デジタルツールを使った業務効率化とビジネス拡大 ~ ②オンライン会議・情報共有ツール~/「強み」×「デジタル」で 何歳からでも仕事に活かせる、DX的キャリアの作り方 Vol.5

デジタルツールを使った業務効率化とビジネス拡大 ~ ②オンライン会議・情報共有ツール~

ここまでの連載では、デジタル活用による個人起業や企業内業務の効率化について、第1回では自分の強みをデジタルで強化し、新たなキャリアを切り拓く重要性を、第2回ではビジネスの4要素(商品・サービス、販売チャネルと顧客、マーケティング、オペレーション)におけるデジタル活用の意義を解説し、第3回では個人や個人事業主、企業がデジタルツールを具体的に活用する方法を紹介してきました。
第4回では、利用するデジタルツール側に着目し4つに分類した上で、1.SNSに注目して、ビジネスにどう活かすかを考えました。


今回は、デジタルツール4分類のうち、2.オンライン会議、情報共有ツールに焦点を当てます。
オンライン会議ツールは遠隔、非対面での対話や商談を可能にし、情報共有ツールは資料や進捗を遠隔でも効率的に共有・管理するツールと定義します。
ただし、これらのツールは企業ではすでに日常業務に使われていると思いますので、今回は企業の事例は割愛します。
個人や個人事業主がこれらをどのように活用すればビジネスの立ち上げや効率化ができるか、前回と同様ビジネスの4要素を軸に見ていきます。

(1)商品・サービスへの活用例

オンライン会議ツールを利用すると、地理的な制約を受けないため移動時間、費用を抑えてビジネスを始めたり、既に行っているビジネスを効率化したり拡大したりできます。

A) 個人としてのビジネス活用事例

ハンドメイドの革小物を製作している個人が、Zoomを使って購入希望者とのカスタムオーダー面談を実施すれば、顧客の希望サイズや名入れ箇所を対話により確認し、その場でデザイン案を共有しながら決定することができます。

デザイン決定後の製作工程や納品予定日などをNotion(チームで共同作業をするためのツール。メモ作成、タスク管理のほか、様々な機能を一つのプラットフォーム上で行うことができる)で整理し顧客とリンク共有することで、信頼性のあるサービス提供を実現することができるでしょう。

参照:Notion https://www.notion.com/ja


B) 個人事業主としてのビジネス活用
すでに個人事業主として活動している場合も、オンライン会議ツールを導入することで新たなサービスを展開できます。
たとえば、心理カウンセラーやビジネスコンサルタントはZoomを利用してオンラインセッションをすることで、自分の周辺地域に限定されていた顧客基盤を全国に広げることができます。
これにより、移動時間と交通費を削減しつつ多くのクライアントに同時に対応でき、コストを下げながら収益を向上させることができるでしょう。


また、情報共有ツールのNotionやTrello(チーム内で共有するタスク管理ツール)を用いてクライアントから集めたフィードバックを参考にサービス内容を改善することもできるでしょう。

参照:Trello https://trello.com/ja

(2)販売チャネル・顧客への活用例

オンライン会議ツールを利用することで販売チャネルを拡大し顧客体験を向上させることができます。
また情報共有ツールで顧客とのつながりを継続、強化することができるでしょう。

A) 個人としてのビジネス活用事例
自宅で焼き菓子を製造・販売している個人が、定期的にZoomを使った「焼き菓子お試しオンライン会」を開催するとします。参加者に実物を事前発送しておき、オンライン会の場では試食しながら感想をもらい、その場で次回注文につなげる仕組みを構築します。

また、Googleドライブに過去の注文内容や味のフィードバックを記録し、リピーターごとにパーソナライズした提案ができるようにすれば、より顧客体験を向上させることができるでしょう。

B) 個人事業主としてのビジネス活用
個人事業主なら、オンライン会議ツールを使って顧客への商品デモや商談を効率よく進めることができるでしょう。
たとえば、家具を制作している個人事業主がZoomを利用して商品を実際に見せながら顧客の要望を直接確認し、細部の仕様変更などをリアルタイムに調整することで、顧客満足度を大きく高めることができます。

