デジタルを味方につけて「自分ならではの価値」を創ろう/「強み」×「デジタル」で 何歳からでも仕事に活かせる、DX的キャリアの作り方 Vol.8 (最終回)

デジタルを味方につけて「自分ならではの価値」を創ろう

この連載では、デジタル活用によって個人や企業がどのように仕事を効率化し、新たな価値を創出できるかについて、7回にわたって紹介してきました。

本連載の冒頭で以下のことを説明しました。
・デジタル化の進展を好機と捉え、個人としてスキルを磨くことが重要。
・データ分析やビジネス発想力を身につけることで、他者との差別化ができる。
・他者が手を付けていない分野で自分の強みを活かせば、競争のない市場を切り開ける。

7回までお読みいただき、読者の皆さんの中で、「自分の得意分野」を棚卸し、デジタルで価値を高める意識は高まったでしょうか。
最終回となる今回は、これまでの内容を振り返るとともに、「これからの時代に求められる“自分ならではの価値の創造”とは何か」について考えたいと思います。

1.これまでのまとめ

本連載では、まず第1回で、個人がデジタルスキルを身につけ、自分の強みを新たなキャリアに変えていく「人材のブルーオーシャン戦略」という考え方を提示しました。

続く第2回では、ビジネスを構成する4つの要素(①商品・サービス、②販売チャネルと顧客、③マーケティング、④オペレーション)に注目し、それぞれをデジタルで強化する視点をご紹介。
第3回では、個人がビジネスを始めたり、企業内で効率化を進めたりする際に直面する「時間・人手・予算」の制約を、デジタル活用によって乗り越える具体的な手法をケーススタディで解説しました。
連載後半の第4回から第7回は、デジタルツールを4つのカテゴリ(①SNS、②オンライン会議・情報共有ツール、③オンラインプラットフォーム、④生成AI)に分け、それぞれの特性と実践例を通じて、「デジタルツール」と「使い方の工夫」を探ってきました。

コラムを通じてお伝えしてきたのは、「初めから大きな投資をしなくても、小さく始めることで確実にビジネスや働き方を変えられる」ということです。そしてもう一つ、「デジタルを活用することで、誰でも自分や自分の能力を増強できる」ということです。

2. これからの時代に求められる「自分ならではの強さ」とは?

SNSや生成AIの登場によって、誰もが発信者・創作者となれる時代になりました。
かつてはプロフェッショナルだけが担っていた「デザイン」「コピーライティング」「動画編集」なども、デジタルツールの力を借りて誰でも挑戦できるようになっています。
つまり、デジタルスキルよりも大事なのは「自分らしさ」「発信する意欲」「何を届けたいか」という意志と視点です。

意志と視点

たとえば、地域で採れた野菜を販売する人なら、単に「野菜の鮮度や味」だけではなく、「どんな想いで育てたのか」「どんな人に届けたいのか」「その食材でどんな料理を作っているか」などストーリーを語ることが、選ばれる理由になります。

この「ストーリー」こそが、他者との差別化となり、自分自身のブランド価値を高めるもとになります。
デジタルツールはその「ストーリー」を表現し伝える手段であり、可視化・共有し、共感を生み出す手段に過ぎません。
だからこそ、テクノロジーに振り回されるのではなく、「自分は誰に、何を届けたいのか」を考えることが、これからの時代の出発点になるのです。

3.まず「やってみること」が最大の差別化になる

「自分にできるだろうか?」「まだ早いのでは?」と不安に思う方も多いと思います。
ですが、私たちは今、コストをあまりかけず、情報発信も販路拡大も、AIによる支援もすべて無料または低価格で実現できる“前例のない時代”に生きています。

オンライン講座を立ち上げるのも、ハンドメイド作品を販売するのも、生成AIで商品案をつくるのも、やってみようと思えば今すぐできる環境が整っています。
必要なのは完璧な準備ではなく、「とりあえず試してみる」姿勢です。

実際、多くの成功事例に共通するのは、「小さく試す」→「反応を見て改善する」→「また試す」という繰り返しです。
トライアルの中で自分のスタイルが磨かれ、顧客の声を通じて方向性が定まり、少しずつ価値が形になっていくのです。

まずは自分の得意なこと・興味のあることを一つ選び、小さく一歩を踏み出してみてください。
たとえば、SNSで発信を始める、無料ツールを使って試作品を作る、身近な人にサービスを提供してみる―どんな一歩でも構いません。
始めてみることで初めて、次にやるべきことが見えてきます。

4.目的に応じて適切なツールを使う

最後に、この連載を通して私が最も伝えたかったことは、「テクノロジーは“自分ならではの価値”を届けるための手段である」という点です。生成AIがどれだけ高性能になっても、それをどう使うかは人間の問いや意志にかかっています。

生成AI


だからこそ、「自分は誰に、何を届けたいのか」という問いを常に持ち続けること。
それが、テクノロジーに振り回されず、味方につける方法です。
これからの時代、誰もが情報発信者であり、価値創造者であり、学び手であり、提供者です。
デジタル活用によって、一人ひとりが情報を受け取る側から自分の「らしさ」を発信し、磨き、広げていく、そんな時代が始まっているのです。

5.今日からトライしてほしいこと

ここからは、読者の皆さん自身が行動を起こす番です。
ぜひ以下のステップを参考に、今日から一歩を踏み出してみてください。

① 自分の強みや得意なことを棚卸しする  

趣味や仕事で培った経験、周囲からよく頼られること、夢中になれる活動などを
書き出してみてください。

分析中の女性

② その強みを強化・表現するためのデジタルツールを探す

  無料で使えるSNS、ECサイト、オンライン予約ツール、生成AIなど、今は誰でも 
気軽に始められる時代です。

③ 最初から完璧を求めず小さく始める

  発信してみる、試作品をつくってみる、近しい人にサービスを提供してみる。どんな
形でも構いません。

④ 周囲の反応を観察し、改善する

  反応の良かった点、うまく伝わらなかった点を振り返ることが、次の行動へのヒントになります。

⑤ 定期的に、当初の目的や自分の意図に合っているかを確認する

  最初の考えからズレていないか、もっと良い方向がないかを見直しながら、柔軟に軌道修正していく

デジタル活用に正解はありません。
大事なのは、動いてみること、続けてみること、そして自分のやり方を少しずつ確立していくことです。この連載がそのきっかけになれば幸いです。

ステップアップ

最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の連載では、日常に浸透しているデジタルビジネス事例をテーマにする予定です。
しばしお待ちいただければと思います。

この記事の著者

DXビジネスアンバサダー

岸 晶子

きし あきこ

この記事の著者

都市銀行勤務後、出産を経て専業主婦に。3人の子育てが一段落した際にデジタルリスキリングを実施。その経験を活かしDXビジネス教育に関するコラム記事や大学向け教材作成などを手がける。