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今回がコミュニケーションリスク・マネジメントの最終回になる。第1回目は、コミュニケーションリスクとは何かについて説明した。また前回の第2回目ではコミュニケーションリスクコントロールの考え方と体制面、運用面の具体的な対策を説明した。
最終回の今回は、一番重要かつ難しいと思われる「教育面の取り組み」に関して筆者の経験も踏まえながら事例を使って説明することにしたい。
●事例
筆者が社内ナレッジサイトのシステムをレベルアップしたときの話である。このシステムは筆者の勤務先A社(全国規模の販社)のナレッジサイトの利便性を向上させるという案件であった。A社では集合研修を代替するものとして、E−ラーニングやナレッジサイトに教育手段を移行する方針としていた。その一環として2年前にナレッジサイトを構築していた。
ちなみにこのシステムは利用部門導入システムであり、情報システム部はあまり関与していなかった。ITバブル期には、このような利用部門が導入し所管するシステムが多かった。
ナレッジサイトには大きく2つの機能があった。一つは「電子マニュアル」である。かつて教育用テキストは専門業者で製本し、全国の営業店向けに配布していたが、コスト高を理由にイントラサイトのコンテンツに集約した。もう一つは、社員の質問を他社員がボード(電子掲示板)に回答する機能であり、いわゆる暗黙知の形式知化のための仕組みである。
このようなナレッジサイトであったが、実際は稼動以来あまり評判がよくなかった。その理由は非常に使いにくかったからである。マニュアルは探しにくいし、質問のためのデータ入力も面倒、質問と回答も業務別に分類できていなかったため、あまり使われなかった。
そこで、このナレッジサイトをもっと有効活用するべく、ユーザ利便性の向上を目的としてレベルアップすることになった訳である。なお、レベルアップについては構築を担当したB社で行うことになった。B社にはノウハウがあるため、そのまま使うことがリスクがないと判断したためである。
●インシデントの発生
さて、ここからが本題になる。今回の目標である「使い勝手がよく、多くの社員に使ってもらえるシステム」を開発コンセプトにして、筆者を含めた顧客側はベンダB社に協力を要請した。「画面や入力操作性などインターフェースにおいてはかなり細かく要求をするし、時間もかかると思う」と何度も伝え、そのようなプロジェクト管理をしてほしいと伝えたつもりである。筆者たちは若いPMとSEのチームと画面、ユーザインターフェースについて2ヶ月にわたり協議していた。当方から画面イメージを伝え、ベンダ側に画面を作ってもらい、それに意見を言うという作業を繰り返す進め方をしていた。この作業はベンダ側にとっては非常に非効率だったかも知れないが、ここをきちんとやらないとレベルアップする意味がない。事前にベンダ側に説明していたのだから理解してもらっていると考えていた。
ところが、スケジュール上の要件定義が完了しても画面はFIXしなかったのがベンダ側で問題になったのだろう。要件定義会議にベンダのマネージャC氏(若いPMの上司)が同席した。この会議では、筆者らはいつもと同じように画面の修正をお願いした。納得できるものがベンダ側から提示されなかったためである。C氏は次第に苛立ちを隠せないように発言が荒くなっていった。
B社PM:
この形でいかがでしょうか?
A社担当者:
うーん。もう少し考えさせてほしいですね。画面のプルダウンリストに当方で考えた出力項目を動的に表示することは可能ですか。
B社PM:
調べさせていただかないと・・・持ち帰って検討・・・。
C氏:
(PMに向かって)検討はいい!(我々に向かって)もう時間がないんですよ!今日でFIXさせていただきます。これ以上遅れたら作業間に合いませんよ。この調子でやっていたら、いつまでたっても終わらないですよ。申し訳ないですが、今日で確定させていただきます。
C氏の言葉に我々は唖然となり、大きな不満となった。結局、出席していたA社の教育課長は激しく怒り以降の作業をストップさせた。最終的には、ベンダB社の事業部長の謝罪まで発展した後味の悪いインシデントになってしまった。
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