを明確にする
|
2. |
1の達成のために要求される従業員や主要なステークホルダーの最優先活動の見極めとリスト化 |
3. |
対象となる従業員グループの特定(事業グループ、部署、役職……) |
4. |
1の達成のために必要とされるパフォーマンス領域や職務基準や業務上の行動を、各対象グループに説明する |
5. |
4の行動を起こすために従業員に必要とされるコンピテンシー(知識、態度、スキル)の分析をする |
6. |
現状と期待されるパフォーマンス(4と5)のギャップを明確にし、その原因を探る |
7. |
6で明らかになったギャップを縮小するための方法を調査、選択する(研修、新しい人材の雇用、業務方法の改善、業務環境<物理的な環境>の改善……) |
8. |
研修後の期待されるパフォーマンスを維持するための体制を作る(パフォーマンス達成のためのサポート体制の強化、パフォーマンス達成を妨げる制約条件の低減) |
9. |
プログラムの設計と実施(研修カリキュラム、コースなども含む)(1から8の諸条件に適合しているかどうかのパイロットと本実施) |
10. |
1(経営上の目標)や4(日常業務における行動変容)に対するプログラムのインパクトを評価する |
11. |
10で収集したデータを基にプログラムデザインや実施での改善をする |
12. |
経営層や研修に関わった部署のマネージャーなどにプログラムの結果(効果と有益性)を報告する |
. |
|
上記のようなプロセスを実施するために求められるコンピテンシーを、"ASTD 2004
Competency Study" は以下のようにまとめている。
基盤となるコンピテンシー
●インターパーソナル |
|
信頼関係の構築 |
|
効果的なコミュニケーション |
|
ステークホルダーへの影響力 |
|
多様性の相互効果を高める力 |
|
ネットワーキング・パートナーリング |
●ビジネス・管理 |
|
ニーズ分析・ソリューション提案 |
|
経営的視点からの洞察力 |
|
達成重視 |
|
企画・実行力 |
|
戦略思考 |
●パーソナル |
|
順応・適応性 |
|
自己開発のモデル化 |
上記コンピテンシーの中でも、今後重視されると考えられるコンピテンシーとして上位に挙げられているのが、「ニーズ分析とソリューション提案」「戦略的思考」「効果的なコミュニケーション力」です。
これらのコンピテンシーを基盤として求められる専門性としては、以下の項目が挙げられています。
専門性
●ラーニングのデザイン
●ヒューマンパフォーマンスの改善・向上
●研修の供給
●評価・測定
●組織変革のファシリテーション
●学習機能の管理
●コーチング
●組織ナレッジの管理(ナレッジマネジメント)
●キャリアプランニング・人材能力マネジメント
|
(c)株式会社インストラクショナル
デザイン
|
将来的に重視される専門性として上位に挙げられているのが、「ヒューマンパフォーマンスの改善・向上」「組織変革のファシリテーション」「評価・測定」です。
これらを実行するための機能・役割をASTDのモデルは、左図のように示しています。
以上のように、戦略的人材開発を進めるためのコンピテンシーや人材開発に求められる機能を見てきました。パフォーマンスコンサルティングやパフォーマンス改善(Human
Performance Improvement)の領域では、個人のパフォーマンス(成果を達成するための行動)の要素を以下のように分析しています。
|
(c)株式会社インストラクショナル
デザイン
|
これらの構成要素からもわかるように、パフォーマンスを支援するための人材開発担当部署に求められる分析能力やソリューション提案のために必要となる情報、さまざまなスキルには、ますます専門性が求められてきます。何をアウトソースし、何が自分たちの組織にとって一番のソリューションになるのかを見極めるためにも、パフォーマンス改善(Human
Performance Improvement)のアプローチに必要とされるスキル概要や知識を身につけることが必要になると思われます。
中原 孝子氏 プロフィール |
|
中原 孝子(なかはら こうこ)
国立岩手大学卒業後、米コーネル大学大学院にて、教育の経済効果、国際コミュニケーション学等を学ぶ。
その後、慶應義塾大学環境情報学部武藤研究室訪問研究員として、インターネットを利用したデータマインニングやeラーニングなどの研究に携わった。
職歴:米系製造販売会社、金融機関、IT企業にてトレーニングマネージャーとして活躍し、平成14年5月、株式会社インストラクショナル
デザインを設立。
会員:ASTD会員、慶應義塾大学環境情報学部研究員 |
|
|