パラリンピックやデフリンピックに思うDXによる社会課題解決のヒント/身近な事例で学ぶ「DX×ビジネス」ビジネスパーソンと学生のためのデジタル変革ガイド Vol.4

パラリンピックやデフリンピックに思うDXによる社会課題解決のヒント

オリンピックに続き、パラリンピックも盛況のうちに幕を閉じました。

残した成績も素晴らしい結果でしたが、ハンデを持つパラリンピックのアスリートの努力に改めて感動を覚えました。

車いすラグビーは、スポーツとしての完成度も高く、残り時間を使った戦術なども含めて、特に準決勝の日本対オーストラリア戦は手に汗握る展開で素晴らしかったです。障害度が高いローポインターと言われる選手のディフェンスや攻撃の道筋を作るポジショニングなどは、芸術と言ってもいいほどの完成度だったと思います。

ブラインドサッカーのチームフォーメーションやプレーは神業としか思えません。

生まれつき目が見えない水泳の木村敬一選手は、泳ぎのお手本を見たことが無いというハンデを努力と向上心で克服し、連覇を成し遂げました。

自分に残された身体の機能を最大限生かして、泳ぎを進化させ続ける鈴木孝幸選手も見事なメダルラッシュを見せてくれました。

その他の競技や選手たちの頑張りもこちらでは書ききれないほどです。

前向きに高齢期を迎えるためのヒント

日本の大きな課題の一つに高齢化の進展があります。

年齢を重ねると、これまでは普通にできていたことができなくなっていきます。
私自身もバレーボールをやっているのですが、若い頃のようにジャンプは出来なくなりましたし、俊敏性も衰えました。思うように身体が動かないのです。

しかし、私はパラアスリートが、残された能力を最大限に生かす姿勢を見て、大変感銘を受けました。

そうやって自分自身のことを考えてみると、サーブはそれほど衰えていませんし、試合中のメンタル面はむしろ若い時よりも強くなっています。自分に残された能力を最大限に生かす。

ここにパラアスリートから学ぶべき、前向きに高齢期を迎えるためのヒントがある気がするのです。

IOCとの最高位スポンサー契約の動向

パナソニックが37年間続けてきた国際オリンピック委員会(IOC)との最高位スポンサー契約を2024年12月末の期間満了をもって終了し、延長しないと発表しました。

トヨタ自動車も同じくオリンピック最高位スポンサー契約を更新しない方針だと報道されていますが、パラリンピックのスポンサーだけは継続するかもしれません。
(2024年9月18日現在)

トヨタ自動車はパラリンピックでも、手動式車いすをバッテリ駆動の電動モビリティで牽引する「e-puller」などの提供を行っています。

障がいを持つ方への支援は、高齢化社会が進んでいく日本の課題解決にも役立っていくと思うのです。

参照:トヨタホームページ ニュースリリース2023年10月4日

先端技術による障がい者の競技会「サイバスロン」

私が脳波によって車いすを動かす映像を初めてテレビで見たのが2017年でした。

それから7年たって、最近では脳波を読み取ってAIが絵を描いたり、全身の筋肉が衰える病気で自力で話すことが出来なくなった方の脳波を読取って文章化し、さらに健康な時の音声をAIに学ばせることで、本人の声で家族と会話ができたりと、技術の進歩は驚くものがあります。

障がい者の日常生活をより良くするための最先端技術を使って、いろいろな競技を行うサイバスロン 2024 というイベントが2024 年 10 月 25 日から 27 日までスイスで開催され、以下のような競技が行われます。。

障がいがある方の日常生活を便利にする最先端技術が使われていますので、是非参照してみて下さい。

競技名概要
パワード車いすレース起伏のある地形における石のさまざまなパターンや凹凸、または段の高さや角度が変化する階段などのある障害レース。ドアの開閉などの操作も含まれる。目や舌の動きで操作する車いすもある。
パワード義足レース義足で階段を登ったり、険しい地形を乗り越える障害レース
パワード外骨格(エクソスケルトン)レース下半身麻痺の人が直立、歩行、階段の上り下りを行えるようにする「外骨格」によるレース
パワード義手レース電球をねじ込む、缶切りで缶を空けるなど、異なる力や動きを必要とする日常の動作を行う競技
機能的電気刺激(FES)自転車レース完全下半身麻痺の人が電気パルスにより麻痺した筋肉を刺激して、車いす式自転車をこぐレース
視覚補助レースあらゆる視覚支援技術により、公共バスの乗降などの日常動作を競う競技
アシストロボットレースアシストロボットを活用し、物体を操作したり障害物を避けたりするレース
脳コンピュータインターフェース(BCI)レース脳波などにより、コンピューターゲームのアバターなどを操作するレース

