デジタルツールを使った業務効率化とビジネス拡大~③オンラインプラットフォーム~/「強み」×「デジタル」で 何歳からでも仕事に活かせる、DX的キャリアの作り方 Vol.6

デジタルツールを使った業務効率化とビジネス拡大
~③オンラインプラットフォーム~

この連載では、デジタル活用による個人起業や企業内業務の効率化について紹介しています。
これまでの連載では、自分の強みを活かしたデジタル活用の基本から始まり、ビジネスの4要素への応用、さらにSNSやオンライン会議ツールといった具体的なデジタルツールの使い方までを紹介してきました。

今回は、そうした流れを踏まえ、商品・サービス提供や販路拡大、業務の効率化に幅広く使える「オンラインプラットフォーム」について取り上げます。

業務効率化、販路拡大を支えるデジタルの土台

オンラインプラットフォームとは、商品やサービス、スキルなどを顧客に提供する“場”となるWeb上の仕組みです。
代表的なものには、サブスクリプションサービス(定額使いたい放題サービス等)、クラウドソーシングサイト(動画作成、スキル販売など)、ECサイト(物販)、などがあり、無料または安価に使い始めることができるのが特徴です。
オンラインプラットフォームを活用すれば、ネットを通じて顧客を拡大することができるので、それまで地元や既存の顧客にしか届かなかった商品やサービスを、日本全国あるいは海外にまで広げることが可能となります。

当連載の第3回では、オンラインプラットフォームの活用による、個人や個人事業主を中心に活用事例を紹介したので、今回は比較的小規模の企業を想定した農業、観光業、サービス業などのプラットフォームを活用した事例を紹介します。

(1)商品・サービスへの活用例

オンラインプラットフォームは、出店している多くの会社の商品が一か所に揃っており、価格や商品スペックが比較しやすく、商品調査に便利です。
このため売れ筋商品の把握や購入者の商品評価、良い点・悪い点などの声を収集しやすいなどの利点があります。

A) 農産物販売会社のビジネス活用事例
農業系オンライン直販プラットフォームを活用し、規格外野菜を消費者向けに販売するために類似事例の購入者の意見を参考にしながら、規格外であることをあえて生かした、例えば「農家応援セット」や「フードロス解消貢献ポイント付与」などの付加価値の高い商品、サービス開発を行うことができます。これにより、通常は高く売れない規格外野菜でも差別化を図れるようにできれば、商品バリエーション拡大と顧客満足の向上につなげられるでしょう。

色とりどりの野菜

B) 観光サービス業のビジネス活用事例
温泉旅館や農家民宿が「Airbnb」や「アソビュー!(工場見学など体験型プラットフォーム)」に登録し、宿泊や体験プログラム(農業体験・季節イベント)をセットで提供することを考えてみましょう。例えば畑つき古民家に宿泊し畑の野菜で郷土料理を作る料理教室などをセットにすれば、付加価値の高いサービスを提供できます。宿泊単体の場合よりも魅力が増し、単価アップやリピーターを獲得できるようになるでしょう。

Airbnbスクリーンショット

参照:Airbnb https://www.airbnb.jp/

アソビュースクリーンショット

参照:アソビュー https://www.asoview.com/

(2) 販売チャネル・顧客への活用例

オンラインプラットフォームを活用することで、広範囲の顧客にリーチすることができる販売チャネルを構築できます。新規顧客を増やしたり、プラットフォームから提供される購買データなど数多くの分析用データを活用し、顧客ロイヤルティプログラムを導入し顧客との関係を深めることが可能になります。 

A) 青果業者のビジネス活用事例
青果業者が「食べチョク」などの農業型マッチングECを利用し、飲食店や学校給食施設への販売をオンラインで完結すれば、訪問営業や電話注文の効率化が図られ、全国への販路拡大と業務効率化の両立が実現できるでしょう。

食べチョクスクリーンショット

参照:食べチョク https://www.tabechoku.com/

B) 美容サロンのビジネス活用事例
美容サロンが「ホットペッパービューティー」などの美容系プラットフォームを活用して、オンライン予約・クーポン配布・レビュー管理を行えば、個別にそれぞれの施策を行わず、同じシステムで一元化できることで顧客の来店履歴や好みのデータから再来店を促進する仕組みを構築しやすくなります。

(3) マーケティングへの活用例

オンラインプラットフォームを利用することで、マーケティング活動における「集客」「関係構築」「再購入促進」などを低コストで実現することが可能になります。
特に、顧客との直接的な接点を持てるツール「LINE公式アカウント」や「KARTE(Webサイト訪問者の行動データに基づいて、ポップアップやメール、LINEなどで個々にアピールできるプラットフォーム)」などと組み合わせることで、顧客の行動データを活用した精度の高いマーケティング施策が実施できます。

KARTEスクリーンショット

参照:KARTE https://karte.io/


A) 有機農家のビジネス活用事例
有機農産物を販売する農家が「Instagram」や「note」に畑の様子やこだわりの栽培方法など消費者に訴求できる写真やコンテンツ記事などを投稿し、「食べチョク」などの農業系マッチングECサイトに誘導し売り上げにつなげることができます。


B) サービス業のビジネス活用事例
リラクゼーションサロンが「LINE公式アカウント」と「STORES」の予約システムを連携すれば、予約日前のリマインドや次回予約の提案、季節キャンペーンの通知などを自動配信できるようになります。
顧客の施術メニューや購買履歴も管理できるため、個別最適化された接客が可能になり、顧客満足度とリピート率が向上するでしょう。

(4) オペレーションへの活用例

オンラインプラットフォームを利用することで、従来アナログで管理していた業務(予約管理、在庫管理、スタッフの勤怠、売上分析など)を自動化・一元化することが可能になります。
特に、少人数で運営する農業法人やサービス業においては、こうした効率化が日々の業務負担を軽減し、ミスの削減や対応スピードの向上にも貢献します。

A) 農業経営のビジネス活用事例
複数の畑地を持つ農業法人が農作業管理プラットフォームを利用すれば、畑地別の作業記録、肥料・農薬記録、収穫量データを一元管理できるようになります。
スマホ対応できれば現場で即時入力が可能となり、作業の効率化とトレーサビリティ対応を両立することができるでしょう。

農業のDX化

B) サービス業のビジネス活用事例
飲食チェーンがクラウド型POSシステムを導入すれば、売上分析・スタッフ管理・在庫管理をリアルタイムで可視化することができるようになるでしょう。
週次、曜日ごとなどの業績分析やシフト最適化が容易となり、マネジメントの質が向上するでしょう。

まとめ

オンラインプラットフォームは、企業規模に関わらず導入可能な柔軟性と拡張性を備えています。
特に農業やサービス業にとっては、限られた人員と予算の中で、業務の自動化・効率化、販路の拡大、新規顧客の獲得といった成果を得られるようになるでしょう。
これらは社内の部分最適からスタートし、スモールステップでの導入を繰り返すことで、徐々にDXにつなげることができます。
経営層だけでなく、現場の担当者が自発的に使いたくなるようなツール選定が、成功の鍵となるでしょう。

<vol.7に続く>

この記事の著者

DXビジネスアンバサダー

岸 晶子

きし あきこ

この記事の著者

都市銀行勤務後、出産を経て専業主婦に。3人の子育てが一段落した際にデジタルリスキリングを実施。その経験を活かしDXビジネス教育に関するコラム記事や大学向け教材作成などを手がける。