DX成功と失敗の本質
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第4回:DXの手段と目的を正しく問う
[特別寄稿]連載/DXの成功と失敗の本質
第4回:DXの手段と目的を正しく問う
2022年1月より「経済産業新報」にて連載されている住友生命の岸和良氏(理事・デジタルオフィサー)の執筆記事「DXの成功と失敗の本質」(全6回)を特別寄稿いただきました。
※「経済産業新報」は、株式会社経済産業新報社が月に2回発行する、わが国の産業界の司令塔ともいうべき経済産業省の政策を報道し続けている、唯一の専門新聞です。
筆者紹介:岸 和良 氏
住友生命保険相互会社 理事 デジタルオフィサー
生命保険基幹システムの開発・保守、システム企画、システム統合プロジェクト、生命保険の代理店新規拡大やシステム標準化などを担当後、DX型健康増進型保険Vitalityの開発責任者を担当。現在はデジタルオフィサーとして、デジタル戦略の立案・社内人材教育・対外のイノベーティブ人材育成活動などを行っている。
第4回:DXの手段と目的を正しく問う
住友生命保険では現在、2018年から提供しているDX型健康増進保険「Vitality」をベースとしたデジタル戦略を推進している。筆者は5年前からVitalityプロジェクトに携わり、2021年よりデジタルオフィサーとしてDXの推進やDX人材育成を実施中である。
手段としての「DX」にのめり込む
DXを推進する立場の人はDXの表面的内容や手段ではなく、DXの「本質」を理解しておく必要がある。そうでないと、「AIという手段は導入したけれど、DXで実現すべき成果が出なかった」、「データ分析環境やツールは購入したが、何の分析結果も出ず、ビジネスに活かせなかった」という失敗を招く。
DXは特定の問題解決や経営改善手法を意味するものではなく、「データ、デジタル、ビジネスの仕掛け」を使った業務改善・ビジネス改革のことだ。したがって、導入する企業によって実施内容が異なる。経営は各社それぞれであり、ビジネス改革も各社それぞれである。
DXが上手く進まない事例を調べてみると、その原因はさまざまであるものの、DXの本質が理解できておらず、手段を本質と誤解しているケースが多い。具体的には、
「1:Google、Amazon、Facebookといった勝ち組企業のビジネスモデルを真似ることがDXであるという誤解」
「2:データ分析やロボットといった技術や概念を導入することがDXであるという誤解」
「3:リードナーチャリングなどデジタルマーケティングによる顧客誘導方法を導入することがDXであるという誤解」
といったものである。
誤解の具体例
特に、2.や3.のケースは新しい概念、用語の種類も多く、かつDX導入成功企業や団体がDXで使っていることが多いため、本質と誤解されることが多くなる。「新しい概念や用語」である「データ分析、SNS、AI、ロボット、自動運転、MaaS、ドローン、5G」などは、どれも魅力的でワクワクする言葉である。
また、「デジタルマーケティング用語」である「O2O、OMO、リードジェネレーション、リードナーチャリング」などもビジネスが上手く行きそうな言葉である。しかし、これらは「データ、デジタル、ビジネスの仕掛け」の具体例であり、あくまで手段として使うもので、これ自体が目的にはなりえない。
DXにおける目的と手段のあり方
本質である「経営課題をデータとデジタルとビジネスの仕掛けを使って解決する」ためには、DX導入を成功させる要素を理解し、「経営目的の設定→手段の選択」を実施する必要がある。企業や団体のトップや導入担当者が、各々自分で、どの領域でどのようにビジネスの改革をするのかを考えることが重要なのだ。
<DX導入に必要な目的と手段(1)> × データがあれば上手くいくのでデータ分析ツールを導入したい。 ↓ ○ どうしたら、自社ビジネスに役立つデータを取得でき、顧客満足に生かせるのか。そのために、どのデジタル技術を使うのかを考える。 |
<DX導入に必要な目的と手段(2)> ×AIを導入して何かに使いたい。 ↓ ○人手だと経験と時間を多く必要として採算が取れないものを、AIを使って自動化し、人件費を抑えて採算がとれるようにしたい。 |
手段であるAIやデータ分析手法をいくら調べても、経営の方向性を考えなければDXは実現できない。経営課題が人手不足なのか、顧客のニーズを把握できていないのか、商品の差別化ができていないのか、などを理解した上で、どのデジタル技術を使って、どのようなデータを取得するのかを考えることが必要だ。
AIやデータ分析の本質を理解する
DXに不慣れな人は、AIやデータ分析という手段をDXの本質と勘違いしやすい。ではAIをデータ分析で使う場合の本質を考えてみよう。その本質は「人が気づけないデータの関係を機械が見出す」ということだ。つまり、データ分析という手段の中で、データの関係性を人が見いだせない場合に、AI は効果的な手段になるということになる。したがって、この場合のAI(データの関係性を機械で見出す)が生きるのは、「データ分析によって、価値が生じる業務やビジネス」だ。</p
ネット販売でいえば、「クロスセル用のレコメンド」、「アップセル用のレコメンド」、「サブスクリプション型商材の解約防止レコメンド」などであり、「社内業務でいえば、退職してしまう社員の共通属性、予兆を見つける」などのケースである。このように、AI、データ分析というのはあくまで手段であって、目的ではない。しかし、不慣れな人は「AIを使って何かできないか」、「データ分析を使えば、経営が改善されると聞いた」、「データを使ってナーチャリングができるのではないか」などと、手段を目的化する。
経営目的もないのにAIを使った実証実験(PoC)をやっても目的がないので「思ったよりも成果がでない」「AIってたいしたことがない」という話になり後が続かない。このような残念な結果にならないために、本質と手段を混同しないようにすべきである。
[第4回 了]
連載記事その他の回はこちらかどうぞ
連載/DXの成功と失敗の本質
■第1回:第1回:DXは「データ、デジタル、ビジネスの仕掛け」
■第2回:DXの定義の議論は不毛、DX5段階のレベル分け
■第3回:企業のビジネスバリューごとにDXの取組みは千差万別
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