デジタルツールを使った業務効率化とビジネス拡大 ~ ①SNS活用~/「強み」×「デジタル」で 何歳からでも仕事に活かせる、DX的キャリアの作り方 Vol.4

デジタルツールを使った業務効率化とビジネス拡大 ~ ①SNS活用~

この連載では、前回までデジタル活用による個人起業や企業内業務の効率化を考えてきました。
第1回では自分の強みをデジタルで強化し、新たなキャリアを切り拓く重要性を、第2回では、ビジネスの4要素(商品・サービス、販売チャネルと顧客、マーケティング、オペレーション)におけるデジタル活用の意義を解説し、第3回では、個人の新規ビジネス立ち上げや個人事業主の既存事業の発展、企業内の業務効率化に向けた具体的なデジタル活用の方法を紹介しました。 
第4回からは連載の後半として、利用するデジタルツールについて考えてみます。

デジタルツールの4分類

この連載ではデジタルツールを「無料または少額で利用できる」「プログラミングなどの専門知識なしで利用できるもの」と定義し、内容によって4つに分類して、それぞれの活用方法を紹介します。

①SNS
②オンライン会議、情報共有ツール
③プラットフォーム(商品やサービスを顧客に提供する場所や機能)
④生成AI

上記は「利用の手軽さ、利用される頻度、ツールの利用者の数」などで私が付けた順番になっており、今回は①SNSを取り上げます。

インターネット環境が普及し、スマートフォンの利用者が増加した現代において、SNSは、単なるコミュニケーションツールではなく、ビジネスツールとして使うことができます。
Instagram、X(旧Twitter)、Facebook、TikTok、LinkedInなど国内外のさまざまなSNSを通じて情報を発信し、他者とつながることでビジネスに活かすことができます。

そこでSNSの活用方法を「商品・サービス」「販売チャネルと顧客」「マーケティング」「オペレーション」の4つの要素ごとに個人・個人事業主・企業の視点から、使用例を紹介します。

(1)商品・サービス―ユーザーの声を生かす―

SNSではさまざまなユーザーの声を客先に出向くことなく効率的に聴くことができます。これを製品やサービスの開発に活かすことで、市場ニーズに合ったアイデアや改善点を迅速に取り込むことができます。

A)個人事業主としてのビジネス活用~試作品のモニター募集~
個人事業主が新しいサービスや製品を作る際、試作品のモニターをSNSで募集し、ユーザーの反応を直接確認する手法が用いられます。
たとえば、アロマキャンドルを製造・販売している個人事業主がInstagramのストーリーズやリールを活用し、「新作キャンドルの香りを試してみたいモニター募集」と告知。
応募者には完成前の試作品を送り、使用感や感想などをフィードバックしてもらう仕組みを作る、などです。
モニターのリアルな意見から、「香りが強すぎる」「サイズが大きすぎて部屋に合わない」といった改善点が見つかり、正式リリース前に製品の仕様を最適化することができるでしょう。
SNSの顧客リーチ力を活用することで、地理的制約を受けにくく、幅広い層から率直な意見が得られるメリットがあります。

B)企業としてのビジネス活用~SNSリサーチを活用した新商品開発~
企業での活動ではSNS上で消費者行動やトレンドを分析し、市場をリサーチするケースがあります。
たとえば、食品メーカーがX(旧Twitter)やFacebookで定期的に行われる「トレンド」や「話題のハッシュタグ」を分析。
ユーザーがどのような食材や調理法に関心を持っているかを調べ、それをもとに期間限定の新商品として“スパイス効かせた時短カレー”を企画するなどです。
発売前から試作段階の写真や動画をInstagramで公開し、ターゲット層である働く主婦や一人暮らしのビジネスパーソンを中心にアンケートを実施。
商品化してほしい味のリクエストを募り、それを反映した結果、発売開始時から大きな反響を呼ぶヒット商品へと成長する可能性があります。
SNSでの調査は、コストを抑えながらリアルタイムで消費者の声を集める手段として有効です。

(2)販売チャネルと顧客―販売チャネルや顧客基盤を広げる―

SNSは販売チャネルの開拓や顧客基盤の拡大にも役立ちます。従来は実店舗やECサイトが主な販路だったものが、SNSを介した販売が可能になり、商品やサービスをより広い層に直接届けやすくなりました。

A)個人としてのビジネス活用~SNS経由での直接販売~
趣味でイラストを描いている個人が、PinterestやInstagramで作品を公開していると、それが多くのユーザーの目に留まり、「自分の家の壁に飾るためにイラストを描いてほしい」「プレゼント用のオリジナルアートが欲しい」という依頼がDM経由で多数舞い込むようになることがあります。
そこからさらにSkebやBOOTHといったプラットフォームでの、イラストのオーダー販売に繋げられる可能性もあります。
趣味だったイラストが立派な収益源となり、依頼者とのコミュニケーションはSNS上のメッセージやコメントで進行するため、有料でシステムを構築する必要もありません。
個人クリエイターにとって、SNSを通じた直接販売は、低コストで効率良く顧客を獲得できる方法になりえます。