参照:サイバスロン2024ホームーページ:2024年9月時点
参照:「CYBATHLON Challenges 2024 Competition Highlights」の動画:2024年9月時点

デフリンピックが2025年日本で初開催

2025年11月15日~26日には、ろう者のためのオリンピックである「東京2025デフリンピック」が開催されます。デフリンピック100周年の記念すべき大会であり、日本では初めての開催になります。

70~80か国・地域から各国選手団等の約6,000人が集まり、21の競技が行われます。デフリンピックのルールは、ほぼオリンピックと同じで、耳が聞こえない選手のために目でわかる様々な工夫がされているといいます。

参照:東京2025デフリンピックホームーページ:2024年9月時点
参照:一般財団法人全日本ろうあ連盟スポーツ委員会「デフリンピックのご紹介」ホームーページ:2024年9月時点

手話と音声の翻訳アプリ「SureTalk」

デフリンピックが日本で開催されるということは、聴覚障がいの方への理解を深めるチャンスですし、ホスト国として海外の聴覚障がいの方を受け容れる準備をしていかなければなりません。

コミュニケーション手段である手話についても、ニュースで見る機会も増えましたし、手話検定の資格を持つ有名人の方もいて、以前より手話が身近になっているとはいえ、多くの人がコミュニケーション手段として活用できるとは言えません。

そんな中で開発された、手話と音声をリアルタイムでテキストに変換し、画面を通して会話ができるソフトバンクの「SureTalk」というサービスをご紹介します。

デフリンピックの選手が参加した体験会もとても好評だったようです。

たくさんの手話動画データにより、手話ユーザーの手話動作の特徴を抽出し、1つの手話をテキスト変換します。音声ユーザーの会話もテキスト変換することで、双方のコミュニケーションを円滑に行う仕組みです。AIに学習させることで、手話認識精度も向上します。

 是非、参照してみて下さい。

参照:ソフトバンク「SureTalk」ホームーページ:2024年9月時点

国際手話対応と社会課題解決の可能性

日本語や英語が違うように、実は手話も国や地域によって異なるものが使われています。

聴覚障がい者の国際会議やデフリンピックなどのスポーツ大会では、世界ろう連盟などが開発した国際手話が用いられますが、日本にはこの国際手話を使える人は少ないといいます。

全世界での聴覚障がいの方は4億人以上とも言われ、その中で日常的に手話を使う人は約7000万人いると言われています。

「SureTalk」も2024年9月18日時点では、東京近郊で使われている日本の手話にしか対応していませんが、このようなサービスが国際手話を始めとする世界中の手話に対応できれば、世界中の聴覚障がいの方のコミュニケーションの幅は大きく広がると思います。

そして、そういった聴覚障がいの方のプラットフォームを活用して、社会貢献可能な国際的な市場ができたり、新たなビジネスが生まれる可能性もあると思うのです。

今回学んでほしいポイント

  • 「パラリンピック」などの身近なものを通じて、障がい者支援の取組みは、高齢化社会の課題解決のヒントにもなることを学ぶ
  • 「サイバスロン」から、現在の最先端の障がい者支援技術の動向を知る
  • 初めて日本で開催される「デフリンピック」を通じて、今後の社会課題解決になる取組みがないかを、自分なりに考えてみる
この記事の著者

株式会社Live and Learn 講師 DXビジネスエヴァンジェリスト

福島 仁志

ふくしま ひとし

この記事の著者

[DXビジネス・プロフェッショナルレベル認定2023] 株式会社Live and Learn講師 東京都在住。 新卒でNTTに業務職として入社。 顧客応対業務やシステム開発、法人営業の業務に従事したのち、 2016年にNTTを早期退職。2017年より株式会社Live and Learnで主に研修講師やコンサルティング業務に従事。 「消費生活アドバイザー」「ITILエキスパート」「ビジネス法務エキスパート®」などの資格を持つ。 趣味はバレーボール、プロレス観戦など。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です