インプットから具体的なアウトプットへ ー ITパスポート受験の決意から合格まで
身に付けた知識をアウトプットに繋げたいと考えながら、DXに関するビジネス書を探しては読んでいたある日、私は書店で『FACTFULNESS』という厚い本を見つけました。
内容としては、たとえば、「人口減少問題、地域間の貧富の差、世界各国の経済成長の状況など、世間で一般的に真実のように言われていることはイメージが先行していて正しくないことも多い。実際に起きていることを正しいデータや統計情報を基に、しっかり見て、人づてではなく自分自身の理解を深めることが必要である」、ということを力説するものでした。
この本が、私の意識を大きく変えてくれる一冊となりました。
これまで自分がニュースや雑誌などの記事で読んで理解したと思っていた内容が、必ずしも正しくないこと、自分の考えではなく世間で言われていることを鵜呑みにしていたことに気づかされました。
私は、それまでもビジネス本やDXに関する本を真面目に読んでいるつもりでいました。実際知識も少しずつ身に付いてはいましたが、『FACTFULNESS』に感銘を受けて、自分の考え方、感じ方が変わったことを実感しました。
「データを使って世の中で起きていることを客観的に見る」ことが重要であること、そのためには表面的な理解で済ませるのでなく、「実際に起こっていることを理解するために探求すること」が必要であること、また事実を捉えるような本質的な学びが必要であることが分かりました。
このことに気づいて、私はより真剣に、自分の現状とやるべきことを、自分ごととしてとらえる努力をしなければならないと思いました。
その後、私は、本をより丁寧に、深く理解するよう意識しながら読むように努力しました。
「なぜ、このデジタル技術が世に生まれたのか」
「今までの技術と何が違うのか」
「なぜ、DXが日本で進まないのか」
「なぜ、日本の経営者はデジタルやデータの理解が低い人が多いのか。」
「なぜ、日本の大企業では、デジタル化もDXも進まないのか」
「なぜ、Amazonは顧客価値を大事にするのか」
「なぜ、サブスクリプションビジネス広がったのか」
などの問いをもちながら、ページをめくるようにしたのです。
このように意識しながら本を読むと、自分の考えと同じ主張をしている本にはもちろん共感を覚えますし、違う視点で主張する本もリスペクトできるようになり、世界や日本でのデジタル、データ、ビジネスモデルをより深く理解できるようになってきました。
知識を仕事につなげるために必要なアウトプットの重要性に気づく
この頃、本を読み知識を吸収し、自分の意識が少しずつ前向きに変わっていく中で、知識を自分のものにするには、インプットだけでなくアウトプットが必要ではないかと再度私は考え始めました。
と同時に、どうすれば知識を身に付けた状態から仕事につなげることができるのか、考えていなかったことに気づきました。
それまで、久しぶりの勉強と目新しいジャンルの知識が面白く、新しい本と出合うことに夢中で、「仕事をしたい」という当初の目的を忘れていたのです。
考えてみれば、50半ばで職歴がない人間を雇ってくれる企業はないでしょう。
それなら、個人事業主として仕事をしていくしか道はないはずです。
しかし「努力して書籍から知識を習得しました」、と言うだけで仕事を得られるわけがありません。
ではどうすればいいのでしょうか?
ここで私は自分の娘のことを思い出しました。
彼女はSEとして働いていますが、元々文系で理数系は大の苦手だったにもかかわらず、数年間の独学により、情報処理技術者試験の「基本情報技術者試験」に合格していました。
そして現在はさらに上の「応用情報技術者試験」に挑戦中だったのです。
わが娘ながら、常々彼女の努力を尊敬の目で見ていた私は、自分も実力の目安となるような試験を受けてみよう、と思いついたのです。
客観的に実力が分かる資格試験を受けよう
そこでまずは手始めに情報処理技術者試験の「ITパスポート試験」の合格を、一つ目のマイルストンに定めました。
「ITパスポート試験」の準備には4か月ほどかけたと記憶しています。
当時一番人気だったテキストを買い、出題率の高い項目は本文を読みつつ、あとは付録でついていた過去数年分の試験問題をスマホにダウンロードしてひたすら解く、というやり方です。ただひたすら本文を読んでもなかなか覚えられなかったので、この方法が一番効率が良かったと思います。
全体の7割、各項目を均等に取れれば合格、ということを念頭に、最短で合格できるように作戦を立てたわけです。
後で知ったのですが、この試験は情報処理技術者試験の中でも非デジタル向けなのもあってか人気があるようで、受験の申し込みサイトも混んでいましたし、当日会場にも老若男女大勢の受験生がいました。(と言っても私より年上に見える人は数人でしたが)
久しぶりに受験生となった私はかなり緊張したのですが、予め家のPCで、本番と同じ環境に慣れておいたこともあり、何とか1回で合格することができたのでした。
DXビジネスアンバサダー
岸 晶子
きし あきこ
都市銀行勤務後、出産を経て専業主婦に。3人の子育てが一段落した際にデジタルリスキリングを実施。その経験を活かしDXビジネス教育に関するコラム記事や大学向け教材作成などを手がける。