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特集3:eラーニング導入のアプローチ インストラクショナル デザインが必要なとき
株式会社インストラクショナル デザイン 代表取締役 中原 孝子
 
日本国内におけるeラーニングの普及と現状


 業界によるばらつきはあるものの、eラーニングも企業における研修の一教育手段として定着してきているようです。「定着してきているようです」としか言えないのは、前回にも触れましたが、日本には、企業における人材教育投資に対する明確なベンチマークデータもなく、どの企業にどれくらいeラーニングが浸透し、どのように利用されているのかなどの追跡調査がされているデータがないため、残念ながらあいまいな表現にならざるを得ない現状だからです。企業における研修のメソッドや研修ポートフォリオを反映するものではありませんが、日本のeラーニング市場の成長や規模を見る上で、ALICのeラーニング白書などによる業界売り上げからの市場数値が期待されます。

  学習院大学の今野浩一郎教授の調査データ
http://www.oracle.co.jp/apps/IS/column3/)によれば、 企業が2003年に教育に支出した教育訓練費用は7,000億円、うち67%、4,700億円が 外部教育訓練プロバイダーへの支出、公共部門も合わせると教育訓練サービス市場は5,600億円。これは、厚生労働省などの調査で、給与支払いに占める研修費用の割合が欧米の2分の1、中国に比べて5分の1という数値を憂慮し、人材育成促進への新減税の根拠になっている数値とも一致しています。果たしてこの中の何パーセントがeラーニングに対する支出額なのか、今後、人材開発プログラム・研修効果測定研究会などを通じて、調査をしていきたいところです。

  上記のデータや人材育成に対する政府の政策などからも、今後一層人材育成への投資が増えると思われ、それに伴うeラーニングの導入、活用も増えるものと考えられます。

 

研修の最適な手段はブレンディング

 
  ここでもう一度、今、われわれにとってeラーニングとは何か、考えてみましょう。
  以前、eラーニングは、集合研修に置き換わるもの、学習の効率を上げ、一度コンテンツを提供できれば、制限なく履修者を増やすことができコスト削減になるというメリットで紹介されてきました。一方で、一方向性のコンテンツが多いため、人との交流がない、精緻なインストラクショナル デザインがほどこされていないなど、集合研修よりも学習の継続が難しいことが指摘されてきました。

  欧米では、過去10年の経験からブレンディングアプローチがよりよい結果をもたらすとして増える傾向にあります。「eラーニングまたは集合研修か」、「eラーニングまたはOJTか」という選択ではなく、研修の最終目標を達成するための最善の方法として、eラーニングとその他の伝統的な研修方法との組み合わせがベターというデータが出ています。今後確実に集合形態の研修は減るという調査結果がありますが、その減少分をeラーニングとブレンディングがほぼ均等に穴埋めするというデータが示されています。("T+D 2004年11月号"、ASTD。"Blended is Better" by Balancing Learning UK より)

  ブレンディングの傾向は日本でも同じではないかと思われますが、ブレンディングやeラーニングをパフォーマンスに結びつけるために改めて考慮しなければならないのが、eラーニングも含めた研修全体の運営のインストラクショナル デザインの視点に基づいた計画になってきます。eラーニングの導入は、単に"イベント"として外部の教育研修を実施するのとは違う組織的な体制やフォローアップ、ラーニング導入の業務現場におけるメリットの明確化が必要になってきます。

 

研修デザインのプレステップ


 では、企業の人材開発担当者にとって、いつ、どんなときにインストラクショナル デザインが必要なのでしょうか?

  eラーニングの設計にはインストラクショナル デザインが必要というのは定着してきていますが、インストラクショナル デザインは決してeラーニングのためだけのデザインではありません。また、すべてのコンテンツや教育内容に、ニーズ分析から評価までのステップをドキュメント化し・・・というようなことは、人的な現状からも時間的な制限からも事実上無理です。企画段階で経営戦略と人材戦略との方向性との関連から優先順位をつけ、見直すべき研修内容を見極めたうえでコンテンツのインストラクショナル デザインを再設計する(Re-design)ということが多くの場合にあてはまるのではないでしょうか。

 

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