デジタルツールを使った業務効率化とビジネス拡大~④生成AIの活用と新たな価値創出~/「強み」×「デジタル」で 何歳からでも仕事に活かせる、DX的キャリアの作り方 Vol.7

デジタルツールを使った業務効率化とビジネス拡大
~④生成AIの活用と新たな価値創出~

この連載では、SNSやオンライン会議ツール、情報共有ツール、プラットフォームなどを通じて、個人や企業がデジタルを活用し、自分の強みを伸ばしたり、業務を効率化する方法を紹介してきました。
第7回では「生成AI」に焦点を当て、その特性を踏まえながら、個人・個人事業主・企業の視点で、実践的な活用法を紹介します。

広がる生成AIの可能性

生成AIは他のデジタルツールと異なり、「効率化」だけではなく、「創造性」という領域までカバーしています。
テキスト生成、画像生成、要約、翻訳、表作成、アイデア出しなど、使い方は多岐にわたり、しかも多くは高性能でも基本ツールは無料です。

生成AIを活用したソリューション

これまで「作る人」や「書ける人」にしかできなかった領域に誰でも手が届くようになりました。
このため「情報」を加工して新しい情報商品などを作り、それを消費者に提供できます。

(1)商品・サービスへの活用例

生成AIは、テキスト、画像、音声、表など多様なコンテンツを生成できるため、商品やサービスの企画、開発、販売、改善の全領域において力を発揮します。
従来はデザイナーなど専門職の領域であった事業分野においても、生成AIを使うことで、個人や小規模事業者でも商品のパッケージデザインや新しい商品アイデアの発案などが可能になります。

A) 個人としてのビジネス活用事例
例えば、自家製のジャムや味噌などを製造・販売している個人が、新しいフレーバーやパッケージのアイデアを検討する際、生成AIに
「季節の果物を使ったジャムの新商品アイデアを5つ挙げて」
「高齢者向けに健康志向をアピールする味噌のキャッチコピー案」
といった形で相談することで、短時間で多様な切り口のアイデアを得ることができます。

さらに商品開発にあたり、顧客レビューやSNSコメントを生成AIに収集、要約、分析させることで、「どういった点が好評か」「どのような改善ニーズがあるか」といった消費者の声を把握、商品に反映することができます。

ジャム

B) 個人事業主としてのビジネス活用

ネイルサロンやカウンセリング業などのサービス業を営む個人事業主が、新メニューの開発や既存サービスの見直しを行う際にも生成AIは有効です。
例えば、
「30代女性に癒しを提供する新しいサービスメニューを3つ考えて」
「既存顧客のレビューから満足度の高かった特徴を抽出し、改善ポイントも併記して要約して」
といった問いかけに対して、生成AIは素早く良いアイデアを提供してくれます。

ネイルサロン


競合他社のサービス情報をもとに、生成AIに差別化のポイントやブランディングの軸を提案してもらえば、コンサルタントなどの専門家に頼らずともサービス改善が可能になるでしょう。
これにより、限られたリソースの中でも、試行錯誤を繰り返しながら商品・サービスを磨き上げていくサイクルを素早く回すことができるようになります。

(2) 販売チャネル・顧客への活用例

生成AIは、顧客ごとのニーズに合わせたコンテンツ生成や販促資料の最適化にも活用できます。
それまで特定の人にしかできなかったマーケティング施策が、短時間で体系化され、ノウハウを共有出来たり、自動化されるなどのメリットを享受できます。 

A) 個人としてのビジネス活用事例
たとえば焼き菓子を販売している個人が、イベント限定商品を告知するためにSNS投稿を作成したい場合、「母の日向けの焼き菓子を紹介する投稿文をInstagram用に200文字で」と指示すれば、生成AIが短時間で提案してくれます。
また、リピーターへのメッセージ配信や、LINE公式アカウントを活用したキャンペーン告知文、購入履歴に基づくおすすめ商品の紹介なども、生成AIを使ってパーソナライズすることで、顧客接点の質が向上します。
商品レビューを分析させて売れ筋傾向や評価の高いポイントを整理し、次の販売戦略や商品改善につなげことも可能でしょう。