B)企業としてのビジネス活用~LINE公式アカウントでリピーターを増やす~
規模の小さいコスメブランドがLINE公式アカウントを開設し、製品情報やキャンペーン情報を配信するとします。
従来のテレビCMや雑誌広告などの集客方法では費用が掛かりすぎます。
若年層を含む幅広いユーザーと直接つながる手段として、LINEは少ない予算でも高い効果を上げる可能性があります。
次回購入時に使えるクーポンや、新商品の先行発売情報をLINE限定で発信。
「LINEの通知を見てすぐにECサイトで購入する」という流れを作り、リピーター率を向上させます。
また、ユーザーからの問い合わせにもチャット機能を使って対応できるため、顧客満足度の向上にも繋がります。

(3)マーケティング―顧客アプローチ手段を増やす―

SNSは顧客や見込み顧客への認知拡大、興味喚起、購買意欲の醸成など、マーケティング手段としても有用です。
広告配信やキャンペーン、インフルエンサーとのコラボなど、多岐にわたるアプローチが考えられます。

A)個人事業主~TikTokでのバズりを活用~
TikTokで人気の動画撮影方法にASMR動画というものがあります。
ASMR動画とは、視覚や聴覚により訴える撮影方法のことです。専門のカメラとマイクを使い、たとえば焚火の炎がメラメラ燃える映像、ザクザク、パリパリなどの咀嚼音などが該当します。
ネイルサロンを経営する個人事業主がネイル施術動画に利用する場合は、リアルな音やカラフルなジェルが混ざり合う映像が多くのユーザーの興味を引く可能性があります。
フォロワー限定のキャンペーンコードを配布して来店を促せば、新規顧客を増やせる可能性があります。

B)企業~インフルエンサーとのコラボで認知度向上~
中堅スポーツウェアメーカーが、Instagramで活躍するマイクロインフルエンサー(フォロワー数3〜5万人規模)複数名とタイアップ企画を実施するとします。インフルエンサーの日常のトレーニング風景やコーディネート写真にメーカーのアイテムを取り入れてもらい、商品タグをつけて投稿。さらにライブ配信で商品の特徴や機能性についての紹介を行い、リアルタイムでユーザーからの質問に答えることで、インタラクティブな商品プロモーションが可能となるでしょう。
インフルエンサーのフォロワーは熱心なファンが多く、「この人が使っているなら、自分も試してみたい」と思う傾向があります。そのため、広告感が全面に押し出されず、信頼感をもって商品をアピールできる点が、従来のマスメディア広告との大きな違いです。SNS経由のサイト訪問者数とECでの購入数が伸び、ブランド認知度が向上するでしょう。

(4)オペレーション―作業の効率化や顧客満足度の向上―

SNSは情報発信だけでなく、オペレーションにも応用できます。
問い合わせの対応や情報収集などの機能を利用することで、作業の効率化や顧客満足度の向上が期待できます。

A)個人事業主~SNSでの予約・問い合わせ対応の自動化~
カウンセリングサービスを提供する個人事業主が、InstagramのDMやFacebookメッセンジャーにチャットボットを導入し、簡単な問い合わせへの自動返信を設定します。
営業時間外であっても、よくある質問(料金、場所、提供メニュー)への回答がすぐに返ってくるため、ユーザーにとってもストレスが少ないコミュニケーションが実現します。
さらに、「詳しい相談内容をこちらのフォームに入力してください」といった誘導も自動化することで、事業主が忙しい時間帯や休暇中でも顧客との初期コミュニケーションが途切れず、ユーザーの満足度が高まり、問い合わせから予約までの転換率もアップすると思われます。

B)企業~カスタマーサポートの効率化~
ECサイトを運営する企業が、X(旧Twitter)で顧客サポート用の公式アカウントを開設し、FAQ(よくある質問)対応を自動化するとします。
購入者が商品に関する質問を投稿すると、AIチャットボットが過去のFAQデータベースから該当する回答をリプライする仕組みです。
さらに詳細な対応が必要な場合は、担当スタッフに自動的にメールされるよう設定も可能です。
こうした仕組みならば、顧客からのよくある質問や基本的なトラブルシューティングには即時対応ができるようになり、サポート担当者の負荷を大幅に削減。
スタッフは複雑なケースや個別対応に集中できるようになり、全体としてカスタマーサービスの質が向上します。
SNSを運営全体のインフラとして取り込むことで、ユーザー体験を損なわずに効率化を図ることが可能になるでしょう。

まとめ

SNSは、個人から企業まで、誰もが低コストかつダイレクトに情報発信できるツールであり、ビジネス活動の様々なシーンで活用できます。
SNSを戦略的に活用するかどうかで、ビジネス成長のスピードは大きく変わってきます。
個人や個人事業主、企業という違いはあっても、それぞれのニーズや目的に合ったSNSの選択と、適切な運用方法を学ぶことで、コストを抑えつつ高い成果が期待できるでしょう。
普段使っているSNSなら敷居も低いですし、友人とのやり取りの延長線上として、まずは小規模に始めてみるのはどうでしょうか?
ユーザーの反応を見ながら改良していけるのもSNSのメリットです。
ぜひトライしてみてください。

<vol.5に続く>

この記事の著者

DXビジネスアンバサダー

岸 晶子

きし あきこ

この記事の著者

都市銀行勤務後、出産を経て専業主婦に。3人の子育てが一段落した際にデジタルリスキリングを実施。その経験を活かしDXビジネス教育に関するコラム記事や大学向け教材作成などを手がける。