また、情報共有ツールとしてHubSpot CRM(AI搭載の顧客情報管理ツール)やGoogleドライブを使い、顧客の購入履歴や過去の要望を管理・共有することで、顧客ごとの好みを把握でき、顧客全体の満足度が向上し、継続的な関係構築が可能になります。

(3)マーケティングへの活用例

オンライン会議ツールを利用することで、それまでは地理的な制限で取り込めていなかった見込み客や新規の参加者を獲得するでしょう。

A)個人としてのビジネス活用
個人がオンライン会議ツールを使ってマーケティング活動を行う場合、ウェビナーやオンラインワークショップが有効です。たとえば、趣味で絵画を描く個人なら、Zoomを利用して無料のオンライン絵画教室を開き、SNSで広報することで見込み客を獲得しやすくなるでしょう。
セミナー終了後に、自作の絵画作品や教材、オリジナルグッズを販売するECサイトへ誘導するという方法もあります。
また、情報共有ツールとしてGoogleドライブやNotionを活用して、参加者への配布資料や過去のウェビナー映像を共有することでマーケティング効果を高めることもできるでしょう。

B) 個人事業主としてのビジネス活用事例
自分の活動する地域に限定して活動しているフリーランスのヨガインストラクターが、自身の活動範囲と認知度拡大のためにZoomを活用して無料のオンライン体験レッスンを定期開催するとしましょう。
参加者をInstagramやLINE公式アカウントで募集し、レッスン終了後に継続的なプランを案内することで、オンライン顧客の獲得とロイヤルカスタマー化が期待できます。
また、Googleドライブでレッスン録画を配布し、受講者が復習できる環境を整備。Notionを活用してイベント別の申込状況・参加者の感想を管理するなど、PDCAを素早く回してマーケティング施策の改善にも役立てることができるでしょう。

(4)オペレーションへの活用例

リモートワーク体制の整備と業務効率化という切り口から、オンライン会議ツールや情報共有ツールの活用事例を見ていきたいと思います。
コロナ禍以降、急激に広まったリモートワークは、オンライン会議ツールがなければ成り立たなかったと言っても過言ではありません。

A)個人としてのビジネス活用
Microsoft TeamsやSlackの無料プランを利用して、顧客や共同作業をするパートナーとオンラインでミーティングや打ち合わせを行うことができます。
たとえば、手作りアクセサリーを販売しようとしている個人が、Slackを使って仕入れ先や共同制作者とリアルタイムに情報交換をし、Googleドライブで商品写真や素材の在庫管理を共有することで、効率的に作業を進めることができます。

また、オンラインミーティングの議事録をNotionに記録し、次回の作業予定をTrelloで管理することで、作業の漏れや重複を避けられるようになります。

B) 個人事業主としてのビジネス活用事例
一人で翻訳業を営んでいる個人事業主なら、国内外のクライアントとの業務連絡や進行管理を円滑に行うためにMicrosoft TeamsやSlackを活用できるでしょう。
翻訳依頼ごとにSlackチャンネルを立て、進捗や疑問点の共有をリアルタイムで行います。
Googleドライブ上には案件ごとの納品物・参考資料を保管し、ファイルバージョン管理も実施。
納期スケジュールやタスクの割り当てはTrello(作業管理をはじめとするプロジェクト管理ツール。
作業をカード形式で可視化。
複数人で共有、管理することができる)で可視化し、ひとりでも効率的に複数案件を管理・遂行できる体制を構築できるでしょう。

まとめ

限られた予算やリソースで最大限の効果を得るには、オンライン会議ツールと情報共有ツールを活用した「コミュニケーションと管理の効率化」が効果的です。
パソコンとインターネット環境さえあれば、Zoom、Slack、Googleドライブなどはいずれも無料プランで色々な機能を使うことができます。
他のサービスとも連携させれば、商品やサービスの開発時間やマーケティング活動に、より多くのリソースを割けるようになります。
手軽に始めやすいこれらのツールを、ぜひ積極的に取り入れてみてください。

<vol.6に続く>

この記事の著者

DXビジネスアンバサダー

岸 晶子

きし あきこ

この記事の著者

都市銀行勤務後、出産を経て専業主婦に。3人の子育てが一段落した際にデジタルリスキリングを実施。その経験を活かしDXビジネス教育に関するコラム記事や大学向け教材作成などを手がける。