B) 企業としてのビジネス活用事例
企業が運営するECサイトでは、生成AIを活用して商品ページごとに異なるキャッチコピーを作成したり、顧客レビューを要約して掲載することで、商品理解と購買意欲を高めることができるでしょう。
また、メールマーケティングにおいても、「30代女性・健康志向の顧客向けに、季節限定スムージーの販促メールを作成」といった形で、セグメントごとに最適化された文案を瞬時に生成することができます。
SNS広告やバナー制作でも、ターゲット別に複数パターンの文案を生成することで、配信効率とクリック率の最適化が図れます。
加えて、チャットボットやFAQの自動応答精度を向上させるためのナレッジ生成にも、生成AIは役立ちます。
販促から顧客対応に至るまでの業務が一貫して効率化され、より高品質な顧客体験の提供が可能になります。

チャットボット

(3) マーケティングへの活用例

生成AIは、見込み客獲得から既存顧客の維持まで、あらゆるマーケティングフェーズで活用できます。
顧客ごとの行動履歴をもとに最適なアプローチを導き出し、商品やサービスの認知から購買、再利用に至るまでの顧客ジャーニー全体において、一貫性のある設計をすることができます。
また、過去のキャンペーンデータやSNSの反応分析を通じて、次の施策をより正確にシミュレーション・改善することもできるでしょう。


A) 個人事業主としてのビジネス活用事例

個人経営のカフェオーナーなら、月替わりの商品やイベントを紹介するためのSNS投稿文やメールマガジンを生成AIで作成することができます。
「春限定スイーツの紹介文を親しみやすく」「常連顧客向けのイベント案内を丁寧な口調で」といった具体的なプロンプトを入力することで、より方向性に合った発信が可能となります。
また、イベント後にアンケートを実施し、その結果を生成AIで要約・分析することで、改善点の把握や次回イベントの立案がスムーズに行えます。

インスタグラムの投稿


B) 企業としての活用事例
中堅規模のメーカーや小売企業では、生成AIを用いて広告バナー文案やキャンペーンページのコピーを複数パターン生成し、ABテストの素材として活用することができるでしょう。
また、過去の顧客アンケートや問い合わせ履歴から、製品に対する満足・不満ポイントを要約し、商品企画部門やマーケティング部門にとって有益なインサイトを導き出すといった活用法もあるでしょう。
さらに、生成AIが作成したシナリオをもとに、顧客セグメントごとに異なるストーリー設計のメールマーケティングを構築するなど、従来はリソース面で難しかった施策も実現可能になります。
生成AIは、企業のマーケティング活動の質と速度を同時に引き上げる可能性があります。

(4) オペレーションへの活用例

生成AIは、文章作成や要約だけでなく、業務手順書、FAQ、報告書などの定型文書の作成・整理にも使えます。
従来は時間と労力を要した文書作成作業が、生成AIの導入によって効率化され、品質の均一化や更新のしやすさといった副次的な効果も得られます。

A) 個人事業主としてのビジネス活用
翻訳業や士業など、一人で多くの顧客案件を抱える職種において、過去の案件をもとに提案書や対応文書を自動で構成できるようになることで、業務スピードと高品質の両立が可能になります。
また、FAQデータベースの作成や更新も生成AIで効率化できる可能性があります。

B) 企業としてのビジネス活用
例えば社員やスタッフ向けの業務マニュアルを作成する場合、口頭説明や既存の断片的なメモをもとに、生成AIが体系的な手順書を作成することで、知識の属人化を防ぎ、標準化された業務フローを整えることができます。
また、クレーム対応や問い合わせに関する定型メール文のひな型を自動生成することで、応答のスピードと品質を両立させることも可能です。

報告書

さらに、日々の業務報告や週次レポートなども、生成AIに入力内容をもとに要約・構成してもらえば、報告業務の負担が大幅に軽減されます。
これにより、現場担当者は報告作業にかける時間を削減し、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。


まとめ

生成AIは、従来のデジタルツールが担ってきた「効率化」「共有」「販売支援」に加え、「創造の民主化」という新たな地平を切り拓いています。
しかし、あくまでも道具であり、主役は“人”です。
自分の強みや経験を振り返り、それにデジタルを掛け合わせることです。
その延長線上に、生成AIの活用が位置づけられます。まずは、ブログの叩き台をつくる、資料構成を提案させてみる、といった小さな一歩から始めてみましょう。

<vol.8に続く>

この記事の著者

DXビジネスアンバサダー

岸 晶子

きし あきこ

この記事の著者

都市銀行勤務後、出産を経て専業主婦に。3人の子育てが一段落した際にデジタルリスキリングを実施。その経験を活かしDXビジネス教育に関するコラム記事や大学向け教材作成などを手がける。