50歳、子育てが終了し、なぜDXを学ぶ決心をしたのか
私は今55歳です。DX人材として検定問題作成や大学テキスト作成の仕事をしたり、noteにDX関連のコラムを書いたりしています。また、先日出版された『DXビジネス検定™公式テキスト』には著者の一人として参加しました。
昨年仕事を始めるまで、50歳からの4年間はDXについて集中的に学んでいました。その前の30年間は専業主婦でした。
なぜ、30年間主婦をしていた私がDXの知識を身に着けようと思ったのか。どうやって勉強してきたのか。
このコラムでは、そういったことを書いていこうと思います。
私は夫と子ども3人の5人家族の専業主婦として30年過ごしてきました。子育ては忙しく、子どもたちの年頃ごとの悩みや苦労もありましたが、楽しいものでした。そのせいか、子どもたちが順に家を出ると、急に焦りと不安感が湧き上がってきました。
それは、「子育てに使っていた時間をこれから何に使うべきなのか?」そして、平均寿命が延び、同じ50代でも昔に比べて元気な今、「また働きたいけど、この年でもまだ働くチャンスがあるのだろうか?」という不安感でした。
30年間の専業主婦生活から新たな道への挑戦
子育てが終わりかけて、私と同じような気持ちになる方は多いのではないでしょうか。私の世代は結婚や出産後も、同じ企業で働き続けるのにはまだハードルがあり、そのタイミングで家庭に入る女性が多い時代でした。
男女雇用機会均等法は施行されていましたが、働き方は正に「昭和のモーレツ社員」。私が働いていた都銀のシステム部も、当時はどこも同じような状況だったと思いますが、毎日22:00以降まで働くのが当たり前でした。結婚後もその状況は変わらず、私は妊娠を機に退職しました。
それから30年、長い間家庭で家事に専念してきた私にとって、外の世界は大きく変わってしまったように感じます。デジタル技術の進化、新しい働き方、変わる社会のニーズ…。そんな中で、50歳過ぎの私に、まだ働くチャンスはあるのか?あるとすれば、どんなスキルが求められるのでしょうか。
その当時いろいろ悩みはしましたが、結局、「人生100年時代」というのなら、50代からでもリスキリングして新しいことに挑戦したっていいじゃないか。やらない後悔よりやる後悔!」
と、まずは勉強しようと決めたのでした。
ですが何を勉強したらいいでしょうか?まずは自分の得意、不得意を考えてみました。
子育て中、私はPTA活動を通じ、自分は知らない人たちの中に入って行ったり、人前で話したりすることが苦ではないことに気付きました。
また、私は自分の好きなパン作りを活かして、数年間パン屋のパートをしたこともありました。接客は楽しかったのですが、自分で考えたことを店の社員や先輩パートタイム社員に提案しても、元々の手順やルールがある中ではあまり歓迎されない経験もしました。
私は本来、自分で新しいことを考えたり、作ったりすることが好きなようです。しかし、パン屋の仕事ではそのようなことはあまりできませんでした。そのあと、父や母の認知症での介護が必要になり、結局パン屋の仕事はやめることになりました。このようなことがあったので、私は、何か新しいことを学んで、自分が考えて形にすることを仕事にしたいと思うようになりました。
そのタイミングで皆さんの記憶にも新しい、新型コロナのパンデミックが発生したのです。
当時の状況に戻りたいとは全く思いませんが、この新型コロナの流行のおかげで世界の中での日本のデジタル化の遅れが誰の目にも明らかになり、同時に在宅ワークやリモート会議が国内でも広がり、「DX」という単語の知名度が一気に上がりました。私がDXというものに興味を持ち、それについての本を読み始めたのはこのタイミングでした。
DXはただ学ぶだけでなく、新たなキャリアへの入り口
元々50代からでも仕事をしたいと思ったことが、私が勉強をする動機でした。
さらに、今ゼロから勉強して仕事につなげるためには、私が専業主婦をしていた30年間、社会で働いていた方々の経験やキャリアに追いつくのが無理な以上、新しい分野であることが望ましく、「DX」は正にこの条件にぴったり合致したのです。
「子育て後に何か勉強したい」と思った私がDXを選んだことにはもう一つ理由があります。
日本はこの30年、ビジネスモデルを変えられないまま、デジタル化を進められないまま世界での地位を下げ続けています。様々な要因が絡み合って今の状況になっていますが、私は世界の先進国の中で、日本は成人してから新しいことを勉強する人が少ないということも大きく影響していると思っています。
2022年の調査ですが、パーソル総合研究所の「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」の「自己成長と自己研鑽」のアンケート結果を見ても、日本の社会人が「とくに何もおこなっていない」割合は52.6%で最も高く、全体平均で18.0%と、世界と比較しても、「新しいことを学ぼう」という意欲の低さが目立っています。
私自身、子どもたちが家にいた頃は集中して勉強する時間も気持ちもありませんでした。
だからこそ、子育てが終わった今、何か新しいことをしようと思ったときに、ビジネスモデルやデジタルについて学べる「DX」を勉強しようと決めたのです。そして、勉強するだけではそれ以上に広がりませんから、「もう無理」とか、「今更」とか思わず、仕事につなげることを目標に勉強をすることを決意したのでした。
DXビジネスアンバサダー
岸 晶子
きし あきこ
都市銀行勤務後、出産を経て専業主婦に。3人の子育てが一段落した際にデジタルリスキリングを実施。その経験を活かしDXビジネス教育に関するコラム記事や大学向け教材作成などを手がける。