個人が仕事を始めたり、企業内で仕事を効率化する「デジタル活用」~3つのケースでの進め方~/「強み」×「デジタル」で 何歳からでも仕事に活かせる、DX的キャリアの作り方 Vol.3

個人が仕事を始めたり、企業内で仕事を効率化する「デジタル活用」~3つのケースでの進め方~

前回(第2回)は、ビジネスを構成する「4つの要素(①商品・サービス、②販売チャネルと顧客、③マーケティング、④オペレーション)」を、デジタル活用で強化する方法を紹介しました。
「ビジネスの4要素をデジタルで強化する」ことが重要であり「自分ごととして活用する」ことが必要です。

しかし多くの人が、「読めば分かるが行動の仕方が分からない」「何から手を付けたら良いか分からない」、と不安を感じるかもしれません。
そこで今回は、仕事を始めようとしている個人や、既に事業をしている個人事業主の方、予算を多くかけられない企業で働く社員の方でも、無理なく取り組めるデジタル活用の進め方を紹介します。
「できそうなところからやってみよう」という気持ちで読み進めてみてください。

デジタル活用が効果を発揮しやすい3つのケーススタディ

多くの読者に参考にして欲しいので、「仕事を始めようとしているけれどコストや人手が足りない」ケース、「個人で仕事をしているがやはりコストや人手が掛けられない」ケース、「企業で仕事をしているけれども予算が他の部門に多くいってしまい自分の仕事には足りない」ケースを対象として選びたいと思います。
これらのケースではデジタルの活用で予算不足や人手不足を補いやすいと考えられます。
以下の3つのケース別に考えてみましょう。

(1)個人が自分の得意分野を生かして新規ビジネスを始める
(2)個人事業をデジタルで発展させる
(3)企業の業務を低コストでデジタル化し効率化や事業拡大を行う

(1)個人が自分の得意分野を生かして新規ビジネスを始める

個人がデジタルを活用することで、低予算で趣味や特技をビジネスへと発展させることができます。
たとえば、手作りアクセサリーやイラストなどを販売する場合、InstagramやECサイトを活用することで全国の顧客にアプローチできます。
また、料理が得意な人は、まずはInstagramなどで得意料理の写真をアップし、フォロワーの反応を見ながらすこしずつレシピを公開。段階的に動画をアップしたりYouTubeを活用してオンライン料理教室を企画し、受講者を集めることも可能です。



文章やデザインのスキルを持つ人は、ココナラなどのクラウドソーシングサイトを利用することで、在宅で収益を得ることができます。
デジタル技術を取り入れることで、趣味の延長線上に新たな収益源を作り出すことができます。

さらに、スポーツジムに通いインストラクターができる力量を持つ人ならば、多額の設備投資をすることなく、広いエリアから集客できる「自宅でできるフィットネスレッスン」を提供するオンラインインストラクターも良い選択になります。
たとえば、ヨガやピラティス、筋トレなどの指導をZoomやInstagram Liveで行い、会員制サブスクリプションサービスとして運営する方法があります。
加えて、AIを活用したフォームチェックアプリを使うことで、より精度の高いパーソナライズ指導を提供することも有効でしょう。

(2)個人事業をデジタルで発展させる

一人で仕事をしている、かつ経費をさほど多く確保できない個人事業主にとって、デジタル活用で業務の効率化や新規顧客獲得などの業務拡大をすることがポイントとなります。
たとえば、飲食店を経営する個人事業主ならば、デジタル注文システムを導入することで、注文ミスを減らし、フロアの人件費を減らしながら業務をスムーズに進めることができます。
また、SNSマーケティングを利用して口コミを増やす工夫をすることで、顧客が増える可能性が高まります。
LINE公式アカウントを活用して顧客と直接やり取りすることで、リピーターを増やすことが可能となり、売上アップにつながります。

フリーランスの講師やコンサルタントは、オンライン予約システムを導入することで、講義やコンサルティングのタイムマネジメントの負担を減らし、効率的にスケジュールを組むことができます。

個人で運営するネイルサロンなどでは、電話予約や飛び込みの対応に時間を取られることが多く、スケジュール管理が課題となることが多いため、オンライン予約システムを導入することで、24時間自動で予約を受け付けられるようにすれば、スケジュール管理の利便性が向上します。


また、Instagramの「ショップ機能」や「リール動画」を活用し、施術の様子やデザインを発信することでデジタルマーケティングとなり、新規顧客の獲得にもつながります。

(3)企業の業務を低コストでデジタル化し効率化や事業拡大を行う

大企業のように多くの予算を割けない企業でも、デジタル活用により、競争力強化やコスト削減を実現できます。

たとえば企業の商品開発においてマーケットインで市場に求められている商品・サービスを企画するために、SNSや生成AIのWebリサーチ機能を使い、流行っている商品や自社商品への意見、競合商品の支持されている理由を探ることで効率的でスピード感のある商品企画をすることが可能です。

またマーケティング活動において、プロンプトを工夫することで生成AIに短時間で様々な広告プランを作成してもらい、それを使ったSNS広告を出したり、無料や少額で利用できるデジタルマーケティングツールを活用することで、ターゲット顧客層にピンポイントでアプローチし、費用対効果の高い宣伝ができます。

また、地方の食品メーカーがD2C(直販)のECサイトを立ち上げ、全国展開を実現するケースが考えられます。
従来の卸売依存から脱却することでいわゆる「買いたたき」を避けることができ、直接顧客と取引することで価格コントロール力や顧客ニーズを吸い上げた新商品開発も行いやすくなります。
自社で販売することになるのでデジタルマーケティングが必要ですが、社員を再教育したり詳しい人を雇うことで全国を相手に売上を伸ばすことに貢献するでしょう。

やや難しい、専門的な知識が必要にはなりますが、製造業の企業がIoT技術(センサーによる稼働状況監視とデータ分析)を導入することで、機械の稼働状況をリアルタイムで監視し、メンテナンスを最適化することができます。
このようなデジタルツールも近年はSaaS型で提供されており、安価になっていくと思われます。

まとめ

このように、デジタル技術を活用することで、個人が趣味や特技を生かしてビジネスを始める場合、個人事業主が業務を効率化する場合、企業が競争力を強化する場合、それぞれに適したアプローチが存在します。
SNSや生成AI、ECプラットフォーム、動画サイトなどの無料または低コストのツールが多く提供されており、小さく始めながら段階的にデジタル活用を進めることができます。


初めから大規模な投資を行う必要はありません。スモールスタートで始め、成功事例を積み上げながら拡大していくことで、デジタル活用の恩恵を受けることができます。


今日、たった今から、自分の得意なことで収益を上げている人はいないか事例を探しはじめてみる。
業務に活かせそうなデジタルツールを探してみる。
デジタルサービスやSNSの無料アカウントを作ってみる、などの小さくても具体的な行動を始めてみませんか。


新しいことを始めるときは緊張してしまいますが、目的をもってネット検索してみると驚くほど多くの、そして様々なビジネスを立ち上げて頑張っている人が見つかります。
そういった人が集まるコミュニティに参加してみるのも、手段と勇気がもらえ、相談相手も見つかる良い方法です。
自分にできることを一つずつ始めることで、新たな可能性を見出し、デジタルの力で自分のビジネスやキャリアを広げていきましょう。

<vol.4に続く>

この記事の著者

DXビジネスアンバサダー

岸 晶子

きし あきこ

この記事の著者

都市銀行勤務後、出産を経て専業主婦に。3人の子育てが一段落した際にデジタルリスキリングを実施。その経験を活かしDXビジネス教育に関するコラム記事や大学向け教材作成などを手がける。